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モイラ、ビックリして息するの忘れてたの

 ちょっとだけ御酒の残っている明け方。

「起きてください。奈都姫様」

 エポナさんが静かに揺り起こしてくれる。

「出発しますわよ」

「えー、こんなに早くですかー、まだ夜が明けきってませんよ」

「ええ、歳をとりますと皆さん早起きですから」

 歳をとるとって、百年も千年も生きてりゃね。

 若いのは私とモイラくらいのものだわ。


「モイラちゃんは」

「まだお休みですわ。夕べはティンクのお部屋でお休みになって、今は私のクローゼットで寝ています」

 いいなーモイラ、私ももう少し寝ていたい。

「私もエポナさんのクローゼットで移動したいー」

「ダメですよ。隊長なのですから、早く行きましょう」

 昔から早起きは苦手だったから飲食店のバイトしてたのに、異世界司書の御仕事は甘くないね。


 転送室から勢い付けて飛び出た先は、広大な平原だった。

 でも、ここは山頂のはず。

 平原の端っこからは急な坂になっているだろう。

 こんなに広い平原を頂きに持てるとなると、裾野はとんでもなく広いことになる。

 ちょっと上空から視察と思って飛び上がる。


 平原の端からいきなり垂直に切り立つ断崖絶壁。

 この山には裾野がない。

 平原の広さと同じ巨大な岩の柱だ。

 これでは、空を飛べる生物以外移動できない。

 ここは完全に下界と隔離された孤島のようなもの。

 魔獣であっても、うかつに手出しできない環境だ。


 断崖の周りに魔界の森が広がっている。

 森の外周は砂漠化していて、さらにその外側に平野や農地がある。

 家は数件しか建っていなくて、村となっているけど人口は少なそうだ。

 

