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見張り甚振りブリブリ攻撃

 パーティーが終わり何時もの片付けで、エポナさんが木箱に残り食材を詰めている。

「ベルゼ様、今夜は冷えます。寮のお部屋でお休みくださいね」

 テントをなでなでしているベルゼに、最後通告している。

「部屋の中にテント張ってもいいっすか」

「それは御自身の判断で、咎める方はいらっしゃいませんわ」

 どこまでもしぶとい悪魔だ。


 かく言う私も、人様が自室でやっている事をとやかく言える立場ではない。

 フカフカのベットで寝るのがどうしてもしっくり来なくて、相変わらずクローゼットを出して自分の部屋で寝ている。

 暇な時にはティンクも遊びに来る。

 エポナさんにいたっては、何時自分の部屋に行っているのかが分からない。

 私の部屋であれこれやってくれている。

 本体なのか分身なのかまでは分からないけど、よくもあれだけやる事があるなと思える。

 掃除・洗濯・御飯の支度から、私を起こしたりモイラの御守したり。


 どれだけ体力があるのか一度鑑定してみたら、無限大だった。

 そんな人が分身まで出して、なんでもかんでも片付けていける。

 きっと体力が有り余っているんだろうな。

 スタイルは良いし、超の付く美人だし。

 黄麒麟さんの加護があるのに、いつでも疲れている私。

 羨ましい限りだ。


 今夜も私の部屋にいるけど、今日はやる事がない。

 火の入っていない炬燵に足を伸ばし、ティンクと私がネットゲームで遊んでいるのを見ている。

 モイラは好きなお子様用アニメに興味がなくなったのか、再生鑑賞に付き合う気がない。

「あっ」

 モイラがモゾモゾし始めた。

 どうしたの。

 腹でも壊したか。

「次の予言が出たみたいなの」

 本に予言が出ると、体がむず痒くなると言っていた。

 信じがたい本との一体感。

 素晴らしくもあり、恐ろしくもあり。


 本に浮き出た説明文に我が目を疑った。

【明日十時、オトリア海にある無人島モアモアに、カデナリーペンギンが出現。体長一メートル・体重二十キロ。性格は温和で人懐こい。外敵から身を守る為に体長を数十メートルまで巨大化できる。この場合、体重は増えないので風に吹かれると飛ばされてしまう。巨大化した時、羽を広げて飛ぶことができる。小魚を好んで食す。これといった特技はない】

「これって、念獣なの?」

 ゲームを終わらせて、モイラに聞いてみる。

「念獣は、怖かったり危なかったりするばかりじゃないの。可愛いのもいるの」

 ブツクサさん曰く「先ほど行っていただいた世界に、狂暴で凶悪な未知の魔獣が多数解き放たれてしまいました」だった。

 話しがちょっとだけズレてきている。


「無人島ですし、時間も分かっていますので、その時になったら行きましょう」

 エポナさんが、ルシファー達へ明日の予定を知らせに行く。

「モイラ、今日は早めに寝よう」

 ティンクが、モイラを連れて出て行った。

 そんな訳で、私は一人炬燵に入って干し肉食べながら、冷酒飲んで早めの就寝。 


 翌日。

「なんじゃありゃー!」

 ベルゼがモアモア島の上空に出たとたんに叫んだ。

 昨夜のうちに張っておいたモイラ結界の中で、カデナリーペンギンが巨大化している。

 結界があるので外へは逃げられないが、空を飛ぼうとして中空に浮いている。

 その下には、地龍がうろついている。

 出現したところで地龍と出くわし、驚いて巨大化したようだ。

 この様子を見ているのは私達だけではなくて、隣の島にいた他の地龍まで泳いでモアモア島に集まり始めた。


「カデリーナペンギン捕まえた。お家はここだよ。ドラゴンはいないよー」

 モイラが結界を解くと、カデリーナペンギンが図鑑へ入っていく。

 とり残された地龍は、突然の出来事に何が起きたのか分からず、辺りをキョロキョロしている。

 ここに、隣の島から泳いできた別の地龍が上陸。

 無人の島に五頭の地龍が集結して、互いに唸りあっている。

 喧嘩するくらいなら集まらなきゃいいのに、お馬鹿な連中だ。


「ルシファー様、いただきっすね」

 ベルゼの欲得勘定が始まった。

「地龍が五頭とは、倒しがいがあるなー」

 ルシファーが刀を持って、すぐにでも飛び出していきたそうだ。

「お待ちくださいな、少々私に考えが御座いますの」

 いきなり、エポナさんが念話でみんなに話しかけてきた。

「見張られていますわ。軽くからかってあげたいのですけど、協力して頂けますか」

「ハーイ」

 俄然やる気が出てきた。


「まず最初に、リンちゃんが地龍の尻尾をくわえて、グルグル回した後で空に向かって飛ばして頂戴」

「それからどうするの?」

「私が、見張りのかくれんぼ結界を、私達だけには中が見えるように無効化しますわ」

「それから何をするんですか」

「皆さんは、見張りが見えていないふりをして、地龍を攻撃する時にわざと外して見張りを甚振ってあげてください」 

「それ、いいかも」

 こうして私達の【ウザイ見張り甚振りブリブリ攻撃作戦】が始まった。


 別々のかくれんぼ結界の中から、私達を見張っている奴が三人ほどいる。 

「リンちゃーん、あっちに飛ばしてー」

 ティンクが中空の見張りの方を針剣で指し示す。

「ギャー」

 地龍の悲鳴にも似た叫び声。

 見張りの結界に向けて、力任せにリンちゃんが地龍を飛ばした。

「火鍋火炎地獄ー」

 エポナさんが超高温ファイヤーボールを外す。

 結界にぶち当たり、中空で炎が飛び散った。

「投げ槍攻撃ー」

 これまたベルゼが槍を外す。

 結界に槍先が突き刺さって、中の見張りがジタバタ始めた。

 抜け落ちた槍がベルゼの手元に戻ってくる。

「氷結大寒波」

 ルシファーが地龍の方に向けて大気を凍てつかせるが、これもしっかり外れて見張りの結界を直撃。


「モイラ、やる事がないの」

 とか言いながら、地龍を結界の中に閉じ込めて、そのまま見張りの結界にぶつけた。

 激しく突き飛ばされた見張りの結界は、遙か水平線の向こうまで飛んで行った。

 やるもんだー。


 私が「斬」解かれた結界から落ちる地龍の首を切ると、島にドスンと落ちる。

 次の一頭はルシファーが一振りで切り倒す。 

 そして次の一頭を、最初の一頭のようにして、見張りを吹っ飛ばしてやる。

 四頭目をベルゼが一刺しで退治して、自慢気に勝利の踊りを地龍の前で披露。


 最後の一頭になって、さすがに見張りも気づいたか、逃げ出しそうな様子。

「リンちゃんの本気見せて」

 ティンクの言葉に、リンちゃんの目が燃えている。

 地龍が空を飛ぶ。

 見張りの結界めがけて一直線。

 グキッ! バキボキ。

 地龍が結界と激しく衝突して、骨が砕けていく。

 リンちゃん、怖い。


 地龍が結界もろとも島の海岸に落ちて、結界は地龍の下敷きになって砂に埋まった。

「いいお天気ですし、奇麗な海と無人島。願ってもない楽園が出来ましたわね」

 エポナさん。地竜を解体しながら、無人島ライフを満喫するための準備を始めた。

「早く解体して、街に売りにいきましょうよー」

 相変らずベルゼは俗っぽく迫っている。

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