暴徒鎮圧戦
投稿予定を一週間も超過してしまいました。
難産でした。楽しんでもらえたら嬉しいです。
王都エマルゴンは、河を挟んで東西にわかれており、その東側は貴族の区画、西側には商人や職人などの区画が広がっている。
暴動の火は西側で起こり、今まさに、その川に届こうとしていた。
「ひでえな、こりゃ……」
マーディンが零した。
王都の工房などが固まっている南側が爆発で吹き飛んだように燃え上がり、その火は大通りの南沿いの商店にまで広がっている。
倒壊した建物も少なくなく、あちこちから悲鳴や子供の泣き声が聞こえてくる。
そんな惨状を背に、50人ほどの暴徒が、東西を繋ぐ橋に押し寄せている。
橋に常駐している警備隊に、増援もいくらかは到着しているが、数で勝る暴徒たちの前にじりじりと後退を余儀なくされているようだ。
「何だ、学生か!?」
「魔法学校の三年生です!援護に入ります!」
警備兵の問いかけにライリーが応えながら切り込む。
「ライリー!一人で飛び出しちゃ危ないって!」
「しっかり付いてきてよ!ハーモニックチャージ!」
ライリーの魔法が背後の僕らにかかる。
術者と同様の行動を取る集団の能力を高める、騎士団用の強化魔法だ。
先頭を行くライリーは、最前線で攻撃を受けている警備隊員の間を抜け、瞬く間に暴徒2人を無力化した。
「魔法士が出てきたぞ!囲め囲め!」
号令が飛び、ライリーを囲むように暴徒たちの陣形が変化する。
暴徒と呼ぶにはあまりにもスムーズな動きだ。
しかし、陣形を動かしているところに僕とマーディンの突撃が加わり、予想外の打撃に暴徒集団の態勢は崩れてしまった。
「いいじゃんこの魔法!身体が軽いぜ!」
突撃で3人もを纏めて倒したマーディンがはしゃぐ。
「気を緩めないで!来るよ!」
僕ら3人を囲んで半円形になった暴徒たちが、一斉に炎弾を飛ばしてきた。
「アクアウォール!」
僕は水の壁を張って対抗するが、40人を越える斉射に耐えきれず、貫通した炎弾が僕を襲った。
「ああああああ!!!」
「ユウキ!」
「大丈夫ですか!?」
後衛に控えるクレアが魔法で冷水を浴びせてくれる。
「ありがとう、クレア。大丈夫だよ」
「許せねえ、アクアバレット!」
マーディンの水魔法が敵の身体を貫通した。
2・3人が患部から出血しながら膝を折る。
「何だ今の……」
「水の威力じゃねえぞ!」
水魔法の攻撃は一般的に打撃であり、貫通するような鋭さはない。
マーディンの魔法のあまりの威力に暴徒たちに動揺が走った。
「学生にばかり任せておけんぞ!俺に続け!」
「「「「おおお!!!」」」」
そこに、態勢を立て直した警備隊の攻撃も始まった。
最早、形勢は逆転していた。
「リーダー!これ以上は!」
「くそ!こんなところで……!」
いよいよ不利を悟った暴徒たちが、散り散りになり撤退していく。
「撤退!撤退ー!」
「こんなところで退くわけにはああああああ!」
リーダーと呼ばれた男も、引き摺られるように撤退する。
「はぁ……なんとか追い返した」
ライリーが脱力した。
やはり殺意のある人間との戦闘は精神的疲労が大きかったようだ。
「追撃は!?」
「それより、街の被害をなんとかしないと」
マーディンの問いかけに警備隊員が応える。
街は、依然として火の中だ。
「協力します。マーディンは人命救助に」
「おう!」
「ライリー大丈夫?動ける?」
「うん、大丈夫だよ!ちょっと力抜けちゃっただけ」
「あんまり無理しないで、できる範囲で人命救助お願い!」
「うん!人の命がかかってるんだもんね、休んでられないよ!」
「クレアは僕と一緒に消火を頼める?」
「どうするんです?」
「雨を降らすよ」
みんなに声をかけてから、僕は街のほうへ向かった。
轟々と燃える街に足を踏み入れる。
途端に、熱気が僕に襲いかかる。
――炎を消し、この熱を鎮める。
鎮火するほどの雨を、強くイメージする。
生成した魔力が、体内で膨れ上がる。
そして――
「雨です!雨が降ってきました!」
雲のない夜空に闇を取り戻そうとするかの如く、激しい雨がエマルゴンの城下を襲った。
「鎮火するまで雨を維持しないと。サポート頼める?」
「もちろんです!」
クレアが魔力を分けてくれる。
段々疲労が溜まって息が切れてくるが、クレアのサポートのおかげでなんとか持ちこたえる。
しかし、しばらくしても火が弱まる気配すらない。
雨で消火するのは無理なのか!?
「火が消えそうにない!クレア、何かアイデアはない?」
「そうですね……ランプの火は息を吹けば消えますが」
強風をぶつけると建物や人に被害が出かねない。
クレアは少し考えて、
「何かで覆ってしまうとか?料理中に引火したら蓋や布をかけて消しますし」
「空気を遮断するってこと?なら風魔法でなんとかなるかも!」
改めて、魔力の変換を水から風に変える。
空気の流れを意識する。街の中心から四方に空気を散らすように。火元に空気が流れないように。
これは苦しい!降雨の魔法なんて比較にならない負担だ!
脳の魔力野が悲鳴を上げているようだ。頭が割れるような痛みで限界を訴えてくる。
「ユウキくん、大丈夫ですか!?私が支えますから意識をしっかり!」
クレアが魔力を供給しながら必死に声をかけてくれる。
それから何分経っただろうか?
フッ、と、ある瞬間、急に火が消えたのである。
「やった!やりました!やりましたよユウキくん!」
大はしゃぎのクレアが僕の背中をバンバン叩く。
彼女の喜びを背中で感じながら、僕の意識は遠のいていった。
「お疲れ様でした。ユウキくん」
お読みくださりありがとうございます。
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前話で作中時間を3年分ほど飛ばしましたが、その間の学園生活を書こうかと、難産中に思い至ったので、もしかしたら今後、しばらく時間を頂いてその回を挿入するかもしれません。
もしそうなった場合はまた告知したいと思いますので、よろしくおねがいします。




