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この世界の創生

 


「なんで、あんた日本語なんだよ! あの時変な言葉喋ってたじゃないか。それに、なんで俺はこんなところに……! だいたいなぁ!」

「まぁ、落ち着け。順を追って説明しよう。――――それが俺の役目であり任務だからな」

「役目……任務?」

「そうだ」



 イケメンはそう言うと、部屋の端にあったコンパクトなデスクに備え付けてある椅子を持ち。そのまま流れるように自然な仕草で椅子を俺の傍に運ぶと、男らしく座った。


 いちいちやることなすことイケメン過ぎて、なんか感覚が麻痺してしまいそうだが、俺はこいつのイケメンオーラには負けないぞ。


 どうやら、こいつは色々と事情を知っている様子だし。

 きちんと説明する気もあるようだ。

 根掘り葉掘り聞いてやる。






「じゃあ、説明してもらおうか」

「いや、その前に自己紹介だな」

「……今それいる?」

「お互いのこと何も知らないんだ。まずは俺のことも知ってもらいたいし、親しくなるにはまずは自己紹介が必要だろう?」

「見ず知らずの奴とはいそうですか。と親しくなるつもりはないんだが」

「俺の名前はゼン。好きなことは旅と冒険で嫌いなことは仕事。年齢は、ヒミツ」



 こいつ、俺の話し聞いちゃいねえ。

 勝手に自己紹介始めやがった。

 というか名前しか言ってねえし、旅と冒険が好きで仕事が嫌いって遊ぶの大好きで働くのが嫌いってことかよ。

 何だこいつ。頭良さそうに見えるけど、ちゃらんぽらんなのかよ。残念イケメンか。

 しかもなんだ、最後の年齢ヒミツって。口元に指を一本添えて言う仕草がこれまた色気が出ててムカツク。



「さ、君の番だ」

「信用ならない奴に、自分の自己紹介するほど軽くはないつもりなんだけど」

「名前は?好きなことや嫌いなことは?あと年齢も」



 …………こいつ!

 あくまで俺が自己紹介するまでは事情を説明するつもりはないらしい。


 腕を組みながら余裕の微笑みを浮かべて、こちらを見てくるイケメンにさらにイラっとする。

 しかも自分の年齢言わなかったくせに俺には要求してきやがった。

 なんて奴だ。



「…………………………はぁ、(かなどめ)凛太郎。好き嫌いは特にない。今年で十九になる」

「へぇ、十九か。まだ若い年齢だが、君はもう少し幼く見えるな。ちなみにカナドメとリンタロウどっちが名前?」

「凛太郎が名前! ……ほら! 自己紹介はした! 説明をしてもらおうか。それが、《任務》なんだろう?」

「リンタロウは実にせっかちだな。でもそうだな、それが俺の《任務》だ。でも…………、君は賢そうだし薄々感づいているんだろう?」



 イケメンの言葉に思わず、少しドキッとした。

 まるで、さっきまで俺の頭の中に浮かんでた、信じたくはない考えを見透かすような言葉。



「……なんのことだよ」

「うん。君の頭の中に浮かんだ考えは今から俺が言う話と一致しているということ」

「っ…………じゃあ、ここは、この世界は」

「そう」



 あぁ、信じたくない。そんな現実受け入れたくない。

 これから聞くであろう言葉を前に、俺は耳を塞ぎたくなった。

 今まで生きてきて良かったと思ったことは一度もないのに、これ以上どんな辛い試練があるというのだ。


 あぁー……現実逃避したい。



「君が考えているとおり、ここは君がいた世界じゃない。君がいた世界の言葉で言うとここは異世界。我らが慈愛の神、カリファデュラ様と軍神、フレイヤルド様が創造せし世界」



 聞きたくなかったよ!

 その言葉!

 はい、でました異世界!


 日本では流行っていたらしいので聞きなれた単語。

 そして俺が浮かんでた考えとガッチリ一致した言葉に頭を抱えた。

 イケメンはそんな俺を軽く苦笑いしながら見てきたけど、急に真剣な表情に変えると話し出す。



「――――そしてここからが大事な話。この世界は本来、君が生まれるべきであった世界だ」

「…………ぇ?」



 どうゆうこと?



