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麻雀会議で私の未来を決めるんじゃない

 これって、蛇もトカゲも蝙蝠も牛も一緒なのよ。

 ソースを掛けられちゃうともっと分らなくなって、終いには食べちゃったりして。

 美味しいから、ウェッ! ってやれないしー。


「今夜は、湖に住んでいる大角蛙さんのお肉も一緒に焼きますわね」

 食べるの怖い度が十倍になった。

 何時そんな物を狩って来たんだ。

 分身か。

 働きすぎだろ、分身。

 労働者組合作れよ。


 焼きあがって見れば、どれが蛙かどれが鳥か分からない。

 でも、私には無限生ビールサーバーという強い味方がある。

 酔ってしまえば皆同じだ。

 正直に美味しいものを美味いと言える自分になれる。


 風呂上りの一時。

 にぎやかにパーティータイムを過ごしていると、対岸のグランピングテントに灯が入った。

 千里眼で客の顔を拝んでやれば、ゴルフコースの迷子達。

 昼間っから「ファー・ファー」叫んでいた四人組だった。

「グランピングのお客さんて、幹部四人衆みたいよ」

 メンバーを見る限り、満更知らない仲でもない。

 酔った勢いに任せ、彼らをいじくる。

 余興にはもってこいのシチュエーション。

「あらまあ、それではこちらのメンバーを気づかれないようにした方がよろしいですわね。スケスケのかくれんぼ結界を張りましょう」

 いつもなら私達の悪戯を止めている立場のエポナさんが、素早くこちらを隠している。

 この後に何かを仕掛けようとしているからだ。


「では。集音マイクー」

 どこかの青い猫がやりそうな魔法で、四人衆の会話がこちらに筒抜けスピーカー。

「これから奈都姫さんの休暇はどのようにしましょうかねー」

 カチャ。

 図書室長のブツクサさんが、私達の休暇について話し合いの場を設けたように聞けなくもない。

 でも、ゴルフ場の様子を見た限りでは、しっかりはっきり休日体制だった。

「ポン。なっちゃんの異世界司書団は、地球と博物館と異世界を行ったり来たりで、勤務形態がかなり特殊だからねー。何からどうやって決めればいいのか、見当もつかないわ」

 カチャ。

 しずちゃん‥‥オフで素面の時って、あるんだ。

 しかし、カチャとかポンて、何やってるの。

 まさか、会議中に麻雀はないよね。

 だとしたら、麻雀しながら会議か。

 私の未来がかかっているってのに、どっちにしても不謹慎だよ。

 

「リーチ、そうですよねー。地球人の司書はここのところ暫く居ませんでしたから、昔は労働基準監督署なんてのもなかったですしねー」

 カチャ。

 おいこらズーボラ。

 組合すらない私立異世界博物館が、労働基準監督署に何がしか届けを出しているんかい。

 絶対にあり得ない話だわ。

「でもねー、後々の事を考えますと、労災とか失業保険とかは入っておいた方がいいのでしょう。労働基準監督署に目をつけられたら求人もままならないようですし、地球でのお仕事がやりにくくなりますわよ」

 カチャ。

 シェルティーさんってば、私は黄麒麟さんの加護受けてますから、労災いらないです。

「そうですよねー、これから奈都姫さんの休暇、とどうしましょうかねー」

 次元が違ってませんか。

 異世界司書に失業があるんですか。

 地球のお仕事があるんですか。

 せいぜい黄麒麟さんのカフェでウエイトレスの仕事くらいでしょ。

 麻雀会議で私の未来を決めるな。

 こいつら、このまま野放しはできないわ。


「はーあ。あの方達は酒癖が悪いので有名ですの。不毛な会話が永遠と続きますわよ」

 エポナさんにとっては聞くに堪えない会話なのだろう、さっさとマイクをオフにした。

「えっ、あの人達って、今とっても酔っている状態なんですか」

 会話を聞くかぎりでは素面としか感じなかったけど、どんだけ酔ってるの。

「泥酔三歩前くらいでしょうかね。何処の居酒屋でも、あの人達がつるんでいたら入店拒否ですわ。一人一人だと真面に大人しく飲んでいられるのですけど、集まると気が大きくなって普段よりずっとだらしなくなるの」

