仲間だから
「そんなことって!」
「本当……なんですか?」
夜、部屋に来てくれたライリーとクレアに、今まで隠していた僕のことを話した。
父が異世界人であるという母さんの遺言のこと。
異世界からの召喚が行われたのはこれまで1度きりであるということ。
それがわかって以来、母を捨てた英雄王への憤りが日に日に増していること。
「でも、いつどんな魔法が使われたかなんて正確にはわからないし」
「まあな。書庫の記録も抜け落ちや改竄がないとは言い切れねえ。でも、そんなせいぜい20年30年前に行われた大々的な大人数魔法の話が、噂にも出てこねえなんてことあるとは思えねえし」
「隠す必要があるならなんで英雄王召喚はこれだけしっかり記録に残されてるのかってこと?」
打ち明けられた二人の反応は対照的だった。
ライリーは信じられないとばかりに狼狽し、調査をしたマーディンと問答している。
一方、クレアは何か考え込んだ様子で、俯いたきり何も言わなくなってしまった。
「だな、召喚魔法自体に秘匿理由があるなら英雄王の召喚も残さないはずだし、英雄王召喚自体もともと秘密裏に行われたものらしいから、記録漏れはないと考えていいだろ」
「異世界から人間を召喚するなんて、そんな魔法が誰にでも使えるわけないし……じゃあ、ユウキのお父さんがって方が間違ってるってことはないの?」
「母さんが死に際に残した言葉が嘘だって言いたいの?母さんを愚弄するといくらライリーでも許さないよ」
「ごめん!ユウキ、私そんなつもりじゃ……」
ハッとしたようにライリーが頭を下げる。友達の震えように、自分がどんな態度を取っているか気付かされた。
「僕こそごめん、母さんのことになると気持ちが抑えられなくて」
この秘密は、ライリーにとっても大事だったのだ。
ライリーのマイルズ家は英雄王に忠誠を誓う騎士の家だ。英雄王のスキャンダルはマイルズ家にとっても問題になる。
それに、もし継承権争いになれば、マイルズ家は王の側に付くだろう。ライリーは、家族と戦うか、友人と戦うかを選ばなきゃいけなくなるんだ。
「もうわかんないよ……どうしたらいいの……?」
ライリーの見たこともない取り乱し方に、やっと気付かされた。
「ライリー、僕、自分のことしか考えられてなくて!ライリーをそんなに苦しめるなんて思ってなくて!!」
「決めました!」
突然、クレアの声が響き渡った。それまで俯いてずっと何かを考え込んでいた彼女が立ち上がり、僕らに向けて力強く宣言した。
「私はユウキくんに付いて行きます。王への復讐でも、王位の簒奪でも、ユウキくんが望むなら私は手助けします」
「クレア……」
「アーサーくんには悪いですが、私はユウキくんの友人です。ユウキくんの側に付くのは当然です」
ライリーを心配するマーディンの声にも止まらず、クレアは言い放った。
「私だって友達だよ、でも……」
「ライリー、思いつめないで。僕はただ、もう今日みたいに心配かけたくなかっただけなんだ」
マーディンが思いだしたように、
「今日って言えば、アレのことも……」
アレというのは、魔族の襲来のことだ。
「うん、それも考えないと。どうするとかはまだ決めてないけど、とりあえず何があってもみんなのことは守るつもり。それから、みんなの家族もね」
ライリーを慰めながら、僕は続ける。
「そのための対策を練ろう。理想としては、僕らで連携を取って魔族を相手にできるように」
「ムリだよ。だって私、対人想定の訓練しかしてないし……」
「ライリーだけに負担かけたりなんかしないから。僕だって魔法操作は戦いにも使えるし、マーディンも前衛で相手を引き付けてくれる。そうでしょ?」
「当たり前だ!伊達に毎日アーサーと戦闘訓練してねえよ」
「だから安心して、仲間は支え合うものなんだから。ライリーやクレアが今日僕を気遣ってくれたように、ライリーが困ったことやできないことは、僕らに頼ってよ」
「そうだぜ、ライリーが魔族が怖えってんなら、俺が引き付けてぶっ飛ばしてやるぜ」
マーディンが格好つけて拳を前に付き出した、そのとき――
ドーーーーーン!
街の方から大きな音が鳴り響き、窓の外から炎が立ち上った。
「「「「え?」」」」
一同、啞然として顔を見合わせる。
「マーディン、とんでもないことを……」
「いや、俺じゃないだろどう考えても……」
「どうしましょう、これじゃ王位だの魔族だのの前に処刑されてしまいます……」
「え?マジで俺?そんなに言われると段々自信なくなってくるんだが……」
「アホなやりとりしてる場合じゃないでしょ!?」
一連の衝撃でライリーが立ち直った。
「事件か事故かわからないけど、被害に遭ってる人がいるかもしれない。行かなきゃ!」
「今からか!?」
「何のために魔法学校で勉強してるの?人々を助けるためでしょ?今行かなくてどうするの!」
ふと、昼間のアーサーの話がよぎる。
「魔族の仕業、かもしれないよ」
「それは、やっぱりちょっと怖い……けど」
ライリーは精一杯笑って、
「ユウキや、みんなが助けてくれるんでしょ?」
「ライリー……」
「困難に立ち向かう力、なんでしょ?勇気、私にもわけてよ」
そう言って、ライリーは先に走っていってしまった。
「ライリー、元気になってよかったな」
「やっぱり、笑顔のほうがライリーらしいです」
「行こう!ライリーだけ頑張らせるわけにはいかないよ」
「おう!」「はい!」
しかし現場に向かった僕らを待っていたのは、魔族ではなかった。
「怯むな!屋敷ごとふっ飛ばしてやれ!」
「増援はまだか――ぐぁっ」
「おかあさーーーん!おとうさーーーん!」
「助け――キャーーー!」
怒号、悲鳴、断末魔。
武器と武器がかち合う音、魔法と魔法が織りなす爆音。
燃え上がる炎に、逃げ惑う人々。
街が、戦場と化していた。
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