「これは決まりでもあるからまずこの世界の始まりから話そう――――」











 イケメンが話し始めた内容はめちゃくちゃ壮大な創生の話だった。










 *********














 この世界の空間というのは、夫婦神であるカリファデュラ神とフレイヤルド神との間に一番最初にできた、カリファデュラ神の胎から産み落とされた宇宙という存在である。

 ニ柱の神との間には、次に太陽が生まれ、その次に月を生み、その二つの星が愛し合った事で次々と他の星が生まれた。


 そして次にカリファデュラ神が生み出したのは三匹の(ドラゴン)だ。


 竜たちにとって宇宙で生きるということは少し環境が厳しかった。

 そこでカリファデュラ神は竜たちに住処を与えることに。

 数ある星の中から五番目に大きな星を三匹の竜に与え、星を与えられた三匹の竜は生まれ持った共通の力と異なるそれぞれ力をもって、星を己たちが住みやすい環境へと変えていく。

 しかし、星を変えるということは簡単なことではなく三匹の竜は苦戦した。


 そんな中、三匹の竜を生み出したばかりのはずのカリファデュラ神が、少しの時を経てまた新たに二匹の竜を生み出したのだ。


 そう、竜は三兄弟ではなく五兄弟だった。

 カリファデュラ神自身も驚いたが、初の多産であったため己が気づかぬうちに神体を守るために胎に宿った命を分けて育み、時を隔てて産み落としたのだ。


 こうして三匹の竜しかいなかった星に二匹の竜が加わり、三匹とは違うそれぞれ固有の力をもった二匹の力のおかげで、五匹揃った竜達は力を合わせて無事に星を創り変えることができた。

 生まれて初めて、一つのことを成し遂げた五匹の子らを祝福したカリファデュラ神は己の血と髪と涙より新たに一つの種を生み出しそれを与えた。


 母神に与えられた種を五匹の竜は、それはとても大事に大事に育てた。

 大事に育てられた種は、すぐに芽を出し大きくなり、巨大な身体を持つ五匹の竜が見上げるほどの大樹に育つ。

 大樹はさらに成長すると一つの花を咲かせ、次にまあるく大きな果実を実らせた。



 五匹の竜は食事というものも、そういう行為さえも知らなかったが、あまりにも香しい匂いを放つ果実に初めて齧ってみたいという衝動にかられたのだった。

 しかし、果実は一つしかなくそれまで仲の良い兄弟だった五匹は、果実を巡って争いを始めてしまう。

 これがこの世界初の兄弟喧嘩である。


 力が互角の五匹の喧嘩は長く続き、その間に放置された果実は七色の光を放ち樹からポロリと落ちてしまった。

 せっかく初めて実った果実が落ちてしまったところを見た五匹は、争いを止めて落ちた果実の周りに集まる。

 動揺し狼狽える五匹の中、一匹が恐る恐る落ちた果実を優しく持ち上げると果実はなんと、姿形を変えて一つの生物になったのだ。


 世界初の今でいう《人》というカタチに似た生物だった。


 五匹の竜が育てた大樹は、その後も様々な種族の命を生み出した。

 カリファデュラ神が与えた種は、己の命を生み出す力を分けて生み出した種だったのだ。


 その樹はのちに世界樹と名付けられた。




 この星の生物、主に獣や植物など以外は世界樹から生まれたので、その全ての魂はカリファデュラ神の子となるのである。






 そして、時は巡り様々な出来事、神話や歴史が刻まれた。

 現在もカリファデュラ神は、新たに生まれる魂も消えていく魂も廻る魂も、大事な己の子として慈しみ一つ一つを愛し守っている。














 *********














「これがこの世界の創世記の始まりの一部」

「…………それが俺と何の関係があるんだよ」

「ふっ、大丈夫。ここからの話が本題」
















 *********
















 一部の生物を除いてこの世界の生物のほとんどの魂は、全てカリファデュラ神の子である事は先程話したとおりで。生まれた魂は時が過ぎれば力尽きて消滅することもあるし、再び転生し廻ることもあるけど、創生初期は新たに生まれる魂の方が多かった。


 最初はカリファデュラ神だけで全ての魂を守り管理していたのだが、あまりにも増え続けたいくつかの魂が、カリファデュラ神の腕から溢れて迷子になってしまうという問題が起きてしまう。

 それに気が付いたカリファデュラ神は第二子と第三子である太陽と月に協力を願い、己の代わりに魂を守ってもらっている間に迷子になってしまった大事な魂らを探し出すことに。


 こちらの世界の輪から外れて迷子になってしまった魂の大半は世界と世界の間を彷徨っており、カリファデュラ神は彷徨う魂を拾っては己の世界に帰しを繰り返していた。

 カリファデュラ神は必死に世界を行き来し魂を救い元の世界へ帰していったのだが、ごく僅かの魂は間違って本来生まれるはずである世界の波動にとても近い《地球》という星がある世界に降り立ってしまっていたのだ。


