休日座談会
お待たせしました。
本日2話目です。
その日は、久々の休日だった。
入学からは3年の月日がたっていた。
僕らは魔法も上達し、それにつれてクラスでも浮かなくなっていった。
僕らは授業がない日も課外活動をしたり、魔法の研究をしたりすることが多くなっていた。
「今度のお休み、みんなで街に遊びにいかない?」
根を詰めがちな僕を気遣ってか、ライリーがそう提案した。
そんなこんなで、僕らは街に繰り出していた。
メンバーは僕、マーディン、ライリー、クレアの4人。
「いやー、やっぱりこの4人が一番落ち着くわ」
「最近はいろんな人と一緒にいるし」
「バラバラに活動してることも多いもんね」
「あ、この店なんてどうですか?」
クレアが喫茶店を指差す。
最近できたキレイな喫茶店で、大通りに面したテラス席もある店だ。
「いらっしゃいませー」
店内の4人席に案内された。
「店内もキレイですね」
「最近キレイな店増えてきてるよ。英雄王プロデュースなんだって」
ライリーの言葉に、憎しみが湧き上がってくる。
「外のテラス席も、英雄王のアイデアだとか……ってちょっと!ユウキ、どうしたの!?」
「凄い怖い顔になってます……」
「あ、アーサーに試験の点数で煽られたの思い出したのか!あれは俺だって腹立ったぜ」
マーディンがフォローしてくれる。
クレアも話を変えてくれて、
「ところで、皆さん最近はどんな活動をしてるんですか?」
「私は、騎士団で使える魔法の練習かなー。集団で使って全員に相乗効果がある魔法とかできたらいいなーとも考えてるけど」
「やっぱり大変?」
「うん、実際の戦いで使うとなれば、人数が減っても使えるものにしなきゃいけないし、負傷の可能性は全員にあるから特定の役割を誰かに持たせるっていうのが現実的じゃないんだよね。みんなの魔力を団長にーとか、みんなでうっすら魔法を掛け合うとかもやってみたけど、相乗効果は期待できなくて」
ライリーは騎士志望なので、騎士団用の魔法の研究に熱心だ。
「俺は専ら戦闘訓練だな。アーサーのやつがやけにやる気でよー、ホントに魔族なんか来るのかね」
「先生も可能性はあると言ってましたが、実際どれくらいあるものなんでしょうね」
「可能性って便利な言葉だよね」
3人の話を聞いていると少し気が紛れてきたので僕も話に混ざった。
「僕は農業用の魔法の研究と普及活動をしてるよ。僕だけが大量生産できてもしょうがないから、みんなで生産量を増やさないとね」
「例のドン引き魔法も農業用ってわかってから、ユウキ人気者だもんねー」
「クレアはまだ癒しの魔法研究してるの?」
「はい、でも全然取っ掛かりが掴めなくて……特殊魔法だから何から着想を得ればいいのか……」
魔法の発動はイメージの具現化だ。
魔力を変換し、それが象る形や現象をイメージすることで具現化させる。
発動の際に魔法を口にするのは、そのイメージを脳内により強く描き、発動の補助とするためだ。
しかし、特殊魔法はそれぞれの魔法で魔力の変換の道筋が異なる。
この魔力変換が難しく、理解するのもそれを伝達するのも至難だ。
魔力を直接纏わせる強化魔法や、変換するエレメント自体は共通している属性魔法と違って、特殊魔法を使える人間が極端に少ないのもこれが理由だ。
「属性魔法でいうと風や水に近いかなーとも思っていろいろやってみたりもしてるんですが、全然上手くいかなくて」
「属性魔法とは切り離して考えたほうがいいんじゃないかな?風が傷を治すわけじゃないし」
「ユウキくん、わかるんですか?」
「え?いや、僕も農業用に、属性魔法以外にも何かできないかなって考えてたりするから……癒しの魔法なら、どうすれば魔力が“癒すもの“に変換できるか、とか」
「なるほど!ありがとうございます!」