 ここまで確認した時点で、恐ろしく危険な状態に陥ったみたい。

 何羽ものロック鳥が、私の周りを旋回している。

 防御結界を張ってあるから食べられても大丈夫だけど、丸呑みされて体内を通過するのは好みじゃないわ。

 景色を眺めるのはここまでにして、さっと降りてさっさと片付けちゃいましょう。


「なっちゃんが餌になって魔獣を誘き出せば、直ぐに退治できますね」

 ルシファーの言葉に素早く反応したのはエポナさん。

「それよりも、ルシファー様とベルゼ様の方が適任ですわ。前回もお二人が餌になって成功したじゃありませんか」

 余計な事を言うから、自分達が餌役になっちゃったんだよ。

 自業自得と諦めて、しっかり逃げ回ってね。


 平原をウロチョロする二人の悪魔が、魔獣達には御馳走に見える。

 ひょこひょこ。草むらから魔獣が顔を出す。

 現れた魔獣めがけて飛び出すフェンリルとヘル。

 素早い動きで、電撃魔法を魔獣に浴びせて気絶させる。

 種類別につがいを一組ずつ、エポナさんが中空に作った結界の中に入れていく。

 小動物だけの予定だったけど、魔獣も含めて本格的なエポナの箱舟作戦開始だ。


 ティンクが魔獣地図を見て、別の種類の魔獣の居所を指示すると、ダブル悪魔が又もや餌になってちょろちょろ。

 魔界の兄妹がつがいにして生け捕ると、結界の中へ。

 この平原に住んでいる全種類の魔獣を一組ずつ捕らえるのに、随分と時間がかかってしまった。

 魔獣を全て退治してしまったら、孤島のようなこの平原の生態系が変わってしまう。

 面倒だけど大事な作業、手抜きはできない。


 全ての魔獣のつがい捕獲が終わったら、お昼を過ぎてしまった。

 魔獣を閉じ込めているとなると、エポナさんの魔力にも限界がある。

 皆の食事を作ってくださいとは言えない。

 すると、ここぞとばかりルシファーが、大量に買いだめしていたカップ麺を作って皆に配ってくれた。


「おおー、エポナ殿の作ってくれる飯も美味いが、これもまた美味なるものよのー、もう十個ばかり出してはくれぬか」

「もちろんですとも、フェンリル様に一つでは少ないですよね」

 ルシファーがせっせとお湯をカップ麺に注ぐ。


 軽く昼食を済ませると、今度は全員で魔獣退治に出撃。

 とは言うものの、モイラとエポナさんは結界維持の為に見学。

 リンちゃんはハナから戦力外。

 かなりの魔獣がこの平原には隠れ住んでいるから、戦力不足を私が補わなければならない。


 フェンリルとヘルに加え、ルシファーにベルゼと揃った魔界の四騎士に、私も混じって忙しい狩りが始まった。

 私達の狩りにさえ驚いていたモイラにとって、フェンリルとヘルの勢いは空前絶後。

「モイラちゃん、ちゃんと息しなさい。ゆっくり、深呼吸してー」

 エポナさんに背中を撫でられるモイラ。

 ビックリ仰天して、息するのを忘れていた。


 次々と格納庫へ放り込まれる魔獣。

 ティンクが素早く血抜きをすると、吹き出た血はモイラが結界で包み込んだ。

 黙って見ていられなくなったようだ。

 血抜きを終えた魔獣は、リンちゃんがくわえて奥まで運んでいる。

 リンちゃんも戦力として認めてもらいたいのだ。

 それにしても、まだ魔法が使えないのだから、体力だけで運んでいるのよね。

 麒麟族ってば、キャッ! 力持ちー。


 粗方魔獣退治が終わったところで、小動物は喧嘩しないように種別に分ける。

 小さいけど、大量の結界を私が出す。

 モイラと違って私は、沢山の結界を中空に浮かべて維持するだけで精いっぱいだ。

 狩りを終えた四騎士に、ティンクとリンちゃんが加わって、私が作った結界に種別分類しながら小動物を入れていく。

 結構と手間のかかる作業に思えたけど、魔法を駆使しての捕獲はほんの一時間程度で完了した。


 今度は外結界の中へ、更に細かく区切った内結界を張ってもらう段取りになっている。

 生物の保護処理が終わった所から、モイラが内結界を張って行く。

 この難関も、モイラは平然とやってのけた。

 幽霊の両親が自慢していたように、この子の結界魔法には驚かされっぱなしだ。


 ここで、全部終わったら外の結界を外す予定だったけど、空気みたいな奴となると、上空に出現する可能性の有る事に気づいて、二重結界のままにした。

 これでモイラは、この国全体の結界と合わせて三重の結界を張っている事になる。

 どれだけ維持していられるか心配だ。


 私とエポナさんの結界も維持するのが大変で、二人とも他の魔法が使えない状態になっている。

 それを皆にいうと「モイラが代わってあげる」お気軽に交代を請け負ってくれた。

「そんなに結界作っちゃって大丈夫なの?」

 エポナさんが心配する。

「大丈夫。まだまだ、全然余裕なの」

 結界を張ったまま、ヒュン・ヒュン。

 転移魔法を使って、平原の上空を飛び回って見せる。


「御願いしちゃいますか」

「そうですわね、とりあえず私達の結界の中に張ってもらって、大丈夫そうだったら私達のを消しましょう」

 話しがまとまってモイラに御願いしてみると、私達のよりもずっと強力なのに替えてくれた。 

 

 モイラのおかげで結界の呪縛から解かれたし、エポナの箱舟作戦も完了した。

 予定より早く魔獣狩りが終わったので、中空に浮く格納庫の中で皆して解体作業をしながら、夕方になるのを待つことにした。

 ここでもフェンリルとヘルが目覚ましい活躍。

 エポナさんとその分身まで混じっての解体ショー。

 私達の出番がない。

 ちょっと手伝いましょうかなんて言う間もなく、肉・肉・肉の山が完成。


 夕方、ルシファーが季節魔法の限界点に挑戦。

 小さい方の沢山ある結界内気温を、百二十度に設定した。

 巨大なオーブンを平原いっぱいに並べているようなものだ。

 あとは結界のどれかがピンク色になるのを待つだけになった。

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