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異世界司書団、警察隊に全面協力する

 ベルゼは相変らず「モアモア島に行ってキャンプっす」と出掛けていった。

 御城へ遊びに行った時に、魔導士の髭爺さんから聞いたんだけど「この世界にも地獄があるにはありますがの、ここ暫く番人がいなくて、地獄ではなくて楽園に変貌してますじゃ」とベルゼに教えていた。

 ベルゼが見に行った地獄の管理は支離滅裂で、本当に楽園化していたそうだ。

「自分達が地獄で双頭のサタンをやっていた時代を思い出したすっす」と喜んだり嘆いたりしていた。

「これじゃあ地上に悪がはびこって当然っすね」と言って、地獄の蝿騎士団に連絡していた。

 この世界で地獄の番人をやってくれる悪魔に来てもらい、モアモア島までその番人に会いに行った。

 私の予想だと、地獄の門をモアモア島に作るつもりだ。

 あそこなら無人島だし、海獣や魔獣がわんさかいる。

 並大抵の事では、近付くのさえ不可能だ。

 地獄の門を作るにはうってつけだが、ベルゼは他の目的であそこに門を作るような気がする。


 私はエポナさんの分身と一緒になって、寮の温泉にのんびり浸かっている。

 職員の人達は半数以上が王城に戻った。

 来た時に比べるとかなり寂しげな風景になっている。

 もともと滅多に使われない施設で、私立異世界博物館の寮となっているが、寮に住んでいるのは職員だけだ。

 今いる職員達は魔法力が強くて、暇を見ては建物の痛んだ個所を修復している。

 だけど、三人の職員と近所の臨時雇だけでは心もとない。

 丘の上にあって風当りが強い上に、周囲が草原なので直陽の光があたる建物は、浸食が早くて修復作業が間に合わない。

 時々私も手伝ったりして、来た時から気になっていた入口の門柱を、最近になってやっと直した。


 それぞれに、この国の為良かろうと思った事を成して、それぞれに、この世界を旅してみて、もう不穏な動きはないだろうと判断した。 

 寮に集まった時には、戴冠式から一ヶ月が過ぎていた。 

 勝手気ままに過ごすのも限界がある。

 同じ場所に長居するのも慣れていないから、里心がついてきた。

「もうそろそろ帰っても良いんじゃないっすかー」

「僕もそう思いますー」

 悪魔兄弟が切なそうに訴えてくる。

 朝方、寮の広場に出た所で、いきなりこの意見。

「私に言われてもー、この国の情勢が落ち着くまでって言われたけど、それって抽象的過ぎて、どんな状態になったら帰っていいのか判断できないわよ」

 団長としては失格発言かもしれないけど、分からないんだからこんな受け答えをするしかない。


 朝食の席でもこの話しが出てきた。

「そうですわねー。厳戒令が解ければ一段落と言った所でしょうけど……厳戒令は誰がお出しになりましたっけ」

 エポナさんが、知っているけど最低限の礼儀として質問している。

「僕ですけど」

 ルシファーが手を上げる。

「そうですわよね。臨時政府で軍の最高責任者に就任したルーキフェル・ディアベル様が発令しましたわよね。新政府になってから、軍最高責任者の引き継ぎはなさいましたか?」

「まだです。軍は一部の警備兵を覗いて、全てが警察組織に臨時編入していますから、軍の責任者は不在で、警察の責任者になっている状態です。引継ぎようがないんですよ」

 なんとなく、私達の帰れない理由が見えてきた。


「臨時政府で、警察隊の最高責任者に就任したバアル・ゼブル様。新政府になってから、警察組織の最高責任者を引き継がれましたでしょうか?」

 エポナさんの和やかな顔が、集金変化・鬼の形相へと変わっていく。

 大魔神か。

「まだっす。この国で悪さしている連中を全員地獄送りにしてからと思っているので、もう少し軍隊の力が欲しいんすよ」

 帰りたいとかいう前に、もっと早くそれを言えよ。

「もう一ヶ月だよ。どうしてそんなに時間かかってるのー」

 ティンクの膨れ顔、ちょっとだけ可愛い。

「自分達が以前いた世界みたいに、地獄が楽園になってたんすよ。そこから変えないと地獄送りの意味がなかったもんで、地獄で羽振りを利かせていた悪魔連中を静めるのに手こずっちゃって、なんせこっちは二人だったっすから」

