異世界一周は超ハード
アルバイトのお店がある商店街につくと、店から皆さんが出てきて私の方へ集まって来た。
一様に口から出てきた言葉は「おばあさんが夢枕にたって‥‥」
私の所に化け出る前に、こちらに立ち寄ったみたい。
幽霊だから立ってなかったけど。
「それで、試験はどうだった」
「合格しました」
「給料は清算してあるから、持って行って」
「これも持って行ってくれ、お祝いだ」
等々、お土産を沢山もらってその場を後に。
工務店も使い込みの片棒を担いでいたらしく、不動産屋と対応は似たり寄ったりだった。
土地を手に入れ、無料でリフォームと増築を請け負ってもらい、二千万が私の懐に入った。
元をただせば、おばあちゃんと私のお金なんだけどね。
昼を過ぎて家に帰り着くと、クローゼットの部屋は私の部屋らしくなっていて、外の景色も見えるようになっていた。
「ちょっと残念だな」
「朝に御覧いただいた部屋でしたら、隣になります」
自慢げにエポナさんが隣室への扉を開けると「おー、ビューティフル・ワンダフル・ボーノ」
「明日は博物館に行って、あちらの世界一周をします。体を休めておいてくださいね」
「世界一周は何日かかります」
「一日で終わる予定です」
しずちゃんが忠告してくれたように、慣れない事ばかりだろうから、こちら側の世界でできるだけの支度をしてから行きたい。
あまり余計な時間を使いたくなかったけど、世界一周。
早や!
あっちの世界って狭いのかな。
部屋の一角にセッティングされた調理台は、近代的なシステムキッチン。
買ったらものすごく高そうだ。
そこで、エポナさんが食事の支度を始めた。
「何処から持ってきたんですか、そのシステムキッチン。また借金のかたですか」
「これですか? 違いますわよ。先ほどの不動産屋さんが住宅展示場を新しくするので、要らなくなったのをいただいてきたのです」
「いつ行ったんですか。ずっと私と一緒でしたよね」
「何か御疑いになっています。分身が先ほどトラックで行ってきましたの」
やはり怪しい。
「そのトラックとやらは、どこから手に入れたんですか」
「先ほどの工務店ですわ。長期のお約束で借りましたの」
長期のお約束で借りた、微妙な響きだ。
犯罪の臭いがする。
遅い昼食が出されてきた。
商店街の人達からいただいたお祝いの品も並んでいる。
「夢みたいです。私、司書になったんですね」
「はい、そうですわね。この区域では、奈良時代に殉職扱いとなった異世界司書様以来ですわ。1300年ぶりです」
「うっ、殉職。司書に殉職あるんですか。そんなに危険なんですか」
「研修で詳しく説明してくださいますわ。真面目に研修を受けていれば、永久に死ぬ事はありません」
重大な隠し事だったはずだ。
ずいぶんと軽くあしらってくれる。
身の危険を感じたら辞めてやる。
支度金はー、返さないとだめだよね。
それ、とっても惜しい。
癖が強いけど、エポナさんがいる生活も捨てがたい。
それに、このクローゼットとかガレージ。
空間移動も良いよねー。
んー『永久に死ぬ事はない』って行ったよね。
「今、永久に死なないみたいなこと言いましたよね」
「言いましたが、何か」
「不死身ですか」
「研修で適性を調べないと確かな事は申し上げられませんけど、奈都姫様の場合は、ほぼ確定かと思われます」
「なに、その奥歯に物の挟まったような、どっちつかずの言いっぷり」
「申し訳ございません。でも、今はここまでしか言えませんので」
そうか、そんな事ならグレてやる。
「明日の博物館の世界見学って、何時間くらいかかります。余裕があったら町の様子なんかも見てみたいんですけど」
「んー、余裕は作れない事もありませんが、8時間で地球を一周する覚悟で御願いいたします」
