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召喚二世の革命記  作者: 霜月智
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ファーストエンカウンター

 最初の授業から数日、僕らはすっかり浮いてしまっていた。


「原因はやっぱり……あれだよなあ」


 初日の魔法実技を思い出す。

 魔法をこれから本格的に学ぼうというクラスメイト全員の前で、訓練用の人形をライリーは旋風で爆発させ、僕はその破片が一斉に燃え上がるほどの熱風を放ち(少なくとも魔法に不慣れな生徒にはそう見えている)、マーディンは、どうやら水圧で人形を抉ったらしいのだ。


「マーディンも気にしてるんだ?」

「そりゃあ、な。俺たちが浮くのは仕方ねえよ。でも、何もしてねえクレアまで変な目で見られるのは辛いぜ」


 そのクレアは今、別のクラスメイトと話している。

 話し相手の子が時折こちらをちらちら見てくるのでいたたまれない。


「他の連中と話しててもさ、なんか壁を感じるんだよなー」

「壁を作ってるのはお前ではないか」


 不意に、背後から声をかけられた。


「これはこれは、王太子殿下」


 マーディンが芝居くさい挨拶をする。


「それだ、その態度。君たち2人で話していたときの態度が嘘のようだ。私が何かしたか?」

「いえ、何も」


 マーディンははぐらかすように返した。


「やはり壁を作っているではないか。ユウキ、君もそう思うだろう?」

「え?僕の名前――」

「学友なのだ、当然だろう。特に初日から凄まじかった君のことはな。ユウキ、私はアーサー・フォン・ブラクストン。アーサーと呼んでくれ」

「ありがとう、アーサーさん」

「アーサーでいい。先生も言っていただろう?ここで学ぶ限り、我々は対等だ」

「わかったよ、アーサー。初日から凄まじかったのはアーサーもだけどね、魔族と戦いたいだなんてね」


 すると、アーサーは急に険しい顔になって、


「私は、父を超えねばならないのだ」

「……」


 アーサーの、切実な言葉。

 このクラスは名門出が多いからか、父親に対しての思いが強い人が多い。


「君にもあるだろう、そういう気持ちが」

「……そうだね」


 僕の返事に「そういうことだ。ではまた」と頷き、アーサーは席に戻ってしまった。


「おい、大丈夫かよ」

 マーディンが耳打ちしてくる。


「嘘は言ってないよ。コルターさんにはしきれないくらい感謝してるし」

「でも――」

「そういえば、あの話はどう?」


 あの話、というのは召喚の話だ。


 話は初日の放課後に遡る――。



「あんまり気にしないようにしようぜ、やっちまったもんんはしょうがねえし」


 寮の自室で考え込んでいると、マーディンが気にかけてくれた。


「ねえ」

「なんだ?」

「英雄王って、異世界から召喚されたって話だけど」

「らしいな」

「それって、本当?」

「俺らはまだ産まれてねえけど、20年も経ってない話だろ?流石に嘘ってことはないんじゃねえの?」

「わざわざそんな嘘つく意味もないし……か」

 

 つまり、英雄王は異世界から来た人ってことだ。


「じゃあさ、誰かが異世界から召喚されたって話って、結構あるのかな?」

「いや、聞いたことないけどな……なんだってそんなこと気にしてるんだ?」

「実は……」


 僕は、母から聞いた話をマーディンにした。


「ってことは、英雄王がマーディンの親父さんかもしれないってことか?」

「もしかしたら、だけど……」


 マーディンはあたりを気にすると、僕に顔を近づけて、


「その話、誰にもしてねえよな」

「う、うん、マーディンが初めてだけど」


 やっぱり、おいそれとしていい話じゃないよな。


「こんな話が表に出てみろ、継承権争いになるぞ」

「まだそうと決まったわけじゃないけど……」

「可能性の話をしてんだよ!王太子と殺し合いになるかもしれないんだぞ!それに、こっちにその気がなくても、もし早合点した連中に命狙われでもしたら……」

「だよね……否定する手段がないし」


 マーディンに相談した結果、かえって悩みが大きくなってしまった。


「まあ、まだ決まったわけじゃないしな。俺の方でもそういう召喚の事例がないか調べてみるわ」

「気遣いありがとう」



 ――というやりとりがあったのだ。


「で、どうだった?」

「ああ、調べてみたんだが、記録によると、どうやら異世界からの召喚が行われた形跡はその一回だけらしい」

「ってことは、やっぱり……」

「そういうことに、なるな……」


 二人して頭を抱えてしまった。


 ――でも……ということは……、

 僕ら母子が村で大変な生活をしている間……、

 母さんが病気になって苦しんでる間……、


 父親だというのに、玉座でのうのうと暮らしてきたというのか!!!!!


 英雄の功績をいいことに、母さんを弄び、放り出しておいて、今なお贅の限りを尽くしているというのか!!!!!


「……ウキ……ユウキ!」


 ハッと我に返ると、心配そうにマーディンが顔を覗き込んでいた。


「大丈夫か?凄い顔になってるぞ」

「ああ……ごめん」

「しっかりしてくれよ、このことは誰にもバレちゃだめなんだから」

「ああ、ありがとう。相方がマーディンでよかったよ」

「ふ……ははっ、相方か……そうだな」


 やっと、マーディンの顔が緩んだ。


「相方でしょ、クラスも部屋も同じなんだから」

「浮いてるってクラスの立ち位置もな」


 ははは、と僕らは笑い合っていた。

 この先に待ち受けている出来事を、僕はまだ何も知らずにいたんだ。

いつも読んでくださりありがとうございます。

よろしければブックマークやいいね、コメントなどもいただけたら嬉しいです。


先日、読み返していて謎の空白「」を見つけてしまったことから、投稿済の話の誤字修正をしました。

まだ見落としがあるかもしれません。

無意識って怖い……。


読者の皆様に楽しんでもらえますよう、執筆、修正等頑張っていきますので、温かく応援していただけると幸いです。

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