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十三

修学旅行実施要項

■はじめに

修学旅行は中学校3年間で、最大のイベントといっても過言ではありません。

また、人によっては一生の想い出となるものです。3泊4日という短い旅となりますが、そこにはきっと普段の学校生活では学ぶことのできない新たな出会いがあり、新たな自分発見に繋がることを期待します。

■行き先

京都・奈良

■参加人数 生徒89名(男子40名・女子49名)・引率3名・看護師1名・添乗員1名


実施当日

■はじめに

修学旅行1日目に、AさんはBさんたちとまず奈良の大仏へ向かいます。

「Aさん、大仏デカくない?」「デカいね」「私さ、鎌倉の大仏も見たことあるんだけどさ、なんか奈良の方がデカい気がする」「鎌倉の大仏は見たことない」「今度行ってみなよ、っていうかAさんのお兄ちゃんが修学旅行で行ったのが鎌倉じゃなかったっけ」「違う違う、あいつは2年の時に鎌倉行って3年で京都奈良だから」「そっか、でもなんでその年だけ鎌倉になったの」「本来は箱根だったところを箱根が噴火したせいで行けなくなったらしいよ」「そうだっけ、噴火してたっけあそこ」「噴火したか噴火の予兆が感じられたかのどっちか」「ふーん、でも鎌倉も修学旅行で行ったら楽しそうだよね」「確かに」「私鎌倉好きなんだよね、あの鎌倉幕府が好きで」「Bさん歴史好きだもんね」「そうそう、私鎌倉時代のあのなんというか、野蛮さが好き」「野蛮さ?」「そう、鎌倉時代って割と野蛮なんだよね」「まあ話には聞いたことあるけど」「族滅とかやりまくってるんだよ、ヤバいよあれは」「そう、『右大臣実朝』でどっかの武将潰されてたね名前忘れたけど」「和田?」「それ」「和田はね、なんか長生きしすぎたせいで苦しむことになったんだよあれは、長く生きすぎたせいで北条に目つけられたりしたんだよ」「そうなんだ」「あと畠山とかもいるし面白いんだよねあの辺の歴史は」「へえ、あんまりあそこらへんの歴史知らないけど話で聞く限りだと割と面白そうだよね」「そう、面白そうっていうか本当に面白いから。そういえばC君もなんか歴史詳しいらしいよ」「…へえ」「この前のテストで99点取ってたって」「まあテストなんて暗記だから覚えればなんとかなるし」「でもC君いわく歴史は暗記じゃなくて流れで覚えるもんらしいよ、実はそのことに関しては私も同感なんだけど」「でも暗記でも点数取れてたらいいじゃん、点数取れればいいからあんなの」「まあそれはね、でも流れでやった方が覚えやすいんだよ、あとC君は世界史の方が好きでね、第二次世界大戦あたりが一番好きなんだって」「なんでそんなこと知ってるの」「本人から聞いた」「そういう会話もしてるの?」「まあずっと小説のことばっかり言っててもさ、ネタ切れるしね」「そう」「で次どこ行くんだっけ、興福寺?」「うん」「興福寺ってさ、どんなのだっけ」「五重塔があるところ」「わかった」

■興福寺

「五重塔ってさ、やっぱり実際に見てみるとさ、なんかこう…いいよね」「確かにね」「これって確か色々とすごいんでしょ、なんだっけ、忘れたけど」「五回焼失したことなら知ってる」「そんなに燃えてるんだ、なんで?」「なんでかは覚えてない」「そっかぁ」「ごめん」「いやいいけど、ねえ、五重塔の前でさ、記念写真とか撮りたいよね」「うん」「撮ろうよ」

5人が横に並んで写真に写ることとなり、C君はBさんの隣へ陣取ろうとします。カメラに映るためには彼らはより近寄らなければならず、結果的にBさんとC君は体と体がくっつきそうなくらいの距離になります。「…やっぱり横に並ぶの無理があるから女子前列男子前列で撮った方がいいんじゃないBさん」「女子前列男子前列って両方前列じゃんそれ」「間違えた、女子前列男子後列で」「でも5人しかいないしさ、大丈夫でしょ」「いややっぱり狭いとよくないから」「まあそれはね」結局女子前列男子校列で撮ることになります。