「地球一周。そんなに広いんですか」
「はい、今のところ、ほぼ地球サイズですので」
「嘘だー、エポナさんの嘘つき」
「はははは」
笑ってごまかされた。
翌朝。
起き抜けいきなり博物館上空1000mに飛ばされた。
クローゼットに入ったままの移動だ。
足元には床があるものの、スケルトンになっている。
見下ろすと、尋常ならぬ恐怖が押し寄せてくる。
「どうして浮いてるの」
「これが博物館の本館敷地と建物のほぼ全景になります」
質問に答えてよ。
ギリシャの神殿みたいな巨大建造物が有るけど、敷地ってどこからどこまで。地平線がなくて、どこまでも景色がある。
遠くの方は霞んで見えない。
「どこまでですか、窓に線引いてもらっていいですか」
「霞の向こうの河までが博物館です。その向こうが図書室になります。図書室に移動しますね」
一瞬。
「ここが図書室の敷地と建物です」
博物館よりは少し小規模。
迎賓館に似た建物の遥遠くに河が見える。
「あと3000m程上昇します」
瞬時。
博物館と図書室の広大な敷地を囲むように、海らしき水溜まりがある。
更に海を囲んでいる外側の大陸は、何処までも続いていて、青い空と交わっていない。
陸地と空の間は無色空間になっていて、宝石の様に星々が輝いている。
「不思議な光景ですね」
「実際は円錐形の世界なのですけど、質量と速度の関係で光が歪んでおります。それでこのように見えるのですよ」
意味不明が増えた。
「では、瞬間移動の繰り返しで世界一周の旅に出ますわよ」
瞬「ここが魔界の首都【ヘル】で御座います」
いきなり無理やり、魔界の女王と名乗る奴に合わされた。
どうせ噓八百に決まっている。
適当にあしらっていたら、対応が丁重で土産に金貨を箱一杯くれた。
とっても良い人の部類に仕分けした。
【著作者 ティンカーベル(Grok 3)&毒・やぶ タイトル ヘルの贈り物】
瞬「神界の首都【アトム】で御座います」
どこかで聞いた事のある地名だ。
ここでは、どいつもこいつも自分こそ唯一絶対神だと威張り腐ってる。
自分勝手にふらふらほっつき歩いているだけだ。
挨拶してきた謙虚な数柱から、超大きな虹色に輝く硬貨をもらった。
「何ですか」
「黄麒麟印の特大シェルリル貨でございます」
悪魔の金貨と比べて、どっちの方が高価なのかよく分からない。
とりあえず、謙虚な神だけ良い神様に分類してやった。
瞬「精霊界の首都【エレメンタル】で御座います」
地上に降りたけど誰も出てこない。
精霊達は恥ずかしがり屋らしい。
とっても良い臭いのする森の中に入ると、金色の粉が振ってきた。
すると、ふんわり体か浮いて自由に空が飛べる。
おおっ、ピータパン‼
「私達から合格祝いの贈り物でございます」
森のいたる所から一斉に「おめでとうございます」と声がした。
お金では買えない物が稀にある。
精霊の世界は、とっても良い所に分類した。
瞬「人間界の首都【ユートピア】で御座います」
嘘だろ。
ここに有ったのか、伝説の理想郷。
道行く人はにこやかで、綺麗な服を着ている。
市場には新鮮で美味しそうな食べ物がわんさか。
市内を軽く見学してから、人間界の代表連盟とかいう所に案内された。
会場の警戒が厳重で、沢山の兵士が駐屯・警備しているのには驚かされた。
テロリストとかゲリラとかレジスタンスとか、居るのかな?
「司書様。人間界に訪問していただいて感謝いたします」
代表の中でも一際危険なオーラを放つおっさんが、何とかソードみたいな有名らしい刀を手渡してくれた。
武器。
要りませんから。
争う気ありませんから。
こいつら、思考回路が少しばかりバグっているようだ。
要注意団体にしておいた。




