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ルシファーの無人島は自然の宝庫

「賛成でーす」

 ティンクもまだ、どんな所か知らないようだ。

「自分、ルシファー様のお城の庭でキャンプやりたいっす」

 エポナさんから借りた御金で、キャンプ用品を買いあさっていた。 ベルゼは、この前の経験がよほど楽しかったと見える。

 事あるごとにキャンプがどうのこうのと始まる。


 翌朝、早くに隣のおばさんへお土産を渡した。

 工事現場を覗くふりしてクローゼットに戻り、そのままエポナさんの転移魔法で移動。

 ルシファーがこの世界で二人目の地主となりえた、御褒美の土地とはどんな所なのか。


 クローゼットから出.ると、芝生が綺麗な広場に出た。

 ここだけが上空からの日差しに照らされて明るい。

 周囲は鬱蒼とした森で、外界からの光が遮られている。

 大きな樹を切ってやれば、大分明るくなりそうだ。

 暗いのは嫌いでないだろう悪魔のこと、このままでも良いかな。


 鳥や獣の気配がする。

 近くには川とか滝もあるらしく、急な流れの音が聞こえる。

 潮の香りもする。

 海からもそんなに遠くないようだ。

 魚が取れるな。

 ルシファーなら漁だって狩りだってできる。

 食材には不自由しない所でよかった。

 

「ここは、魔界と私立異世界博物館の間にある海のど真ん中ですの、いわゆる無人島ですわね。今までは精霊界の幽霊さん達がお住まいだったのですけど、もっと文化的な所が良いと言って御引っ越しましたわ。今のところこの世界で唯一、利用者の居ない土地ですわ」

 数限りない程ある管理地の中から、利用者のいない土地を探すのは大変だったろう事はわかるけど、元住人が幽霊って、他になかったのかな。

「いいですねー、僕のコレクションも置けるし、海水浴とか釣りとかキャンプもできるし、漁も狩りもできる。何と言っても周囲に人が居ないのが良いですよね。なんでもありだなー」

 ルシファーの趣味にピッタリの土地といったところか。

「ルシファー様ー、自分のテントも張っていいっすか」

 ベルゼもここが気に入ったらしい。


「では早速、お城を出します」

 精霊界で改修したままで片付けた宿屋。

 かわいらしいお城が出てきた。

「エポナさーん、元に戻してくださいよ」

 ルシファーが御願いすると、エポナさんの顔が冗談一杯の笑顔になる。

「はいはい、では、チキチキ・チンプンカンプン・ぺケレップーのピー」

 いい加減いい塩梅の呪文で、お城が元の黒い石造りに戻った。


 ルシファーとベルゼが城の周囲を整備して、キャンプ場を作ると言い出した。

 どうせ魔法を駆使しての作業だ。手伝いはいらない。

 私達は付き合っていられないので、島の探検に出る事にした。


「ここは私立異世界博物館のある世界、麒麟界の創世記からずっと飛び地になっていましたの。世界が出来た時からの無人島ですのよ。ですから、色々な界で誕生した太古の生物や植物の宝庫でもありますの。ルシファー様ならば、きっと貴重な島の自然を大切にしてくださいますでしょ」