 その世界はカリファデュラ神の魂達にとって生まれるべき世界でないため、間違った世界に生まれてしまった魂はその世界に馴染めず、迫害されたり、不遇な扱いを受けることがほとんどだった。






 カリファデュラ神が残りの魂を探しその《地球》のある世界に行きついた時には、魂達は間違って《地球》に生まれてしまっており。

 なかにはせっかく《地球》の生物として生まれ降りたのに、早くにその命を終わらせてしまいその世界の近くを再び彷徨ってしまっている魂もいれば。合わない環境に生まれ降りてしまったことで、また新しく生を受けて巡る事が出来るはずの魂なのにすり減って消滅してしまう魂もいた。


 悲しい惨状を目にし、涙しながらもカリファデュラ神は生き残っている大事な大事な子らをすぐさま迎えに行き、元の世界に全て連れ帰ったのだった。





 この時の魂達が、この世界初の異世界転移者や転生者となった――――――――。













 *********
















「――――――――ちょっと待て、ということはあれか? 俺は……俺の魂は、そのカリファデュラ神の子とでもいうのか?」

「そのとおり。やっぱり君は賢いね、話が早い。君もいろいろと心当たりがあるんじゃないのか?」

「ぃや……あると言われれば、ある、けど!」



 心当たりはある。

 め・ちゃ・く・ちゃ!! ある。


 けど、今話された神話を信じろと言われても、はっきりと実感わかないし急に自分はこの世界の神様の子です。

 なんて言われて、はい! 分かりました! とはならないだろ!!!



「でも、さっき聞いた最後らへんの感じだとその時迷子になった魂は全て――、カリファデュラ神によってこの世界に帰されたんだろう? その神話の話がいつの話かは知らないけど明らかに昔の話っぽいのに、俺がこの世界の魂だとして今転移したらおかしくないか? 全て帰したといいながら俺だけ取り残されてたってこと?」

「ほんと、君賢いね。君の言う通り、この話は一万年以上前の話だ」

「い、いちまんねん! やっぱおかしいだろ!」



 一万年も俺はほったらかしにされてたっていうのか。

 なんともまあ、俺らしいっちゃ俺らしい話でもあるが。



「大丈夫。君は一万年もの間取り残されてたわけじゃない。その時の魂たちはきちんと全て帰されている。じゃあ、なんで君が異世界で生まれてしまったのかというと…………




 実を言うとね、その後も何度か魂たちはカリファデュラ神の腕から溢れてしまうことがあったんだ」

「おいおい」



 そんな管理ずるずるで大丈夫か、この世界。



「一応そんなことが今後起こらないようにと対策はいろいろとされたんだよ? カリファデュラ神だけで魂たちを管理せずに太陽と月と第一子の宇宙も加わり、守りと管理をするようになったり。増え続ける魂をなるべくそれ以上増えないように、守り切れるだけの量に調節するようになったりなどなど。

 でも、カリファデュラ神はとてもおっとりした神様でな。ついつい居眠りしてしまった時や目を離してしまった時にポロっと魂が溢れてしまうんだ」



 随分とまあ、おっちょこちょいな神様がいたもんだな!

 どんな神様だよ!



「とまあそんな感じで数百年、または数年に一度、迷子になり異世界で生まれることがある魂は、その度にカリファデュラ神自らが迎えに行くことがある。

 この世界で異世界転移者や転生者は珍しくないんだ。君は約三年ぶりの異世界転移者だな」

「三年ぶり…………。ん? ちょっと待てよ、カリファデュラ神自ら迎えに行くってことは…………。





 あの時の!ここに来る前に見たこの世のものと思えない綺麗な人はそのカリファデュラ神ってやつか!幻かと思ったけど……。

 へぇー、めちゃくちゃ綺麗な女神だったなあ……」



 どんな神様だよって思わずツッコミ入れたけど、どんなもなにも俺見たことあったわ。

 あれがこの世界の神様で俺の魂の母? になるのか?

 どんなファンタジーだよ。

 そろそろ話についていけなくなるわ。



「ん? カリファデュラ神は女神ではないぞ」

「んっ?」

「カリファデュラ神は男神だ」

「はぁ!?」

「そもそも、この世界の生物、主に獣や植物以外は全て(オス)だ。まぁ、一部魔力を持つ獣とか例外もあるがな」

「…………はぁあぁあああ!?」



 なんだよ!ファンタジー!!!

 俺もう、ついていけません!!!!!










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