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蟹たーべ行こうー

「ねえー、狩りするのー。何処でやるー」

 私達とは別の世界で遊んでいたティンクとリンちゃんが、えらく乗り気だ。

「陸の魔獣は殆ど狩って終わっちゃいましたからね。海獣でも探しますか」 

 ルシファーは暗にモアモア島に行きたい言っている。

「自分、モアモア島に行きたいっす」

 ベルゼはストレートだ。

「この前行った海獣の狩場で海水浴かな」

 フェンリルがウキウキしている。

 折角モデル体系ミス異世界司書に成りあがったから、水着でヘルやエポナさんみたいに堂々と海岸を歩きたい。

 刀しょって海獣狩りなんかやってる場合じゃないのよ。

「私、狩りには参加しなくて良いんだったら行ってもいいわよ」

「奈都姫様のお考えは分からないでもないですが、今日は少し寒いのではありませんか」

 ロバの六感恐るべし、見透かされている。

 エポナさんは解体仕事がやりたいらしい。

 寒いのは、ルシファーに教えてもらった季節魔法で、どうにでもなるのよ。

 私一人でも海岸散歩で決めてやる。

 「うちはまだマチェーテシャークを狩ったことあらしまへんの。モアモア島にはいてはる?」

 ヘルまで‥‥‥‥。

「自分、この前行った時に、どでかい銀色のサメ見たっすよ。デカすぎて狩る気になれなかったっす」

 ベルゼ、余計な事を言うんじゃない。

 狩りで決定じゃないか。

 少なくとも奇麗でいる間、私は狩りなんかやらないからね。


 何だかんだやって、モアモア島の海岸に御狩場小屋設営完了って、ルシファーがお城を出して懐かしがってるだけ。

 エポナさんが無慈悲にも私に掛けた変身魔法を解いて、何時もの姿に逆戻り。

 モアモア海岸での水着姿お披露目は諦めて、きっちり陸兵さん達へのお土産狩りに参加しまーす。


 ティンクが魔獣地図を広げる。

「うっひゃー、この前来た時に随分と狩ったのに、またまた凄い数の海獣が集まってるねー」

「モイラには見えるの。この海にはとーっても濃い魔素が、あの島から流れ込んでるの」

 この海域はちいさな島が点々としていて、モイラが指さす島はこれらの島の中心に位置する無人島だ。

 島を作り出したであろう火山は、今でもまだ活動している。

 山頂から白い煙を、勢いよく噴き出している。

 火山の裾野は広く、ジャングル化している。

 何本もの川が海へ流れ込んでいる。

「あの川の水に、海獣さんが大好きな魔素がー、いーぱい入っているの」モイラが説明してくれた。

 どうりで、すんごいのが集まってくるわけだ。

 こんな海域を軍艦で航海するとは、海軍の兵隊さん達も命知らずだこと。


「この前行き会った戦艦は、この海域に食料調達で来ていましたの。王宮での贅沢が過ぎていて、兵隊さん達の食事情が悪化しているとうかがいましたわ。陸軍の基地や駐屯地周辺に魔獣が殆どいないのは、食料事情が絡んでの事でしたの」

「そんな事、いつ聞いたんですか」

「この前ですわ。分身を使いに出しましたの」

 全然気付かなかった。

 エポナさんの使う分身の術。ずば抜けて凄いわ。

 

「どれ、わしは何を狩ろうかのー」

 フェンリルが一番手。飛び出していった。

「僕も負けませんよ」

 ルシファーが競争のようにして沖へと向かう。

 あの二人に目を付けられたら、いかなる海獣も逃れようがない。

 誰に当たっても、海獣君の運命は変わらないんだけどね。

 今日は彼らにとって、一生忘れられない厄日になる事確実。

 その一生、もうすぐ尽きてしまいますのよ、ごめんなさい。


 エポナさんは、狩るよりも解体・調理の方がお好きなよう。

 今日も海獣が届くのを海岸で待っている。

 モイラはそのお手伝い。

 解体に丁度いい高さの作業台を、特殊結界で作っている。

 空を飛べるようになったし、この前は地龍とも対等に渡り合えたから、リンちゃんも海獣狩りに参加。

 ティンクが補佐してるから大丈夫でしょう。


「魔獣発見っす」

 無人島ばかりの海域だったので、この辺りの島には討伐隊が入っていない。

 まだ魔獣の狩り残しが相当数いる。

 ベルゼは島から島へと飛び回って、片っ端から魔獣を狩り始めた。


 私は千里眼を使って、皆より遠くの海域を見ている。

 この辺で私がのんびり狩っていたら、皆の邪魔になるからね。

 銀色に光る物がちらりと見えた。

「あの銀色って、もしかしてマチェーテシャークかも」

 ヘルに方角を教えてあげる。

「ほないってくる」

 海水を巻き上げ、海面すれすれの低空飛行。

 あっと言う間に見えなくなった。


「ところで、奈都姫様はいつになったら出動しますの」

 神族エポナさんから催促の神託あり。

「今出ますよーだ」

 魔獣地図はティンクが持って行っちゃったから、目視で標的を探さなきゃならないのよね。

 とりあえず、あてはないけど沖に出て、上空から海面を観察してみるか。

 皆さん、物凄い勢いで狩ってますわ。

 エポナさんも、分身と一緒に大忙ししてますわ。

 島の魔獣はベルゼが担当してるしなー。

 んー、あの島には何もいないし草も木もないのね。

 ごつごつしていて…おんや…カルキノスか?

 それにしては大きすぎるんですけど。

 でも、上から見た感じは、どうあってもカルキノスだわよね。

 ありゃ。

 もう一匹、直ぐ隣に浮かび上がって来ちゃったし。

 超大物発見。

 それも二匹同時、でいいのかな。


 カルキノスの急所って何処だっけ。

「指輪さん、カルキノスの急所って何処」

「ふんどし」

 蟹がふんどし履くか?

「それって何処」

「蟹の腹側にある三角形の部分です。前掛け・はかまとも呼ばれています。歯ごたえがありますので、揚げ物にすると美味しいですよ」

 ということは、海の中なのね。

 結界の中に入って、濡れないように潜ってみるか。


 海中から見るとその大きさがことさら協調されてくる。

 全長二十メートル級のが二匹連なって、瓢箪のように浮かび足をゆったり動かしている。

 白い腹の真ん中辺り、ふんどしの端っこがある。

 あそこら辺りを狙えば良いのかな。

 体が分厚いから、私の刀じゃ急所まで届かないかも。

 さてどうしたものか、大砲ぶち込んだら蟹みそがだらしなく流れ出ちゃうだろうしなー。

 この二匹を倒すのは無理との結論に達し、結界で包んで生け捕りにする。

 それはそれでいいけど、いかんせん相手がでかい。

 やってみるだけやって、ダメならモイラちゃんに御願いしましょ。

 海水の抜ける結界にすれば、重量はだいぶ軽くできる。

 私の魔法力でも運べるに違いない。

 自分の力を信じて「結界! 丈夫なやつ」

 そーっと持ち上げてみれば、カルキノスに暴れる気配はない。

 この隙に、転移魔法で一気に海岸へ飛んで、エポナさんに引き継ぎー。

「生きてまーす。解体御願いしまーす」

「あらー、なんて事でしょう。こんなに大きな蟹さん。初めて見ましたわー」

 驚いてくれてありがとう。

 他の皆さんは、既に狩りを終えて一休みしているー。

 私ったら、どれだけカルちゃんに時間かけてたのかしら。

 自分のどんくささがちょっと恥ずかしい。

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