 さっきの会話は堂々巡りで結論が出ないまでは分かったけど、そんな事くらいで出入り禁止になるんだろうか。

「どれだけ悪さしたら出禁になるんですか」

「終いには店ごと吹き飛ばす事もありましてよ。シェルティーさんが何時も止め役で、随分と割を食ってますわねえ」

 ゲッ、犯罪じゃん。


「ティンクちゃん。ちょっと姿を消してからあっちに行ってちょうだい。シェルティーさんのダメージを少し和らげてあげましょう。彼女の一人勝ちにしてあげてから、わたくしが……」

 ひょっとしてエポナさんは、ティンクに如何様博打の指示を出したのかな。

「はーい、何時ものようにやれば良いんだよね」

「そうよ。任せたわ」

「行ってきまーす」

 返事からして、やり慣れている犯罪の様だが、ティンクも随分飲んで出来上がっていたし、任せっきりで大丈夫かいな。

 

 三十分程過ぎただろうか、麻雀の勝負にしては短い時間でティンクが帰って来た。

「終わったよー。三人とも箱点でシェルティーさんの一人勝ちー」

「ご苦労様。これはご褒美よ」

 ティンクのお皿に、東京駅で売っている生チョコレートが乗った。

 私も欲しい。

 どれだけチョコレートの買い置きがあるんだろう、とても気になる在庫状況だ。

 

「シェルティー様、独り勝ちですわね。おめでとうございます」

 エポナさんが念話をスピーカーにして会話を始めた。

「あら、エポナさんでしたか。どうりで、ツキまくっている訳だわ」

 何度かこんな事があったのだろう事は、前後の成り行きから容易に想像できる。

 極悪人二人で何を企むんだい。

「実は、シェルティー様に御願いがありますの」

「でしょうね。何ですか改まって」

「奈津姫様の休日は、緊急事態がない限り本人の自由という事で御願いしたいのですけど、どうでしょうか」

「そのように意見はしますけど、確約はできませんよ」

「勿論、会議の決定には従いますわ。あと、もう一つお願いが」

「何でしょう」

「国賓用の遊園地を明日使いたいのですが、予定はどうなっているでしょうか」

「ハハハハハ、あの施設でしたら御心配なく、何時でも自由に使ってください。職員も暇を持て余していますから」

「ありがとうございます。では、良い休日を」

「はい、お世話様でした」

 これで会話は終わったらしい。

 さっきの四人の会話からは想像できない。

 光速い対応だ。 


 シェルティーさんは今回の麻雀での勝ちをネタに、今の会話にあった私の休暇についての要求を押し通すに違いない。

 これからの休みを有意義に過ごそうと誓った私。

「国賓用の遊園地を、シェルティーさんが個人で持っているんですか」

 なんだか凄まじい話になっている。

 このへんの所から整理していった方がよさそうだ。

「はい、個人所有の施設なのですけど、その出来栄えが国宝級の芸術に値するという話になって『国賓を招いた時に使わせて頂戴よ~』黄麒麟様がシェルティー様に御願いした経過がありますわ」

「国宝級の遊園地っすかー。自分がそんなに貴重な所にお邪魔しちゃっちゃってもいいんすか」

 ベルゼが焚火の向こうで興奮気味だ。

 四枚の骸骨模様羽をフワフワさせている。

「良いんだよ。あたしは何度もシェルティーさんとあそこで遊んでるよ」

 ティンクも羽をふわふわさせている。

 いいなーあれ、私も羽が欲しい。

「ティンクは、アメリカのディズニーリゾートにも行った事あるの」

 絶対に行ってるよね。

「うん、何度も行ってるよ。でも、異世界博物館の遊園地ほど広くないから、直ぐに見て終わっちゃうんだよ。もっと広いと良いのにねー」

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