第10章:静かな休息
森に残る寒さを切り裂くような暖かい日差しが降り注いでいた。 石畳の道が目の前に広がり、趣のある石造りの建物が並んでいた。 前夜からリリアンの内面をむしばんでいた緊張感とは対照的に、ここは平和だった。 リリアーヌ、ミナ、セラの3人は用心深く町を歩き、周囲に異変がないか目を光らせた。 商人たちはマーケット広場に屋台を並べ、母親たちは子供たちの世話をし、鍛冶屋は鍛冶場で金槌を叩いていた。 リリアンはしばらくの間、賑やかな町の風景と音に身を任せていた。
ミナはリリアンの腕にしがみつき、猫のような耳をピクピクさせながら、「ここは......普通な感じ」と言った。 「ここは安全だと思う?
リリアンはためらいがちに小さく微笑んだ。 「今のところはね、ミナ。 でも、用心深くいる必要があるわ」。
町に入って先頭に立ったセラは、同意するようにうなずいたが、黙ったままだった。 彼女の琥珀色の目は、どの影にも、どの通行人にも注がれた。 彼女とリリアーヌの間には、言葉にならないが、先ほどの緊張感が漂っていた。
「まずはここに寄ろう」セラは、窓から提灯の柔らかい光がちらつく、こぢんまりとした居酒屋の前を通り過ぎた。 「私たちみんな、食事が必要ね」。
リリアーヌはうなずき、ミナを入り口に案内した。 店内に足を踏み入れると、居酒屋の温かな雰囲気に包まれた。 ローストした肉と焼きたてのパンの香りが漂い、リリアンのお腹が鳴った。 ミナも少しリラックスしたようだったが、リリアンにしがみついたまま、静かな角のテーブルを見つけて座った。 酒場はそれほど混雑していなかったが、ミナを緊張させるには十分な数の客がいた。 声を上げるたびに耳がピクピクと動き、尻尾は脚をしっかりと巻いていた。
「大丈夫」リリアンはミナの肩に手を置いてつぶやいた。 「ここでは誰もあなたを傷つけないわ」。
ミナはうなずいたが、黙ったままだった。彼女の小さな体は、多くの人に囲まれた恐怖の余韻でわずかに震えていた。 リリアンはミナをなだめようと、ミナの髪に手をやりながら、胸が痛んだ。 ミナはそれに応えて彼女に近づいた。
エプロンに小麦粉をまぶしたウェイトレスがテーブルに近づき、温かい笑顔で挨拶した。 「こんにちは、旅行者の皆さん。 何になさいますか?
セラは顔を上げ、少し表情を和らげた。 「パンとローストした肉、それにフルーツがあれば」と彼女は答えた。 「それとエールを一杯"
ウェイトレスはうなずき、リリアーヌとミナに向き直った。 「お二人には?
「リリアーヌはミナに安心させるような笑顔を見せた。
「もちろん」とウェイトレスは答えた。 彼女はミナに温かく微笑みかけた。 「もし他にお好きなものがあればおっしゃってください。 焼きたてのパンと、甘いものがお望みなら蜂蜜も少しありますよ」。
ミナはリリアーヌをちらりと見て励ました。 「パンがおいしいわ」彼女はかろうじて聞き取れるように言った。
ウェイトレスは小さく笑った。 「パンと水ですね。 では、パンと水ですね。
彼女が立ち去ると、セラはテーブルの向こう側に寄りかかった。 「好きなだけ食べなさい。 「体力が必要よ」。
ミナはうなずき、まだ緊張していたが、優しい励ましに慰められたようだった。 ウェイトレスが食事のトレイを持って戻ってくると、セラにはエールのジョッキを、リリアーヌとミナには透明で冷たい水の入ったグラスを2つ持ってきた。 リリアンは安堵の面持ちで彼女を見守り、彼女が少しリラックスして、酒場の静かな一角の暖かさと安全さに安らぎを見出しているのをありがたく思った。
食事を終えると、二人は陽の光が差し込む通りに戻った。 商人たちが商品を売り歩き、子供たちが屋台の間を飛び回っている。 セラは二人の案内で市場を歩き、薬草屋の露店に立ち寄って乾燥ハーブや色とりどりのポーションの小瓶を手に取った。 甘いお菓子でいっぱいのパン屋の屋台を通り過ぎると、ミナの目が大きく見開かれた。
リリアーヌはそれに気づき、優しく微笑んだ。 「食べてみない?
