王都
遅い時間になってしまいました。
母さんに行き先を伝え、王都へと発った。
村と王都の間には森が広がっているので、迂回路を進む。
「申し遅れました。私はドミニク・コルターと申します。所属がわからないと不便ですよね。王都で何か聞かれたら、コルター商会の手伝いだと言ってください」
道中、商人改めドミニクさんは自己紹介をしてくれた。
王都での僕は、ドミニクさんの商会の新米の下働きということになるらしい。
「ドミニクさんは王都にはよく行くんですか?」
「私自身はあんまり行きませんね。ただ、王都にも店を出してて、うちの子に任せてるから、ごく偶に仕入れがてら様子見に行くくらいですよ」
「そうなんですね。てっきり王都に住んでる方かと」
「家はパンディアにあるんですよ。仕入れも普段は部下に任せてまして」
「ああ、それで今日は道を」
「ええ。まあ、おかげでユウキくんに会えましたし」
ドミニクさんが笑う。
その後はパンディアの話を聞いたり、ドミニクさんの家族の話を聞きながら馬車に揺られた。
王都までは、特にトラブルもなく着くことができた。
森を大きく迂回したことで、到着したころには夕方近くになっていた。
「夜になると少々物騒なので、明るいうちに着いてよかったですね」
ドミニクさんはそう言いながら、王都の関所を抜ける。
「わあ……」
思わず声が漏れた。
整然と立ち並ぶ建物。大通り沿いには店の看板が並んでいて、そして何より、
「人がいっぱいです!あっちもこっちも!」
「これが王都エマルゴンです。今も賑わってますが、お昼頃だともっと人がいますよ」
「凄いです!見たことないものばかり!」
大通り沿いの店には綺麗な服や家具が並んでいたり、料理の店からはおいしそうな香りが漂ってくる。
露天には見たことない工芸品も並んでいる。
「あれは何ですか?」
「あれは長い髪の毛を纏めるものですよ。珍しいですよね。なんでも英雄王のもたらしたものだとか。さあ、今日はもう遅いのでうちで休んで、働いてもらうのは明日からにしましょう」
落ち着かない僕を宥めて、ドミニクさんは家に案内してくれた。
家はドミニクさんの息子さんのもので、息子さん夫婦が2人で住んでいた。
2人は僕を見て驚いていたけど、歓迎してくれた。
はじめての馬車の旅で疲れもあり、夕飯を食べたらすぐに寝てしまった。
翌朝、
「悪いですよこんな」
「何言ってんの!そんな格好でお客さんの前に出るほうがよっぽど悪い!」
「お、結構似合うじゃないか」
コルター夫妻に服を見立てられていた。
「これなんて格好良いんじゃない?」
「俺のお古だから気にするな。うーん、これなら直しもいらないな」
戸惑う僕をよそに、2人は服選びを進めている。
「そろそろ決めてください。時間ですよ」
ドミニクさんが助け舟を出してくれた。
「おお、様になってるじゃないですか。それで行きましょう」
結局、服を一式貰ってしまった。
薄い緑色の、落ち着いた色の上下セット。
加えて、靴まで渡され、髪型も整えてもらった。
鏡を見ると、別人のように綺麗になった自分がいた。
「わあ……」
「いい反応〜、やった甲斐があるねぇ」
「あ、ありがとうございます!」
「はい、それでしっかり働いてきな」
ということで、野菜を持ってお店に行くことになった。
……野菜は、お店に引き取ってもらうだけで終わった。
「売る手伝いをするって話でしたが……」
「はい、お店に売れました」
ドミニクさんがしれっと言う。
「時間に余裕ができたので、王都を見て回っていてもいいですよ」
「いいんですか!?」
「ええ。私はこれから店の仕入れなどもありますので、昼頃に合流しましょう」
思いがけず、王都を散策できることになった。
「でもあの、折角服までいただいたのに」
「ええ、十分働いてもらいました。先ほどの八百屋の人、ユウキくんを見てニコニコしてたでしょう?」
「ええ、でもそれが?」
「もちろんそれだけではありませんが、相手に好印象を持ってもらうというのは、商売においてもとても大事なのです。それだけで成功率も上がるんですよ」
「でもそれだけでは……立っていただけなのに」
「私が良いと言っているのですから良いのです。行きたいのでしょう?若いうちからあまり我慢するものではありませんよ」
と言われ、強引に送り出されてしまった。
野菜の分だとお金ももらったので、気になっていた大通りの店をまわることにした。
綺麗な服……はもらったので、家具の店に入ってみた。
テーブルや椅子、棚などが並んでいる。
中には細かく装飾の施されたものもある。
ふと、寝具のコーナーが目に入る。
ベッドや布団は手が出ないけど、枕くらいなら……
良い枕にしたら、母さんも少しは、楽になるかもしれない。
いくらか試してみて、首への負担が軽いものを買った。
その後も、アクセサリーの店を覗いたり、果物を何種類か買って食べながら歩いてみたり、変な置物の露天で鳥の置物を買わされそうになったりした。
家具店の店員さんに勧めてもらったので、通りを少し外れたところにある公園にも行ってみた。
大きな噴水や綺麗なモニュメントがあったり、並木道は涼しい風が通り抜けていた。
木漏れ日が気持ち良いベンチで休んでいると、ドミニクさんとの約束の時間が近づいてきた。
大通りに戻ろうと路地に入って
「キャーーーーーーー!!!!!」
悲鳴と一緒に1人の女の子が飛びこんできた。
「すみません!助けてもらえませんか!?」
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