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召喚二世の革命記  作者: 霜月智
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暴漢と盗難

「すみません、助けてもらえませんか!?」


 突然のことに僕は頭の中がいっぱいになってしまった。


「え!?あの、えっと」

「怖い人たちに追われてるんです!お願いです!助けてください!」


 女の子は必死だ。


 歳は15前後くらいに見える。僕と同じくらいかな?

 息は乱れ、僕を見上げる大きな瞳が揺れている。


 すると、先ほど女の子が出てきた路地から男が2人現れた。

 2人とも少し年上に見える。大きい身体で僕を見下ろす。


「おう坊や、その女を渡してくれねえか」

「俺たちゃそっちの娘に用があんだ。大人しく渡してくれりゃあ悪くはしないぜ」


 僕は女の子を背にして男たちに立ち塞がった。

 女の子は震えながら僕の背後に隠れた。


「お、やる気かよ坊や」

「痛い目見るぜ」

「強者が弱者を脅して搾取するなど、見過ごせません!」


 男たちに啖呵を切る。

 僕がどれだけ戦えるのかはわからない。体格でも数でも不利。でも、見て見ぬふりはできなかった。


 睨み合うこと数秒。


 不意に、男たちが構えを解いた。


「まあいいや、こんなとこでガキをボコってもしょうがねえ。行くぞ」


 そう言うと、男たちはもと来た路地をあっさり帰っていってしまった。


「何だったんだ……?あ、そうだ!お嬢さん、もう大丈夫ですよ……あれ?」


 振り返ってみるとそこには女の子の姿はなく、僕の荷物も消えてしまっていた。


 ーーーーーーーーーーーーーー


「ここまでくれば大丈夫かな」


 女の子は路地をいくつも曲がり、ようやく一息ついた。

 手元には少年からくすねたカバンがある。


「さて、カバンの中身はなんだろなっ……と、ん?何これ、枕?」

「それは大事なものなんです、返してくれませんか」


 突然の声にギョッとして振り返る。

 そこには、先ほど撒いたはずのカバンの持ち主が、息を切らして立っていた。


 ーーーーーーーーーーーーーー


 路地を探し回って、ようやく彼女をみつけた。

 むき出しの盗品を持って大通りには出ないと踏んだ。

 範囲を絞って、魔法も使って全力疾走で駆け回ってようやく辿り着いた。


「それは大事なものなんです、返してくれませんか」

「な……んで……」


 眼の前の女の子が驚愕に震える。


「見つかるまで走りまわっただけですよ。ほら、それは僕のカバンです。返してください」

「へ、へぇ〜、そんなに大事ってことは、さぞ高価なものなんでしょうね。なんだか渡したくなくなってきちゃったわ」


 ふざけたことを言う。

 僕は身体にいっぱい力を込めて女の子を睨みつけた。


「な、なによ、やるつもり?」

「返してくれないって言うなら、力ずくになるしかないですね」


 母さんの枕で、母さんの薬のための金だ。

 何をしても取り返す。


「逃してはくれないみたいね」


 女の子が臨戦態勢を取る。

 僕は逃さないように両足に魔力を込めた。

 魔力操作のひとつ、身体強化魔法だ。


「バカにするな!フレイムブラスト!」


 女の子の魔力が炎を象り、爆音が鳴り響いた。

 火球を破裂させ、音と炎と熱風で相手を攻撃、撹乱する魔法だ。

 爆ぜるように炎の礫と熱風が押し寄せる。

 発動と同時に女の子は駆け出す。僕の左側面に回り込む動きだ。


「アクアカーテン!」


 僕は薄い水の幕を作り炎と熱風を防ぐ。

 と同時に水を目くらましにして、回り込もうと突っ込んでくる女の子に拳を合わせる。


「がっ」

 不意を突かれた女の子がよろける。

 間髪入れずに足を掬い、倒れた彼女の両腕を後ろ手に押さえつけた。


「何事だ!」


 爆音を聞きつけた人々が少しずつ集まってきた。


「くっ……捕まるわけには」

「荷物、返してもらいますよ」


 女の子が落とした僕の荷物を拾い上げる。


「枕は無事。お金も……うん、ちゃんとある」


 カバンを確認した一瞬、

「捕まってたまるかあああ!」

 女の子が僕の拘束を振り解いて逃げ出した。


「しまった!」

 安心して気が緩んだ隙を突かれた!

 女の子はフレイムブラストの爆風を利用して高々と跳び上がる。


「逃さない!ウインドブラスト!」


 風が爆ぜる。

 僕の魔法が直撃して、女の子が撃墜された。

 周囲から「おお!」と歓声が上がった。

 

 女の子は、自警団だという若者たちに引かれていった。

 騒動の経緯を説明していると、ドミニクさんが合流した。


「ユウキくん、災難でしたね」

「あ、ドミニクさん。すみません、約束の時間に間に合わなくて」

「いえいえ。それより凄いですね、今の魔法」


 騒動の野次馬の中にドミニクさんもいたらしい。


「見られてたんですか、恥ずかしいですね」

「魔法はどこかで教わったんですか?」

「いえ、風や水の魔法は畑仕事に便利なので覚えたんです」

「へえ、独学であれだけ魔法を。やはり……」

「やはり?」

「いえ、それだけ魔法の素養があれば、学校にも通えそうだと思いまして」

「学校、ですか」

「ええ、魔法や、それ以外にもいろいろな知識や経験を得られる場所です」


 学校か……。

 僕はまだこの世界を何も知らない。

 人のことも、国のことも。こんなに毎日見てた王都のことだって、入って見るまでどんな場所かも全然知らなかった。

 勉強してみたい。もっといろんなことを知りたい。


 でも……

「お金ですか……?なんでしたら、私が出して差し上げてもよろしいですが」

「いえ、僕には母さんがいますので」


 やはり、病気の母さんを1人残して学校に入るわけにはいかない。

 生まれて15年。決して丈夫ではない身体で、ボロボロになりながら僕を育ててくれた母さん。


「そうですか、よい機会だと思ったのですが」

「お気遣い、ありがとうございます。でもやっぱり、僕には母さんを見捨てる選択はできません」


 結局、学校にという誘いは丁重に断った。

 ドミニクさんは最後まで勿体なさそうな顔をしていた。


「薬も手に入りましたので、うちに帰りましょうか」

「あ、ではお金を」

「いえ、薬の分はもう頂いてますので、それはあなたのお金ですよ。母君の様子も気になりますが、今からでは夜に間に合いませんので、明日の朝一で出発することにしましょう」


 ということで、その夜は再びコルター夫妻のお世話になった。

 翌朝、出発するときには夫妻に随分と別れを惜しまれた。


「また来いよ」「いつでも泊まりにおいで」って、そんな気軽に来られる距離じゃないんですけど……。


 王都に来たときと同様、時間こそかかったものの特に問題もなく帰ることができた。

 道の脇に茂る森が不気味なほど静かで、吸い込まれそうな胸騒ぎがあった。



 村のはずれに差し掛かると、僕は母の小屋に駆け込んだ。

「母さん!」


 そこには、横になって今にも力尽きそうに苦しむ母さんの姿があった。

読んでくださりありがとうございます!よろしければブックマークやいいね、コメントもお待ちしてます。


今のところ毎日投稿する予定ですが、GWが終わることもあり、1日空いてしまうかもしれません。

その際はすみません。

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