授業初日
告知では先週末だったのにこんなに遅くなってしまいすみません!
楽しんでもらえると嬉しいです!
翌日。
僕らは早速、この学校ならではの魔法の授業を受けていた。
「本校に来ている皆さんはもう知っているかもしれませんが、まずは基礎から確認していきましょう」
僕らに魔法を教えてくれるのは、担任でもあるソフィア先生だ。
「我々人類は、空気中にあるとされる魔素というエネルギーを体内に取り込み、魔力に変換することができます。この詳しいメカニズムは科学の科目でお話しするので今日は省きますが、この魔力を活用することを魔法と呼びます」
僕らはそのメカニズムを意識せずに魔力を生み出せるが、それは体内のエネルギーを変換しているのではなく、外部からエネルギーを取り込んでいるのだそうだ。
「魔法には3つの段階があります。まず、生み出した魔力をそのまま身体に纏い、強化する身体強化魔法」
身体強化では、身体を丈夫にして衝撃から守ったり打撃力を高めたり、また行動速度を速めたりすることができる。
「次に、魔力を空気中のエレメントに変換して放出する属性魔法」
属性には火、水、風、雷があり、魔力はこれらの現象として具現化できる。
「最後に、魔力にもっと明確な役割を持たせて発動する特殊魔法。これは非常に難しい魔法で、これが使える人間はほとんどいません」
現象として発生させるのではなく、役割を絞ることで、その分大きな力を発生させることができる、ということらしい。
「皆さんがよく知る例で言うと、英雄王様の剣や鎧がそうですね。魔を祓い、魔族を打ち倒す魔法が宿っています」
「先生」
ひとりの生徒が手を挙げた。
「はい、ハリスくん」
「英雄王様の剣や鎧は何人もの魔術師が造ったと聞いたことがありますが」
「ええ、魔法というのは、複数人で協力して発動することも可能です。強力なもの、大規模なものにはその分必要な魔力も膨大になるので、魔力の生成や操作を分担するという方法が取れます」
魔力の付与というのは、自分の身体に纏わせるだけでなく、他者に受け渡すことも可能、ということらしい。
「魔力は本当に大きな力とその可能性を持っています。かつて魔王が世界の門を開いたように、突き詰めれば空間をを歪めることすらできるようなものです」
ソフィア先生の声が厳しくなる。
「これは非常に危険な力です。しかし、制御し、正しく扱えば人々に大きな利益をもたらすものです。この科目では、皆さんにその魔法の扱い方を学んでもらうとともに、魔法のよりよい使い方や、その活用法等を考えたり、魔法という分野を発展させる、そのための基礎を学んでもらえたらと思っています」
それと、とソフィア先生は続ける。
「過去にあったということは、再び魔族が世界の門を開いて侵略してくる可能性もあるということです。もし、そうなったときにこの世界を防衛する手段、それを磨いてもらうことも目的のひとつです」
何人かの生徒が目を輝かせる。
「なので、この科目では戦闘に関する実技も行います。危険が伴う活動もあるので、十分注意するように」
と、いうことで、座学もそこそこに僕らは屋外の実技場に連れ出された。
「今日はひとまず、皆さんの魔力操作を見せてもらいます。入学試験では最低限でしたし、クラスメイトがどんなことができるかを見るのもよい学びになるでしょう」
ひとりずつ、順番に魔法を披露していく。
身体強化をして高速で移動する人。
掌の上に火を灯す人や、水の球を生み出して投げる人。
強化した拳で用意された人形を殴り割る人。
「お、王太子殿下の番だぜ」
マーディンが声をかけてくる。
実技場の中央に出た殿下は、おもむろに懐から剣を抜くと、魔力を込めて炎を帯びさせる。
そして用意された人形を斬りつけると、一瞬にして人形が炎上した。
さらに水の球を生成し投げつけると、人形はたちまち消火された。
生徒から歓声が上がる。
「いかがでしょう?先生」
「いかが、とは?」
殿下の問いかけにソフィア先生は首を傾げる。
「私の魔法は魔族に通用するでしょうか?」
「魔族と戦いたいのですか?」
「いえ……しかし、もしもの際には防衛を担わなければならないわけですし、父は魔王を討ち倒したわけで、私は父に近づきたいのです」
