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召喚二世の革命記  作者: 霜月智
2/12

旅立ち

「何が平和だよ……」

 僕は畑から彼方に見える王城を睨み、つい零した。


 ここはエマルラーゴ王国の王都エマルドン、その周辺にある小さな村。……の、さらに村はずれ。

 僕は急ごしらえのような小さな小屋に母さんと2人で住み、畑を世話して暮らしている。


 村は……寂れている。

 田舎だから、というものではない。

 戦争の傷が癒えていないのだ。


 終戦から15年、未だ復興は進んでいない。

 いや、進んではいるのだろう。

 僕は再び彼方の王城に目を遣る。

 栄えている……少なくとも僕の目にはそう見える。

 たまに花火が上がっているのも見える。

 しかし、その復興の手がこちらに伸びることはない。


 ――きっと、この村はもう見捨てられたんだ。

 彼方に、とこそ表現しているが、現実に王都との距離がさほどあるわけではない。

 王城が見えることからもわかるように、都とこの村を遮る街や建造物があるわけでもない。


 ただ、手が届かないだけだ。



「ユウキ、おかえり」


 畑での収穫を終えた僕を母が迎えてくれた。

 

「母さん、寝てなきゃだめじゃないか」

「帰ってくるユウキが見えたから、つい」


 母さんがうっかりと言うように微笑む。


「ささっとご飯作っちゃうから休んでてよ」


 僕はさっき取ってきたばかりの野菜を手早く切ってスープにした。

 炊いておいた雑穀もよそい、食卓に並べる。


「「いただきます」」


 食べながら、畑の様子や食後の予定などを話す。


「今日はこのあと、村の方にも野菜を配りに行ってくるよ」

「あら、じゃあケビンおじさんによろしく伝えておいてね」

「わかったよ」


 ケビンおじさんというのは、僕ら親子に住む小屋や畑を工面してくれた人だ。

 他所者だった母を快く受け入れてくれ、今も母の体調を気にしてくれている。


 食べ終わった僕は、野菜を荷車に乗せて村に向かった。


 村に着くと、大人たちが馬車に群がっているのが見えた。

 こちらに気づいたケビンおじさんが駆け寄ってくる。


「おうユウキ、タイミングがいいな」

「こんにちはケビンおじさん。なんですかあれ?村にあんな綺麗な馬車が来るなんて珍しいですね」


 そもそもこの村に馬車が寄ること自体が珍しい。

 この村には馬車はおろか馬なんて1頭もいないし。

 大人たちの輪の中心で身なりのよい男が何か話している。


「なんでも、王都に向かう商人らしい。道を間違えたついでに休憩できないかってこの村にに来たんだとよ」

「へー。それで、タイミングがいいってどういうことでしょう?」

「あの商人、どうやら薬も仕入れるみたいでよ。お前の母ちゃん、ずっと具合悪いだろ?」

「それでですか。母をいつも気遣ってくださりありがとうございます」

「その子が、先ほど話に挙がった少年ですかな?」


 ケビンおじさんと話していると、商人がこちらに寄ってきた。


「ええ、こいつが薬が必要な家の」

「ユウキと申します」

「ほう、ユウキくんですか。珍しい名前ですね」

「先の戦争の後でこの村に来たもので。亡き父が付けてくれた名だそうです」

「そうですか。母君も苦労なされたのですね」


 商人は何かを少し考えて、そして再び口を開いた。


「そういう事情でしたら、薬を差し上げたいのもやまやまですが、なにぶんこちらも商売でして、タダというわけには」

「と言われても、僕が出せるものはこの野菜くらいしか……」


 ふと、商人が僕の背後の荷車に目を遣る。


「野菜とは、その背にあるものですか?」

「ええ、こいつの野菜、いけますよ。最近また味が良くなりまして」


 ケビンおじさんが後押ししてくれる。

 商人が「ふむ……」とひとつ手に取り、一口囓る。


「ほう……この味なら十分売り物になるかと」

「おお!やったじゃねえかユウキ!」

「あ、ありがとうございます!」


 薬が手に入る!これで母さんが少しでもよくなってくれれば……。


「それでしたら、もうひとつ提案なのですが」


 商人がこちらに向き直る。


「何でしょう?」

「こちらの野菜、私が引き取ってもよいのですが、もしよろしければユウキくんも一緒に王都に来て、自分で野菜を売ってみませんか?手伝ってくれた分はサービスしますよ」

「え!?僕が王都に、ですか?」

「悪い話ではないと思いますが。お金か伝手がないと王都に入るのはなかなか難しいですし、折角のご縁です。それに、お店も沢山出ているので、薬以外にも良いものが手に入るかもしれませんよ」


 妬みを込めて睨みつける一方で、王都がどんなところか気になってもいた。それに、行けば母さんを助ける薬も手に入るのであれば……。


「わかりました。よろしくお願いします」

 こうして僕は、生まれてはじめて、王都に向かうこととなった。

読んでくださりありがとうございます!よろしければお気に入りやいいね、コメントもお待ちしてます!

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