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御家に帰ったら、皆で買い物に行くよ

「神が生きているという表現は合っているかどうか微妙な所ですけれども、神が欲しているのは人間の信心だけですわ。信心の対価として、人間には心の安らぎを提供していますの。ですから、この世界の人間と神の関係はいたって良好で健全ですわよ」

 それはそれで良い事だとしても、説明している人は別世界の神なのかな?

「エポナさんは、今言った神々と一線を画しているように見えますけど、やはり神族なんですよね」

 平原でまたーりのたーりしている神を指して聞いてみる。

「はい、今は神族ですわね。ずっと以前は精霊でしたけど、人間の信仰心で神になってしまいましたの」

 天使が悪魔に変わるのは知っていたけど、精霊も神になれるんだ。


「へー、エポナさんみたいな神様って、他にもいるんですか」

 ひょっとしたらアトムに住んでいる神って、純粋に神してる神々だけなんじゃないかな。

「はい、神界には色々な方がいらっしゃいますわよ。人間から仙人になって信仰を集め神になったり、私のように精霊から神になったり、少ないですけど魔界から神界に来られた方もいらっしゃいますわ」

 悪魔から神に成ったってか。

 ベルゼにしてみれば自分の事のように思えるはずだ。

「悪魔も神になれるっすか」

「地球のように魔力の殆どない世界は別として、全宇宙的に見ると、悪魔と神は紙一重どころか表裏一体でございますから、決してありえない事ではありませんのよ。ベルゼ様は、すでに別世界では神に成られていますでしょ。狭い世界の極々限られた考えしか持たない人の意見に気を取られていると、もっとも大切な本質を見逃してしまいますわよ」

 ベルゼは以前いた世界では人間にとっての神だったけど、一部の神から見たら地獄送りにされた堕天使からーの、絶対的悪魔だった。

 

「見て回るより、その辺のところを聞いていた方が面白そう。アトムに住んでいない神様って、どこでどうしてるんですか」

 地球とたいして人口が変わらない世界なら、神の数もそれなりに多いはずだ。

 ここを見る限り、大勢の神が住んでいるようには見えない。

「人間界や精霊界に住んで、他の住人と同じように生活している方も多いですわね。魔界に住んでいる方もいらっしゃいますわ。邪神とか魔神などと呼ばれていますけど、この世界では皆さん争うことなく過ごされていますから、どこに住んでも誰が神でも悪魔でも支障はございません」

 随分とおおらかだこと。

「これで気がすみましたか? 神界は見る所などありませんでしょう」

 ここでキャンプしてもつまらなそうだ。

「納得です。これからどうしましょうかね。休暇というか、緊急事態って、そうそう発生しないですよね。いつでも出動できるようには心がけますけど、それにしてもですよねー」


 いきなり、暇になった。


 危険な現場を作ってまで仕事したいとは思わないけど、何かやっていないとタイダマンに変身してしまいそうだ。

 こんな不安を抱く私ってば、やはり生粋の小市民。

「とりあえずですけど、人間界に行って居酒屋で一杯やりません」

 ルシファーのとりあえずに賛成。

「子麒麟も入れるお店がいいなー」 

 ティンクは少しの間も子麒麟と離れたくないらしい。

「それでしたら、私が良いお店を知っていますわ」

 

 エポナさんの行きつけらしいお店の前に転移。

 私も地球では大きな居酒屋でアルバイトしていたけど、ここはそんなのお近づきにもなれない大規模店だ。

 余裕で千人は入れるだろう店内には、人間界だというのに人の姿はチラホラボチボチ。

 異世界から来た観光客だろう人の中には、従魔を連れている者もいる。

 元々この世界の人間界には、地球の人類とは違った人間が多く住んでいる。

 獣人と呼ばれる半獣半人や魔人と呼ばれる半妖。

 その中に魔界から移り住んでいる魔族とか、神界からの移住組である神々まで混じっている。

 種族の坩堝だ。


 人間界はこの世界で一番繁栄していて、私的には【ファンタジーそのもの界】になっている。 

 ここには国という考えが根付いていて、国境を隔てた向こうとこっちは別とする事がよくある。

 ただし、この世界の人間界は黄麒麟局が統括しているので、国と国の間に争い事は一切ない。

 争うことなく純粋に繁栄を競い合っているからか、他の世界と比べて滅法活気に溢れている。


 各国の長はいるが、人間界を制した者はいない。

 唯一、この人間界を創造した白麒麟さんだけが、全世界に対して命令を出せる立場にある。

 黄麒麟さんの計らいだかなんだかで、白麒麟さんは私の配下として位置づけられている。

 形式だけだから、お互いにたいして気にもしていない。

 ここまで特別扱いされると、とっても気が引けてくる。


 居酒屋に入ろうとしたら、聞きなれた声が聞こえる。

 例の四人組が、質の悪い冒険者と一騒動起こしていた。

 冒険者の背格好を見れば、異世界の怪獣を人間サイズにしたような出で立ちだが、内容はどうやってもしずちゃんに敵う者ではない。

 下手に手出しして、つまらない喧嘩に巻き込まれるのも馬鹿らしい。

 ここは素直に、今日は居酒屋を諦めて他人のふり他人のふり。

 こっそりこの場から逃げだした。


 いったんタイムカードに刻印してから、クローゼットに入って自宅上空へ転移する。

 無期限休暇の特別体制で待機している今となっては、無理してこちらの世界に留まる必要もなくなってきたのだ。

 暫く帰っていない家の工事現場も覗いてみたい。


 瞬間移動したのは自宅工事現場の上空。

 部屋に突然現れたポストに、ルシファーとベルゼの採用通知が入っていた。

 トリプルSのギルドカードも同封されている。

 わざわざこんな方法で送る必要が有るのだろうか。

 二人して喜んでいるから良しとしておくか。


 あっちの世界では暫くでも、こっちでは出掛けてから一日しか経っていない。

 と思ったら、随分と工事が進んでいる。

 廃材は全て運び出され、整地も終わって建物の基礎作りが始まっている。

 改装分の建物は外壁が完成していて、内装工事まで始まっていた。

 異世界時計によれば、出掛けた時から二週間が過ぎている。

 どういった理由からこんな進み方をしたのかは不明だけど、一仕事一日の経過ではなくなった。

 ますます、あっちとこっちの世界で起こる時間差に混乱しそうだ。


「こっちに来たら、まずはお買い物ですよねー」

 ベルゼはこっちに来たのは初めてなのに、回りから色々と情報を得ていた。

 兎にも角にも商店街を見てみたいらしい。

 あっちの世界とたいして変わらないんだけど、あちらではこれまた別の世界に居たから、商店街というものを見たことがない。

「千里眼でも使って見れば」

 悪魔と連れだってお買い物するのは百害有って一利無し。

 ルシファーだけでも手こずっているのに、ベルゼまで一緒にいられたら、後から商店街の人達になんて言われるか知れたものではない。

 それよりも、かける二の失神者救急搬送が確実なのに、わざわざこ奴らを連れ出す気にはなれない。


「ベルゼ様もルシファー様も、こちらの御金を御持ちでないですわよね。どうやってお買い物するのですか」 

 エポナさん、良い事言ってくれますね。

 私は貸しませんよーだ。

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