限界露出の水着でモンローウォーク
「T・レックス捕まえた。お家はここだよー。玩具もあるよー」
すぐさま念獣は本に取り込まれ、巨大な猫じゃらしでチャイチャイしている。
T・レックスが図鑑に載った。
繁華街にいた人達が、モイラに注目している。
いかん現象だ。
「逃げるよ!」
一斉に瞬間移動で寮に戻ったけど、かなり多くの人に見られちゃった。
モイラがやった念獣捕獲の噂が広まるのも時間の問題だな。
その時はその時で、なんとかなると思い込んで仕切り直し。
まだ夜は長い。宴の再開だ。
一仕事終えて面白おかしくやっていると「上空に妙な気配を感じるのだが、お主等には分からぬか」フェンリルが訝し気に天を仰ぐ。
「お気づきになりましたか、つい今しがたですわね。かくれんぼ結界で姿こそ見せてはいませんが、かなり大胆にこちらの様子をうかがっていますわ」
エポナさんは、かくれんぼ結界の第一人者だ。
彼女にかかれば、結界の中までグッキリムッチリ全てお見通しだ。
「ギルドで派手に魔獣を売ったり、城下でT・レックスを捕獲したりしていれば、嫌でも王の耳に入りますからね。見慣れない連中と聞けば、最初に目を付けられるのはこの寮ですよね」
ルシファーの言うとおりだ。
やり方が露骨すぎた。
「こんなに早く見張りが付くとは思っていませんでしたわ。これから少しやりにくくなりそうですわね」とか言ってるエポナさん。
派手な格好で街を闊歩してましたよね。
ヘルとエポナのツーショットだけでも騒ぎになっていた。
話を聞いたダブル悪魔が調子に乗って。
後から街出て女子に手を振ったり投げキスしたり。
兵隊さんが出動する事態になっていた。
「見張り付けられても捕獲はやるんすよね。あんまり気にしなくていいっすよ。どうせあいつらは異世界司書団の動きについてこられないっす」
ベルゼの言い分ももっともだ。
私達はやるべきことをやるだけ。
あとは野となれ山となれー。
応援に来ていたフェンリルとヘルが帰る日の朝。
草原を吹き抜ける風が気持ちいい。
二人で入口の石柱に向かって歩い行った。
二人を見送り、外に出て皆で立ち話をしていると「今日のお昼だよー。海に出るって。図鑑に載ったのー」
モイラが図鑑を広げ、大きな声で知らせてくれる。
フェンリルにヘルがまたがって、疾風のごとく舞い戻ってきた。
恐ろしい地獄耳ですわ。
「何、海とな。お主等、これから海に行くのか」
「うちも行きとおす」
出戻りコンビも加わり、海まで行って念獣捕獲開始。
飛んで出た先は海に違いないけど、港と言いましょうか軍港と言いますか。
「何者だ。いかなる理由があってこの辺りをうろついている」
私達、槍を持った警備の兵隊さん達に囲まれてます。
ルシファーとベルゼが警備兵の隊長に、ギルドカードを見せて説明を始めた。
「自分達は王都から来た冒険者っす」
「こちらの海に海獣が出ると聞きましたので、捕獲の為に来ました」
信じてもらえるかどうかは別として、悪魔達が正直に申告している。
兵隊さん達を見ていて、私には一つの大きな疑問が生じてきた。
「私達を囲むにしては、手に持っている武器が時代遅れですよね。今まで行った世界は、何処を見てもこんな感じでしたよね。まるで中世のようで、地球より何百年も科学が遅れている感じなんですけど」
隣にいたエポナさんに聞いてみる。
「地球以外の世界は、魔法を日常的に使えていますから、科学力に頼る必要がないのですよ。地球の現状を見て、こちら側の人達は科学が危険なものと認識していますの。勿論、広い宇宙の中には、魔法と科学の融合を試みている世界もありましてよ」
