六
わたしは、3年生になったら、やりたいことが3つあります。
1つは、あたらしいクラスで友だちをたくさん作ることです。はじめてのクラスがえで、今のみんなとちがうクラスになるかもしれませんが、あたらしいクラスでもいっぱい友だちを作って、たくさんの人とお話ししようと思います。クラスがはなれるのはさびしいですが、がんばります。
二つ目は、べんきょうです。わたしはさんすうがとくいなので、さんすうをもっとがんばろうと思います。そのために、けいさんをもっとたくさんやって、とくスピードを上げようと思います。とくはやさが上がればとけるもんだいもふえるからです。こくごもすきなので、もっと作文をかくのをがんばろうと思います。
三つ目は、ものがたりをかくことです。わたしはものがたりやマンガをかくのがすきなので、3年生になってからももっとかこうと思います。
この3つのことに気をつけて、3年生での生かつをもっとたのしいものにしていきたいと思います。
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あれから6年たちました。私はまた3年生になろうとしています。あの頃かかげた目標はどれもかないませんでした。私にはもうあの頃いだいていた希望だとか自分への自信なんていうものはありません。ただたった1人のあの人にきらわれたくなかっただけで。
副校長先生にあいました。「いや、僕は君のことを思ってああいうことを言ったんだが、しかしあれが故に君が一部の生徒から馬鹿にされているようで、申し訳ない次第だ」と言われました。
私はさかうらみしていただけなんです。もっとも先生の言葉をがくめんどおりにはうけとりませんが、しかしうそでもないと思います。ばかにされたと思っていたのだって本当は自分自身の才能を信じられなくなったがゆえに過大妄想していただけのようなきがします。私には才能がないんです。何においても。それをさいかくにんしただけのことです。それでもAさんは私のことをそんけいしていると言ってくれます。それが本当なのかわかりません。本当ならとてもうれしいんです。私はあの人のためなら死んだって構わないとすら思っているんですから。もしあの人が世界の全てからきらわれて処刑台にかけられたとしても私はあの人の全ての罪を背負って代わりに死んであげたいと思います。そしてあの人の目の前で首を切りおとされたいです。どうしても目の前でなければならないんです。あの人が私のことを決して忘れないように。
でもきっと本当はちがいます。あの人にとって私はたくさんいる友だちのうちの1人でしかありません。それをかなしいとは思いませんが、しかしそれでもきらわれたくはなかったんです。ただの友だちでいいから一緒にいたかったんです。どうしてこんなことになってしまったのか、それはきっと私自身の身勝手さのせいです。あの人からはやくはなれたいと思っていながら逆ではずっと一生一緒にいたいと思っていたせいです。にんちてきふきょうわというのでしょうか。でも理由なんてなんでもいいんです。ただ今はきらわれてしまった事実がかなしくて生きている意味すら見出だしえないんです。どうしていつもこうなってしまうのでしょうか。私が人と関わるとほとんどこうなってしまうんです。あれ以降あの人は私に話しかけてくれなくなりました。今までは休み時間には毎度と言っていいほど話していたのに。みんなは私をラッパーよばわりしていますし、もうみかたなんてあの人くらいしかいないのに、それすらうしなってしまった、それも私自身のせいで。
みんなが私をきらうのもきっと今までの積み重ねがえいきょうしてるんでしょうがそんなことはもうどうでもよくて、ただあの人だけは、あの人だけは私の味方でいてほしい。ずっと私と一緒にいてほしいのに、私の1番の、たった1人の友だちであってほしかったのにどうして、どうすれば元にもどるんでしょうか。それだけが気がかりで、がぶんちょうとかはなしかとかもう頭の隅からきえさりました。あの人はどうして、話かけてくれないんでしょう。きまずいんでしょうか。やっぱり私の方から話しかけなきゃかいけつしないんでしょうか。でも私にそんなゆうきありません。それにもうどうしようもないような気がします。あの人の中での私はきっとめんどうな人、自分が苦しいからってむやみにたにんをこうげきするいやな人なんでしょう。むかしはそんなふうにはおもわれてなかったのに。私があんなこと言うから。どうして、小説なんてはじめからかかなきゃよかったんだと思います。自分の才能を見せびらかそうとしていたのがわるいんだと思います。才能なんて最初から私にはなかったのに、ずいぶん長いあいだそれがありあまってあるように人へ見せかけすぎたせいで自分でも次第に才能があるとさっかくしてしまったんです。本当はないものをあるとかんちがいして、なんてかわいそうな人なんでしょう、生まれてこなきゃよかったのに。
いいんかいかつどうも私なんかがやったって誰もしたがわないので表立ったものはもうかたほうのいいんに任せっきりです。めいわくをかけてしまってわるいと思いますが今はもう彼にしかつとまらないしごとです。こころなしか私がやっていた時より彼がやった方がみんな聞き分けがいいように思えます。
けっきょく私のような弱い草は思想もクソもなくてただおのずからしょうめつしていくだけのものなんです。このセリフすら人からはいしゃくしたものなことに自分の才能のなさをますます感じます。でも私だってまだ人です、希望はなくても未来がないわけではありません。もうおもいきってあきらめようと思います。過ぎ去った日がもどることはありませんし7年築いた信頼あこがれは1夜でくずれさりました。私ももう全て過去とわりきってあたらしい日々をすごそうと思います。もうすぐ終ぎょう式、クラスがえです。今私をおちょくっている人たちとも別のクラスになれるかもしれません。あの人とも別のクラスがいいです。この上1年間顔をつきあわせながらくらすなんて、あまりにもこころがつらすぎるから。私のなやみなんてたいしたものでもないんでしょう、人によってはわらうでしょう。でももうずっとわらわれるだけの人生だったんです、わらわれることにはなれてきたんです。ただわらっている人を見ると殺してやりたくなったりはします。それでもあの人への思いに比べたらそんなことはささいで、ただあの人さえ私とまた話してくれたら、もうそれで他には何ものぞみません。ただあの人さえ、あの人さえ私のそばにいてくれたら。
これいじょうかいても意味はないのでやめようと思います。あの人と、あの人さえいれば私はもう他に何もいらない、それさえわかってくれればいいんです。本人にはとても言えないのですが、言ったところで意味はないです。ああ、どうして、どうしてはなれていってしまうのでしょう、今はただそれだけが知りたいのに。