 エポナさんがこう語っている間にも、ルシファー城の方で激しい爆発音がする。

 どう見たって、あの二人が自然を大切にするとは思えない。

 なんてったって悪魔ですから。


「この島って、どの位の広さあるんですか」

「確か日本の四国よりちょっとだけ広いはずですわ。今お城を建てている辺りは、幽霊さん達の居住区だった所ですから、島の中では一番開けた地域ですの」

 あれで開けているってか、してみるに、残りの土地は全て未開のジャングルと思っていいよね。

 ここの自然、大切にするとかいうレベルじゃなくて、悪魔二人でも破壊できないんじゃないかな。


 海岸までは歩いても十五分程だった。

 砂浜からジャングルの方を見ると、二三キロ行った先は切り立った断崖になっている。

 断崖の上はどうなっているのか、ティンクと私が上空から確認してみる。


 上の世界は、海岸沿いに広がるジャングルなど足元にも及ばないものだった。

 何処までも続く樹海、ところどころから飛び出ている特別大きな古代樹。

 樹海の上空には何匹ものワイバーンが飛び交っていて、時折急降下している。

 ジャングルの中から長い角の生えた豚とか、羽のある猪なんかを狩って、古代樹の上にある巣に運んでいる。

 ジャングルの中はもっと悍ましい状態であるのが、ちょっと見ただけで十分に想像できる。

 私は確信した、ルシファーとベルゼはこの島で、大自然の一部になれるに違いない。


 何時か又この島に遊びに来たとしても、絶対に崖上のジャングルには行かないと心に誓い、海岸に降りて海を眺める。

「この世界って、どんな御魚が獲れるの」

 飛べるようになった子麒麟にまたがり、私の回りをふわふわしているティンクに聞いてみる。 

「地球の魚とあまり変わらないよ。クラーケンみたいな魔獣は希少だね。だからフェンリルなんかは、他の世界に行って狩りをするんだよ」

「へー、それじゃあ、ここの海はあまり危なくないんだ」

「そうだよ、今夜のバーベキュー用に何か獲っていこうー」

 素早く子麒麟と一緒に沖まで飛んで行ったティンク。

 勢い付けて海に飛び込んでから五分。

 海中から出てきたのは、クラーケンにも匹敵する巨大鮃。

 これを子麒麟がくわえて運んでいる。

 ティンクは子麒麟の横で「がんばれー」と応援しているだけ。

 どうやって運んでいるんだろう。

 ちょっと鑑定。


 鑑定

【名前 無し

【種族 麒麟族

【魔力 測定不能 ただし魔法は、浮遊魔法以外習得していない

【体力 測定不能

【気力 軟弱

【知力 三歳児程度


 となると、小麒麟はティンクに言いくるめられて、体力だけで巨大な鮃を運んでいるのかー。

 

「ねっ、地球の御魚とあまり変わらないでしょ。鮃だよ」

「あのね、ティンクちゃん、大きさが違うのに気づいている?」

「あたしには地球の御魚も、ここの御魚もみんな大きいよ」

 そりゃそうだわな。

「あらまあ、大漁ですこと。早速さばいちゃいましょうね」

 エポナさんの職人魂に火が点いた。

 瞬間芸にも似たスピード処理。

 鮮度抜群のまま、エポナさんの秘密保管庫行きー。

 今夜は鮃の刺身とバター焼きにー、あっ、縁側焼きもやってみたいなー。


 城の前に戻ると、二悪魔が仕事を終えて一休みしている。

 魔法を使うと仕事が素晴らしく早い。

 城の前から川沿いに滝の有る所まで、端から端まで二キロ程のキャンプ場が出来上がっていた。

 どうせ来ても数人の為のキャンプ場なのに、この広さは必要ないと思う。

 ベルゼいわく「景色を楽しむ為には、この広さが絶対必要なんすよ」

 城の後ろ側にはサーキットとオフロードコースが出来ている。

 その向こうにある小高い丘は一面の芝生になって、芝スキーとパラグライダーができるようだ。 

「少し離れた所に、ヘリポートと小型機の飛行場を作っておきました」

 ここでルシファーのコレクションを飛ばす気でいる。

 双頭のサタンは、この島を巨大なテーマパークに作り変えている。

 テーマはまだ決まっていない。


 ベルゼたっての願いで、今夜はお城前の広場でキャンプ泊する事になった。

 借金はこちらの通貨で返済して、晴れて自分の物になったテントを張って、寝袋を広げてランタンをぶら下げて、悪魔が無邪気に喜んでいる。

 いくら両替はシェルティーさん以外にできない決まりがあるからと言っても、地球界でのやり取りだ。

 エポナさんかティンクに両替してもらえば良かっただけなのに、ルシファーとベルゼはこの結論に辿り着けないままでいる。

 余計な金利を支払って、エポナさんに感謝状まで贈った。

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