僕のヒト
歌声がきれいだというヒトを飼った。
家というものも一緒に購入し、服や食料も買った。
ヒトは自分で服を選ぶし食料も加工して食べることを知った。
けれど、なぜか僕のヒトは歌わない。
多くのヒトを飼っている知人に相談すると、どこ出身のヒトかと聞かれた。
どこ出身?そもそもヒトにも出身があるのか?
首を傾げていると友人が訪ねてきて、うちで飼っているヒトを見に来てくれた。
少し年齢が高いメスのヒトだそうだ。よく見分けられるものだ。
安かっただろうと言われるが、確かに特価品だった。だが歌声がきれいだとも店員は言っていたのだ。
環境が合わないのだろう、ちょっとうちに連れてこいというので僕は家ごと抱えて訪問した。
壮観だった。五十ほどの家が建ち並び、間に道が作られ緑の植物が植えられている。それぞれの家からヒトが出てきて、ほかのヒトとさえずり合っているのが分かる。
自分のヒトをこの場所におろしてみて、どう動くのか見てみようと言われたのでそうしてみた。
僕のヒトは最初、きょろきょろしながら家の間を歩いていたが、はっとしたように大きい家へと足早に入っていった。
その家は何だいと聞くと、友人は店だよと答えた。ヒトの食料などをここにまとめておいておくと、ヒトが選んで家に持ち帰るらしい。
おなかがすいていたのだろうかと思ってみていると、なぜか食べ物を取りにいかない。出入口近くの机の前に立っている。
そこへほかのヒトが食料のカゴを抱えて近づいてくる。何をしているのかと思ったら、突然僕のヒトが──歌い始めた。歌声が高く低く高く低く、波打つように確かに歌っている。とても美しい声だった。
しかし歌はあっけなく終わってしまう。食料のカゴを抱えたヒトは出て行ってしまった。けれど次のヒトが来ると、また歌い出す。
このヒトは、店出身のヒトだったようだねと友人は言った。
そうか、僕のヒトは店出身だったのか。
僕は僕のヒト用に店を買った。店を買う場合は普通の家も別に必要だと言うので、最初に買った家も残して隣に置いた。エプロンもあるといいと勧められたのでその服も買った。
僕のヒトはエプロンをつけてお店の出入口近くの机に立つ。僕はまだほかのヒトを飼っていないので、食料のいっぱい詰まったカゴをその机に置いてやる。
そうすると美しい声で歌い出す。
高く低く高く低く。食料品を別のからっぽのカゴに綺麗に移しながら──