買い物の後にはクルーザーで夜釣り
「あたしが貸してあげてもいいよ」
ティンクってば、余計なお世話をするんじゃない。
「ありがとうございまーす」
ルシファーとベルゼが二人してティンクにすり寄っていく。
「お二人様、ティンクの利息は十日で十割なのを御存じないのですわね」
エポナさんがティンク金融に物言い。
「私の利子は十日で五割ですわよ」
おい、十一じゃなかったのか、闇金より悪どいぞ。
「エポナさんで御願いします」
二人の悪魔に【いつもニコニコ・ティンク金融】にするか【貴方と私のお約束・エポナ信用】にするかの二択しか示さないで、さもエポナ信用の方が良いと思わせている。
双頭のサタンから受け取った利子は、後から二人で山分けってのがあからさまなのに、悪魔共は気づいていない。
人の商売の邪魔するのも悪いから、このままにしておこう。
二人の悪魔に加えて、子麒麟とティンクも一緒のお買い物になってしまった。
買い物の際中はティンクがずっと子麒麟にまたがって、私達意外の人間からは見えないようにしてもらう条件付きだ。
「ルシファーはカップ麵が有ればいいんでしょ」
こやつの目的はそれしかない筈だ。
「いいえ、カップ麺とピザとパンとフランクフルトとキャベツと辛子とケチャップ」
あれあれ、好物が増えたねー。
少しは買い物らしくなるのかな。
ベルゼが何を買うのか見ていたら、いきなり模型店に入ってプラモとゲームを買ってきた。
誰からそんな物を教わったんだ。
ルシファーが知るはずないから、ティンクか。
ティンクったら、自分の欲しいものをベルゼに買わせているんですけど。
主犯のティンクは消えていて買い物ができないまでは良いとしても、支払いはベルゼの財布から出ているよね。
模型店の次にはアウトドア用品の専門店に入って、ティンクを交えてキャンプ用品を見繕っている。
そんなにキャンプが好きになったか。
でもね、毎日キャンプはやっていられないのだよ。
私とエポナさんとルシファーは、長期出張に備えて又もや大量の食材買い付けだ。
前回の買い物から二週間ばかりで全てを使い切ったとは言えないし、どうしたものか思い悩んでいたら、エポナさんが面白い言い訳を考え出してくれた。
「博物館のボランティアで、生活に困っている方々に炊き出しをしていますの。お安くしていただけると助かりますわー」
大噓つきだ。
こいつら皆大悪党ですよ。
……私も含めてだから、内緒にしておこう。
この設定で商店街から得られた物は大きかった。
見切り品のまとめ買い割引は、八百屋に限らず肉屋・魚屋・パン屋から始まって、乾物屋・酒屋・総菜屋にケーキ屋はまだまだ序の口、食堂・レストラン・ウナギ屋・とんかつ屋、しまいにはスーパーまで協力してくれた。
エポナさんが「今日はトラックと乗用車の二台で行きましょう」と言った理由が分かってきた。
クローゼットやガレージとか旅行バックを使うのは、どうしても不自然だ。
大量の荷物を誰の目から見ても普通に運ぶのは、やはりトラックよね。
ところで、このトラックはいつになったら工務店に返してあげるのだろう。
これから私の家の改修工事も本格的に始まるんだから、トラックは必需だろうに、本当に余っている車だったのかな。
買い物を済ませたら、家に帰る前に市営グランドの駐車場。
千里眼を使って近くに人が居ないのを確認したら、荷物をクローゼットに移して車はガレージにしまい込む。
それから私のクローゼット部屋に入って、転移魔法で自宅の上空に瞬間移動。
これで暫くはこの部屋に籠っていられる。
上空から家の工事を見ていて気づいた。
隣のおばさんが毎日、職人さん達に御茶と御茶菓子を出してくれる。
今も三時の休憩で、御茶と御菓子を出している。
何かお礼しなくちゃねー。
「ねえ、みんなで釣りに行かない」
私は隣のおばさんへのお礼に、伊勢海老と毛蟹とタラバガニと鯛と鮃と鮑とか、なんでもかんでも高級そうな海産物を釣ってやると決めた。
「えー、今からっすか」
ベルゼがやる気なさそうだ。
「あたし行くー。この近くの港に、冒険者ギルドのクルーザーがあるはずだよ。それに乗って行こうよ」
「冒険者ギルドの物ですか、僕はそんなの聞いてませんけど」
ルシファーや、あんたはギルドの代表になったばかりなんだから、聞いてない知らないが当たり前の事なのだよ。
「使うには誰に言えばいいのかな」
いくら会長でも、公の物を勝手に使う訳にはいかないだろう。
「ギルドの会長さんか事務員さんに御願いして、許可が出れば使えますわよ」
エポナさんが、そのへんの所はしっかり押さえている。
「だったら、ルシファー様に言えは良いだけっすね」
はい、ベルゼ君、正解。
ルシファーの乗り物コレクションに、ギルドのクルーザーが加わったのと同じようなものだ。
「ルシファー様、御願いします。クルーザー貸して下さい」
謙虚な気持ちで願い求めてみる。
「いいですよ……これでいいのかな」
ルシファーは突然降って湧いた特権に、だいぶ戸惑っている。
会長なんだから、良いに決まってるでしょ。
船酔いするから嫌だと駄々こねるベルゼに、無理やり酔い止めを飲ませ、ティンクの転移魔法で目的の船中へ移動。
「うわっ、広いのね、これが船の中って」
もっと狭いイメージだったけど、船室は私の部屋よりずっと広くて、台所からベットやトイレからお風呂まで付いている。
快適な船旅が約束されている豪華な船だよ。
沖に出たけど夜になってしまって、あたり一帯は月明りにキラキラする波と、灯台のあかりが定期的にぐるっと回ってくるだけ。
クローゼットの中には、とりあえず宴会ができる程度の支度はしてある。
このまま船上パーティーしながら、夜釣りと洒落込むか。
「ベルゼー、しっかり船酔いしてるー」
一番の心配は彼奴の具合で、他に不安材料は何もない。
無心になって、飲んで、食べて、釣っていればいいだけだ。
「はい、薬のおかげっすね。全然平気っす」
加護のおかげとは言わないんだ。
悪魔にも人間用の酔い止め薬効くんだ。
色々と実験できて面白いわ。
アナゴ・ウナギ・太刀魚・アコウ・メバル・アオリイカ・クロダイ・スズキ・アジ・サバ・カサゴ・タコ・キス。
半分魔法を使っての釣りでだけど、釣れる釣れる。
大漁ですわ。
その場でエポナさんが刺身にしてくれるし、伊勢海老と蟹と貝は獲れなかったけど、これなら十分お礼の御土産になる。
釣れた魚はその場ですぐさま下処理して、普通なら廃棄する部分は細かくして子麒麟の食事用にストック。
実はこの子麒麟用の食事、ティンクの大好物でもある。
クローゼットに処理済みの御魚をしまって船を港に係留したら、又もや自宅の上空に瞬間移動。
今日は夜も遅いので、明日の朝一番でおばさんへ挨拶に行くとして、再び軽い飲み会。
豊漁祝いですわ。
「明日の朝、奈都姫様が御隣のおばさんへの挨拶を終えてから、ルシファー様のお城を建てる土地を見にいきませんか」
エポナさんにこう言われて初めて気づいた、目録はもらったけど、現地にはまだ行ってない。
「行きたいですねー」
勿論、持ち主のルシファーはこの答えを出してくる。
私もどんな所か、野次馬根性丸出しの興味津々ですわ。