 はっきり言っていないけど、力技の連発だったのは分かる。

 何で私達に応援を要請しなかった。

 ここのところ暫く暇してたぞ。


「で、肝心の悪党どもの逮捕は進んでいるのかい」

 ルシファーよ、良くぞ聞いてくれた。

 そこが一番肝心な所だから。

「まだ半分くらいってとこっすかね。まだまだ悪党に加担する族も多く残っていて、国外には出ていない筈なんすけどねー。毎日鬼ごっこっす」 

 ベルゼにはベルゼなりの苦労があるのね。

 もう少し待っていてあげようかな。


「あたしが預かっている魔獣地図だけど、悪人地図に変更すれば潜伏場所が出てくるはずだよ。海獣地図への変更は上手くいったから、簡単にできると思うんだけど」

 ティンクが魔獣地図を広げる。

「ティンクちゃん、何で今まで言わなかったの」

 溜息にも似た言葉が、私とエポナさんから漏れ出てきた。

「だってー、聞かれなかったもん」

 そりゃそうなんだけどー。


「それ借りたいっす。隠れ家さえ分かれば、逮捕に行く人員はいくらでもいますから、今すぐにでも出動っす」

 これで帰れる見込みが出てきた。

「あたしも手伝うー」

 おお、その手があったか。

 ティンクちゃんてば、偉いわよ。

「皆で悪党逮捕に協力いたしましょう」

 エポナさんの意見はみんなの意思。

 それでは早速、悪党退治に出発。

 息まいていたら「モイラちゃんを呼んで来ますので、奈都姫様は千里眼テレビの準備をお願いしますわね」

 皆で出掛けるんじゃなかったのかな?


 テレビの準備をしていると、モイラがエポナさんと一緒に来た。

「ひっとして、ここで逮捕する気ですか」

 私とモイラで逮捕を完結しようとしている。

 エポナさんの分身が、職員の分を含めた全員の食事を用意している。

「悪党の居場所が地図に出たら、奈都姫様が千里眼でテレビに映し出して、それをモイラちゃんが結界で閉じ込めるのですよ。ティンクが結界近くの警察隊に連絡して頂戴。逮捕を確認してもらったら、ベルゼ様が一時的な拘留場所として、地獄に囚人を送ってください。

悪党の居なくなった地域の警察隊から順番に、ルシファー様が軍に復帰させて、全員逮捕したら臨時警察隊は解散。警察組織の長と軍の長を引き継げば全て終了ですわ」


 リンちゃんは見学で良いとしても、一人だけ逮捕劇に関わらない人がいる。

「エポナさんは何するのー」

 ティンクはやっぱり偉い。

 肝心な所をついてくれる。

「私とリンちゃんで、皆さんの御世話をさせていただきますわ」

 こう言っている間にも、リンちゃんと一緒になって分身達が、温泉を掃除したり食事の用意をしたり、夜に備えて宴会の支度までしている。

 今日一日で片付ける気か、今から宴会の準備はやり過ぎじゃないの。


 もう一つ気になる事は『一時的な拘留場所として地獄に囚人を送る』ってな事を言っていたけど、私達が帰ってしまったら地獄の門は誰が開けるの。

 一時的にしろ何にしろ、生きている状態で地獄に送られたら、それだけで精神崩壊する。

 仮に魔導士の髭爺さんあたりを番人に紹介しておいて、後から門を開けて裁判とかするにしても、法廷に立つだけの正気を保っていられるかどうか疑わしい。

 早い話が、逮捕=地獄送りは死刑より辛い。

 こんな式が成り立っている。

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