■寄宿舎

やがて寄宿舎に向かい、それぞれの部屋に入ることになります。この部屋も班のメンバーで決められているため、男女はもちろん別ですがAさん達の班ともう一つ別の班のメンバーで一つの部屋に入ることになります。

「Aさんってなんかさ、パジャマ可愛いよね」「…そう」「うん、可愛いよ、なんかいいよねそういう系統のやつ」「…ありがとう」「まあAさんはあんまりパジャマ可愛いとか言われたくないかもしれないけど」「いや別に…嬉しいよ」「照れてる?」「まあ」「Aさんってさ、なんか意外とそういうさ、褒められて照れるとかそういうところあってさ、いいよね」「いいかな」「うん、普段のイメージとギャップがあっていい」「そう」他の女子に声をかけられます。「みんなさ、なんかUNOでもやろうぜ」「いいね、Aさんもやる?」「UNOよく知らないんだよね私」「割と簡単だよ、ルールもわかりやすいしさ、Aさんならすぐ理解できるだろうからやってみれば」「じゃあやろうかな」

そしてしばらくUNOなどをやります。「AさんってなんかUNO上手いね」「そうかな、でもこれ抜けた時にUNOって言わなきゃいけないの気恥ずかしくない?」「まあそこはね、それも含めてのゲームなんだよこれは」「そういうもんかな」「そういうもんだよ」そして再び他の女子から「もうすぐ消灯時間だしそろそろ恋バナでもしない?」という声がかかります。「恋バナするのって既定路線なの?」「恋バナは修学旅行の醍醐味なんで例え優等生だろうと逃れることはできないんですよ」「だってAさん、Aさんの好きな人が知れ渡ることになるよ今日は」「いやいないから好きな人とか」「いやいるでしょ、なんかいそうだなってずっと思ってたんだけど」「いない」「本当に?」

しばらくすると消灯が行われ恋バナが始まります。AさんはBさん以外の女子の恋愛になど興味はないので全て聞き飛ばしています。

「Bさんは?好きな人いる?」「私はね、いないよ」「ほんとに?誰にもバラさないから教えてくださいよ」「いやマジでいないんだよねこれが」「いやいそうじゃん誰か」「いないんだよ、悲しいことに」「なんかBさんってCとか好きそうなイメージあるけど」その言葉が耳に入った途端にAさんは体の全ての血液が止まり体全体が固まるような感覚に陥ります。「C君はね…別に」「好き?」「いや別にね、好きとかではないけど」「でもなんか仲良いじゃん」「それはあれだよ、友達としてね、友達としてだから」「ほんとに?」「うん、まああのね、今後好きにならないと断言はできないけど今のところは別に」Aさんは体中の血液が凍りその全てが逆流して心臓を破裂させようとしているかのような気分になります。「じゃあ好きなんじゃん」「いやそうではない」「ふーん、Aさんは?いるの?」「…いや私は…」「Aさんこそさ、なんかいるんじゃない好きな人、私はAさんと小学生の頃からの付き合いだからわかるけどさ、Aさんって好きな人の近くにいるときはなんかすごい白々しくなるんだよね」「いやいつも白々しいでしょAさん」「いや実はね、好きな人がいる時だけ一際白々しくなるんだよ、そうだよね」「…まあそれはある意味ではそうかな」「だから私もう見当ついちゃったからね、Aさんの好きな人、まあ言わないけど」「えっ誰誰?っていうかAさんって好きな人いるんだ、なんか恋愛とは無縁だと思ってたわ、優等生だし」「…いやでも今はいないから、っていうか私の好きな人とか知ってどうすんの」「面白いじゃんなんか」「ええ…」「とりあえずなんか言ってみてよ」「ええ…えっと…もう面倒くさいからBさんでいいよもう」「えっ私?」「いや冗談だけど」「冗談かぁ、でもAさんってなんか私と話す時もたまに白々しいよね」「まあね」「もしかして私のこと好きだったりする?」「そうかもしれませんね」「マジか、レズじゃん、凄いなぁ」「いいよねレズって」「ほんとは?」「ほんとはいない」「本当に?」「うん」「ええ、でも私さ、なんか最近Aさんがあからさまに白々しくなってたの見たことあるんだよね」「気のせいでしょ」「いやあれは確実に気のせいではない」「気のせい気のせい」「いやでも私はAさんと付き合い長いからさ、わかるんだよ、そういうの」「いやわかってないね、人の心を読む力がないからBさんは」「いやいや、絶対いるでしょ誰か」「いないよ、Bさんしか」「本当に?」「ほんとほんと」「本当?」「うん」