クレアの悩みが少し晴れたようだった。
「面白い話をしているな」
背後から急に投げられた声に振り返る。
「アーサー」
「アーサーくん、どうしてここに?」
「父の息がかかった店なのでな」
「俺らの情報なんて筒抜けってことかよ」
マーディンが悪態をついた。
「そんなわけないだろう。新しい店が出来たから様子見に来ただけだ」
「そりゃそうだよねー」
「人は多いけど落ち着けるし、丁度いい賑わいって感じだよね」
「それより、特殊魔法の研究をしているのか?」
話は逸らせなかった。
どうやらアーサーは特殊魔法にご執心らしい。
「はい、魔法を医療方面にも役立てられないかと考えてますが、なかなか進展がないのが現状です」
「それは例えば、発動された魔法をかき消したりもできるものなのか?」
「それってどういう……」
ライリーが口をはさむ。
「いやなに、魔族には呪いのように相手を蝕むような特殊魔法を使ってくる奴もいるという話があるのでな、対策を講じられないかと。で、どうなのだ?」
「特殊魔法自体がまだ全く上手くいってない状況なので確約はできませんが、そちらも並行して研究してみますね」
「ありがとう!」
アーサーが感激したように礼を言う。
大丈夫なのか?今にも抱きつきかねない喜び様なんだが……。
「っていうか、魔王が攻めてくるって本気で思ってるのかよ」
マーディンが問いかけた。僕ら3人も、同じ疑問を持っていると頷く。
するとアーサーは、僕ら4人を見回し、そして何か考え込むような顔になり、その顔のまま店全体を見渡すと、「耳を貸せ」とテーブルに顔を寄せた。
「いいか、君たちを信用して言うが――」
次の瞬間、アーサーから発された言葉は耳を疑うようなものだった。
「――異界の門は、我々人類が塞いだものではない」
「え?え?どういうこと!?だって――」
一番取り乱したのはライリーだ。アーサーは慌てて
「シーッ、声が大きい!君たちならと信用して話してるのだ」
「あ、ご、ごめん。……でも、英雄王様が魔族を追い返したって」
「ああ、歴史上はそうなんだが、どうやら実際は魔王の指示で魔族は撤退して、門も向こうから閉めたみたいなのだ」
「それってつまり……」
「向こうからはいつでも開けられるってことかよ」
僕とマーディンは目を見合わせた。
「その可能性があるということだ」
アーサーはそこまで言うと姿勢を戻し、
「君たちには期待しているのだ。よろしく頼む」
そう言って店を出て行った。
残された僕らには、なんとも言えない空気が漂っていた。
マーディンは苦々しい顔をして、ライリーは焦っていて、クレアは落ち込んだ顔になっていた。
気持ちは同じだ。僕だって、どうしたらいいかわからない。
魔族は向こうのタイミングでいつでも攻めて来れるぞ、そう言われたのだ。
僕たちは意気消沈したまま家路に――
「この話終わりです!折角の休日なんですから、もっと楽しいことしましょう!」
――という空気を破ったのは、クレアだった。
「軽くお茶して、お腹も膨れたんですから、次は公園でもお散歩しませんか?」
それから僕らは、クレアに連れ回される形で、公園を散歩して、お店を見て回り、かわいい服やキレイな小物を買ったりして過ごした。
寮に帰る頃にはみんなすっかり元気を取り戻していた。
今日はクレアの笑顔に、たくさんの元気をもらったんだ。
みんなが僕に気を遣ってくれてるのは知ってる。
事情を隠してるライリーやクレアに心配をかけているのもわかっている。
「ああ、俺も、いいと思うぜ」
僕の様子を察したのか、マーディンも背中を押してくれた。
だから、話そう。
その夜、僕らはライリーとクレアを部屋に招いた。
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