ミナは顔を輝かせ、熱心にうなずいた。 リリアーヌは蜂蜜入りの小さなお菓子を買ってミナに渡した。 ミナは一口食べると、その甘さに顔をほころばせた。
「これは本当においしい!」彼女は喜びに満ちた声で叫んだ。
セラは、ミナがそのお菓子を楽しんでいるのを見て、珍しく微笑んだ。 「物資から目を離さないようにしないとね」と、口調は軽かったが、彼女は言った。
二人は探索を続け、市場から町の静かな場所へと移動した。 ミナの好奇心は小さな路地へと彼らを導いた。そこでは男が木のおもちゃに複雑なデザインを彫っていた。 彼は小さな猫の彫刻をミナに差し出した。 その日は、町の素朴な美しさの中に小さな喜びを見つけながら、穏やかに過ぎていった。 夕方になり、人通りが少なくなると、3人は宿に向かった。 宿は質素な建物で、窓が暗い通りに暖かく光っていた。 宿の主人は銀髪の親切な年配の女性で、笑顔で出迎え、部屋に案内してくれた。 部屋は小さいが快適で、簡素なベッドが二つと、窓際に木製のテーブルがあった。 ミナはすぐにベッドのひとつに乗り、満足そうに毛布の中に潜り込んだ。 リリアーヌはミナの横に座り、彼女を優しく寝かしつけた。
「セラ? リリアンはそっと声をかけ、セラの姿勢が少し硬くなるのを見た。
セラは振り向かなかった。 その代わりに、ミナが最初に何かに気づいた。 彼女の大きな目がセラの頭を見つめ、好奇心で耳をピクピクさせていた。 「お姉ちゃん」ミナはリリアーヌの袖を引っ張ってささやいた。 「どうしてセラの耳はとがってるの?
リリアンは固まり、心臓がバクバクした。 やっぱり気のせいじゃなかったんだ、とリリアンは思った。 リリアンは世良をちらりと見たが、世良はまだ二人に背を向けて立っており、肩に力が入っていた。 長い沈黙の後、ようやく世良が振り返った。 琥珀色の瞳がリリアーヌからミナに注がれ、話すべきかどうか迷っているようだった。 最後に、彼女は静かにため息をつくと、ベッドの端に腰を下ろした。
「はい」セラはゆっくりと、柔らかく、しかし安定した声で言った。 「私はエルフです」。
ミナは畏敬の念で目を見開いた。 「エルフ?」彼女は繰り返した。 彼女の声に残っていた恐怖は消え、子供のような好奇心に変わった。 「エルフなんて初めて会ったわ!」。
セラはかすかに微笑んだが、その目にはほのかな悲しみが浮かんでいた。 「たいていの人はそうでしょう」彼女は静かに言った。
ミナの隣に座っていたリリアーヌは、どう答えていいかわからず、黙ったままだった。 彼女は何かを疑っていたが、真実を聞いて、答えよりも疑問が多く残った。 彼女はセラをちらっと見て、詳しく説明するのを待ったが、セラはそれ以上言いたくなさそうだった。
「明日の朝、すべて説明するわ」長い沈黙の後、世良は言った。 彼女は二人の視線を避けるように、ちらりと目をそらした。 「今は......少し休んだほうがいいわ」。
リリアンは少しうなずいたが、頭の中は疑問でいっぱいだった。 リリアンは少しうなずいた。 セラはベッドの端近くに座り、壁に寄りかかった。
リリアーヌはミナの横に座り、ミナが見たものについて考えを巡らせた。 セラはエルフなの?
疑問は残ったものの、そばにいるミナの温もりと宿の静かなざわめきが、リリアーヌをゆっくりと軽い眠りへと誘った。
リリアーヌの夢は平和でも静かでもなかった。 その代わり、断片的なイメージの嵐であり、異国でありながら見慣れた光景のフラッシュであった。 影が彼女の心を横切り、見覚えのない声が遠くでささやき、遠すぎて理解できないが、心臓が高鳴るほど近い。 夢の中で彼女は広大な野原に立っていた。 上空は暗く、嵐雲が不気味に渦巻き、遠くで稲妻が光っていた。 空気は緊張に満ちており、戦いの前に訪れるような重苦しさがあった。 霧で顔は見えないが、彼女は彼らとの深いつながりを感じた。 まるでその人たちのことをずっと前から知っていたかのようだったが、名前を思い出すことはできなかった。 マントをまとった人物が彼女の前に現れ、手を広げて無言の懇願をした。 リリアンが手を伸ばした瞬間、地面が崩れ始め、夢の世界が崩壊した。 突然、彼女は大広間の廃墟に立ち、崩れかけた壁には長いタペストリーが垂れ下がり、その奥には壊れた玉座があった。 彼女が玉座に向かって手を伸ばすと、ささやきが大きくなり、その切迫感が彼女の胸を圧迫した。
リリアーヌの息が止まり、心臓がバクバクして目が覚め、両手で毛布を握りしめた。 彼女は宿にいた。 その横で、ミナが寝ぼけまなこで声を上げた。 「お姉ちゃん? 大丈夫?
リリアンはため息をつき、胸のつかえを和らげた。 「ただの夢よ、ミナ。 起こしてごめんなさい」。 ミナは眠そうにうなずき、小さな手でリリアーヌの腕を慰めるような仕草をした。