Aさんは話を適当に流しましたが、心の内ではAさんがC君に対して何らかの思いを抱いている可能性が浮上したと考えずっと動揺しています。

■しばらく後

ほぼ誰もが寝静まった後、Aさんはふと起きてトイレに向かい、そして部屋に戻ってくると、Bさんの寝ている前まで来ます。彼女はBさんに向かって何か聞き取れないような小声で一言話しかけると自分の布団へと戻っていきました。しかしBさんから「何?」と話しかけられます。「…起きてたんだ」「なんか眠れなくて、ほら私さ、こういうあの…修学旅行とかお泊まりとかですぐに寝れないタイプだから」「そういえばそうだったよね」「さっきはなんて言ったの?」「…いやなんでもないけど」「本当に?」「うん」「教えてよ」「教えられない」「なんで」「…そのうち分かるんじゃない」「そのうちっていつ」「…もうすぐ」「もうすぐかあ」「うん」

「…Aさんってさ、C君のこと好きなんでしょ」「えっ?」「いや、憶測でしかないけど、そうなのかなって」「…違うよ」「違う?」「…逆にBさんは好きな人いるの」「…いないよ」「本当?」「うん」「…」

「本当にC君のこと好きじゃないの」「好きになる理由がないから」「でもあの人意外と顔面偏差値高いじゃん」「顔だけでしょ」「頭もいいし」「テストで点数取れてるだけで頭いいとは言えないでしょ」「性格は面倒臭いけど」「性格クソだよねあいつ」「でも意外と思いやりあって優しいんだよ」「あるわけないでしょあんな奴に思いやりなんて、優しいのだって打算とかなんじゃないの」「ほら、白々しくなってるじゃん、他の男子の話題出してもAさんって無関心なのにC君の話するとそうやってすぐ人格否定やりだすんだよね」「…まあ他の人だったらこういう風には言わないって言うのは事実かもね」「やっぱり好きなんじゃんC君のこと」「違うけど」「隠さなくていいじゃん、友達でしょ」「でもC君が好きじゃないのは事実だから」「そんなわけないでしょ、認めなよ好きって」「だから違うって」「もう隠しても無駄だから」「隠してない」「じゃあ誰のことが好きなの」「…」「あっ黙ってはぐらかそうとしてる」「はぐらかすつもりなんてないけど」「じゃあ言ってよ」「それは…言えない」「なんで」「言えないから」「そこを言ってほしい」「…」「あっまた黙ってる」「…何もわかってない」「えっ?」「あなたは何もわかってない、そうやって好きな人を安易に探って揶揄ったりなんかしちゃって…本当に好きな人なんて、愛してる人なんて誰にも言えるわけないのに」「…ごめん」「別にいいけど、でもこういう話は本当に二人だけの時にしたいから、生半可な揶揄いじゃなくて真面目な話としてやりたいから」「わかった」「急に怒ってごめん」「別にいいよ、やっぱりこういうのってデリケートな話だしさ、人によって考え方も違うだろうし、私も変になんか言って悪かったけど」「…じゃあ私はそろそろ寝るから」「…わかった、おやすみ」「…おやすみ」

布団の中で彼女は誰にも聞こえないような声でもう一度何か呟きました。

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