英雄王の息子か……父親の存在が大きいと大変なんだろうか。
僕に父さんの記憶はないから、少し羨ましくもあったり。
――あれ?英雄王って確か……。
「うーん、そうですね……魔族と一言で言っても様々な種がいて、その中には魔法が得意な種も多いので、今の力でどこまで戦えるか、即答するのは難しいですね」
「そうですか……」
殿下は少し落ち込んだようだ。
「基本的に魔族は人間より魔力操作に優れているようです。種によって得意な魔法を持っていたり、固有の魔法が使える種もいます」
ソフィア先生が他の生徒にも注目させて続ける。
「魔族との戦闘の原則は多対一です。強力な相手になるほど、大人数でかかることになります。なので必要なのは自分一人が強い力を持つことより、仲間とより強く連携できることです」
「必要なのは連携……」
「そうです。なので、魔族と戦うつもりがある人……今日も何人もの人が攻撃的な魔法を見せてくれましたが、そういう人は、自分の力を高めるだけでなく、友人を増やしたり、周りの人二気を配ること。これを心がけるとよいですね」
そこまで話すと、先生は実技に戻った。
あ、ライリーの番だ。
ライリーは細い剣を強化して人形を貫いた。やっぱり騎士様って感じだ。
うわ、刺さった剣に付与された風が刃みたいに放出されて人形が弾け飛んだ!
流石に何人か引いている。
「すごいね、ライリー」
実技を終え戻ってきたライリーに話しかけた。
「あはは……ちょっとやりすぎたかも」
「いやー衝撃的だったぜ」
マーディンも話に加わってくる。
「あれが生き物だったらと思うとショッキングだよなー」
「ちょっと!あんまりからかわないでよ」
「う……ちょっと想像しちゃった」
「ユウキまで……あ!ほらそろそろユウキの番だよ」
話を逸らすようにライリーが言う。
ソフィア先生に呼ばれて前に出る。
――さて、何をしようか?
魔法は生活の道具として使ってきただけだからなあ。
畑の水遣りの実演とかしてもわからないだろうし。
ふと、人形の破片が目に入った。
先ほどライリーが四散させたものだ。まだ実技場に散らばっている。これを使おう。
僕は実技場の縁まで下がった。生徒たちが何をするのかと不思議そうに見ている。
魔力を多数の火の粉に変換して風魔法で飛ばした。
熱波として放たれたそれは散らばった人形の破片に次々と到達して発火した。
後ろから見てたみんなには突然人形の破片が一斉に燃え上がったように見えただろう。
これは普段は焼畑農業の着火に使ってるものだけど、攻撃系の魔法が続いてることで、集団を殲滅する火魔法に見えたかもしれない。
おお、クラスメイトが引いてるのがわかる。ライリー1人だけをドン引き魔法使いにはさせない。
「なにあれ、殺戮魔法じゃん……」
実技を終えて戻ると、ライリーも引いていた。
友情は伝わらなかったらしい。
「お疲れ様。凄かったです」
いつの間にか合流していたクレアが笑いかけてくれる。
ドン引き魔法で独りぼっちにならなくてよかった。
「あれね、実は火の粉を飛ばして着火してるだけだから、威力とかあんまりないんだよね。動いてる相手には当たらないし」
「じゃあなんでそんな魔法覚えてるの?」
「収穫が終わった畑を焼くためにね。そうすると次の野菜もよく育つんだって」
「あ、そうなんだ」
「それ、私も聞いたことがあります。パンディアあたりの一部地域で行われてる農法みたいです」
「へー、やっぱりユウキってパンディアに縁があるんじゃないの?」
「どうかなあ?母さんがそっちの人なのかもしれないけど」
「おう!俺の魔法どうだった?」
僕と入れ違いで実技に行ったマーディンが戻ってきた。
「ごめん、見てなかった」
「話が盛り上がっちゃって」
「ごめんなさい」
「ウソだろ誰も見てねえの!?」
後でわかったことだけど、どうやらマーディンもドン引き魔法を披露したらしい。
ドン引き魔法で独りぼっちが出ないようにと考えた結果、僕らはドン引きグループになってしまったのだった。
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