ソイツとの出会いは偶然で、偶々に過ぎない。
ちゃんとかけてるかどうかわかりません。
暇だったので書きました。
良かったら感想ください。
我が家、東条家には古い言い伝えがある。先祖代々から伝わるその言い伝えによれば、なんでも1400年前、離れにある蔵にご先祖さまがとある悪霊を封印したそうだ。その悪霊は大層悪さをしたらしく村の人々を困らせたそうだ。その悪霊を封印しご先祖さまは離れの蔵に閉じ込めたらしい。そして、子孫にその言い伝えを伝承し続け封印を解かれるのを防いでいるらしい。
そんな話を小学校を卒業するくらいに聞いた。
聡い俺はその時には幽霊もサンタクロースもUFOも存在しない事も知っていたし、そんな作り話に胸を躍らせるような可愛らしい一面もなかった。ただ好奇心と逆張り精神だけは一丁前にあったようで故に行動に出てしまった。ほら、あれだよ。やったらダメって言われたらやりたくなるような。押したらダメって言われたら押す、お決まりのやつ。そう、それは一種の決まり事のような物でその時の俺の行動をどう責められよう。
まあ俺は絶対に開けてはならないと言われた封印を開けてしまったのだ。
......しょうがないじゃないか。いると思わないだろう普通悪霊なんて。
目の前の猫の姿をした悪霊は積年の疲れを解すかの如く伸びをする。
蔵を開けそれっぽい札をペリッと剥がしたらそいつが飛び出してきた。
どうにかこの事実を隠蔽できぬものか。幸い、この悪霊はすぐさまここを飛び立ち、悪さをする様子もなく。まるで本当の猫かの如く足で頭を掻くだけだ。
せや、飼おう。
俺はすぐさま交渉し4時間の格闘の後何とか世話は自分でやる事を条件で飼う許しを得た。
その後高校進学と共に一人暮らしをすることになり、ペット可の1Kのアパートに悪霊と住むことになった。
悪霊、アグリと名付けたその猫との出会いから3年程経つが未だ悪霊たる片鱗を見せていない。悪霊と思いこんでいたアグリは本当はただの猫で蔵を棲家にしていた所偶々俺が札を取ったタイミングで飛び出してきただけなのではないか。そんな気がしてきた。うん。そうだな。そっちの方が楽だ。
俺は偶々悪霊が封印されている蔵で偶々札を取ったタイミングで飛び出した猫を飼っているだけだ。
おう、おはようアグリ〜。
何だよそんな変な模様で。換毛か?
動物は一般的に自然を生き抜く中で気温の変化に適応するため換毛という毛の生え変わりを行う種類がいる。
なお、アグリは5分くらいの短い時間で体に赤い模様を出すが、まあ個体差というからやつだろう。封印から解き放たれた悪霊の模様に見えなくはないが偶々だ。あれだ。俺はこいつを一時期本気で悪霊だと疑っていた。そのせいでそっちの方向に引っ張られるだけだ。そう、思い込みなのだ。アグリが赤い模様を出すのも、偶に尻尾が2本になって見えるのも、空中で止まったように見えるのも全部俺の思い込みなのだ。
アパートに着き荷物整理を終えた俺はアグリはただの可愛い白猫という風に結論付けた。