「科学を嫌っているにしても、なんとなく発展そのものに遅れが見られるんだけど、その辺はどうなってるんですか」
「今まで行った世界は進化が遅くて、人間界や神界の争いがまだ残っている所だったのですよ。進んでいる世界では四界間の争いさえもなくなっていますから、何の問題もなくて、異世界司書の私達が行くことはありませんわ」
なるほどね。
「こら、お前ら、尋問中に何を話している」
隊長さんが怒っちゃった。
「すいません。もう行ってもいいですか」
「港から出ていくのであれば今回は許してやるが、今度この港に入ったらその場で処刑するからな」
処刑って、散歩してるだけなのに。
つまらない事で騒動を起こす必要もない。
この場は大人しく引き下がって、港から少し離れた海岸を拠点にした。
「なんだかあの港って、何隻も軍艦があってキナ臭い感じで嫌ですね」
「現王は地球の軍隊を真似て、武力の増強を推進しているのです。自国を守る為と言って人民を騙しているのですわ。実際は我欲に取りつかれた亡者でしかありませんのよ」
どこからそんな情報を仕入れたんだ。
きっと髭爺さんだな。
【海獣ザリガタンが本日正午、アンゾロフ海のビエントシ軍港近くに出現。巨大な蟹の姿をしている。巨体は浮島のように海を移動する。海水中の有害な微生物を食し、体に数百か所ある排出口から富養液を出す。周囲には海洋生物が集まり、漁に最適な場所となる。ザリガタンが直接人間に危害を及ぼす事はないが、周囲の魚等を目当てに集まる海獣には狂暴なものが多い。進路にある船は早めに避難しないと、海獣に襲われたり、ザリガタンに衝突して沈没する恐れがある。波の静かな環境を好み、湾内に住みつくこともある】
「これが、これから捕獲する念獣の資料です。海は広いのでブロック別に配置しますから、決められた範囲をしっかり監視していてくださいね」
珍しく【正午】と出現時間をはっきり教えてくれている。
時間になったら一斉に、上空からザリガタンが出てくる場所を探せばいいだけだ。
でも、さっき隊長さんにきつく言われたから、軍港だけは監視対象から外してあげた。
「ザリガタンの周囲には海獣が集まるのだろ、出現してから捕獲まで暫く泳がせてやってはくれんかの」
フェンリルの魂胆は、海獣を食べたーい。
蟹の形をしているザリガタンの、蟹みそを食いたいと言わないだけまだましか。
ここでティンクとベルゼが手をあげて発言。
「海獣は希少だから、ギルドでも高値がつくよ」
「自分もそう思うっす」
お前ら、金は十分持ってるだろ。
まだ稼ぎたいか。
ヘルとエポナさんは肌寒い季節だというのに、限界露出の水着でモンローウォーク。
軍艦に乗った海兵達を挑発している。
港の外でやっている事だから、隊長さんも難癖つけるにつけられない。
眉間にしわを寄せて、こちらをギュッと睨むだけだ。
本当は嬉しいくせに。
「奈都姫さんは水着にならないんですか」
海岸にどでかい砂の城を作っていたルシファーが、意地の悪い質問をする。
「私に、水着であの二人の間に入れってか。お前、何時か殺してやるぞ」
砂の城にドロップキーク!
そんなこんな海岸で遊んでいると、ウウウウーーーー。
正午になって、サイレンの音が軍港の方から風に乗ってくる。
私達が一斉に上空へと飛び上がり、海面の上昇を見張る。
「出たよー」
ティンクが素早くザリガタンの背中に乗って、信号煙火を打ち上げる。
全員で背中に乗ってみる。
自力で泳ぐ気はないらしく、軍港の沖三キロ辺りで波に体を任せてぷかぷかやっているだけだ。
海流の具合からして、今は軍港の方に向かっている。
暫くしたら大きく蛇行して、陸から遠ざかっていきそう。




