第五話:最終稽古
ライとガリンはテニスコートぐらいある大きさの訓練場に立った。
二十メートルぐらい距離を離し、向かい合う。
北の空には黒い雲が広がり始め、そろそろ天気が悪くなるだろうということを感じさせた。
「では最終稽古をはじめるとしようぜ。」
大きな銀色の斧を軽々と片手で構えるガリン。その姿はまるで大きいドワーフの様だった。
「今度の相手は俺だ。」
「えっ!?本気で言っている!?」
驚きの声を漏らすライ。
彼はガリンの実力をよく知っている。
前にこのクルム村の近くに現れた、巨大なサンドワーム(でかいムカデのような魔物)を一撃で仕留めたのを目撃したことがあるのだ。
「大丈夫だ、安心しろ。もちろん俺は手加減する。お前はおれにダメージを与えてみせろ。そして経験値を手に入れてみせるんだ。」
「うん…分かった。必ずダメージを与えてみせるよ!」
覚悟を決めるライ。
鉄の剣をまるで剣道のように両手で構える。左足を少し後ろにし、右足に重心を傾けた。
ピカッと黒い雷が天から降った。
それを合図にライは右足で地面を力いっぱい蹴った。
思いっきり振りかぶり刀身をガリンめがけて振り下ろそうとする。
「甘いな!」
ガリンが大きな声で吠え、斧を軽く振る。
斧と剣がぶつかりカキン!という冷たい音出した。
「くっ!」
はじき返された勢いでバランスをくずすライ。
回転しながらも、地面に着地することに成功し、そのまますぐに次の攻撃に移ろうとする。
カンッ!
また金属同士がぶつかり合う涼しい音がした。
何度も何度も、突撃してはカキンという音を鳴らし、はじき返された。
「特技はどうした!特技を使わなきゃまともなダメージは与えれないぞ!」
ガリンが雷の音に負けないように叫ぶ。
ライはハッとした。戦いに夢中で特技の存在をすっかり忘れていたのだ。
「今から使うよ!」
そう叫び返し、剣を構える。
ライは目を閉じ、自分のMPを刀身に流し込もうとした。
心臓がドクドクとなみうち、力があふれ出すのを感じた。
剣は少しだけ発光した。
「はぁ!」
僅かながら輝きだした剣をガリンに振り下ろす。
今度ははじかれる前に手首を回し、刀身がガリンに触れるようにした。
ガリンに1ダメージ!
ダン!という鈍い音がし、雀の涙程度のダメージが入った。
しかし、次の瞬間ライは地面に背中を打ち付けていた。
ガリンがライを斧で吹き飛ばしたのだ。
ライに3のダメージ!
「そんなんじゃまだまだだめだ!蚊に刺されるほうが痛いぞ!もっとMPをこめて素早く振れ!」
ガリンのダメだし。
そしてガリンは斧を再び構えなおした。
「さあ、もう一度やってみせろ!」
「分かったよ!!」
再びMPを刀身に流し込む。
今度は目を閉じずにできた。
「ていや!」
雌黄に輝く剣をガリンに向けて振り下ろす。
今度はもっと速く、強く、勢いがついていた。
ガリンに6のダメージ!
ガシッという音がし、さっきの六倍のダメージが入る。
しかし、ふたたびライは吹き飛んだ。今度は吹き飛ばされる直前に両手をクロスし前に突き出すことで、衝撃を緩和した。
ライに1のダメージ!
「その調子だ!もっとお前の実力を見せるんだ!お前の真の力を発揮しろ!」
ガリンが狂ったように叫ぶ。
それがライを奮い立たせた。
「うぉおおおおお‼」
ライは雄叫びをあげ、剣を天にかかげた。
左手にあるアザが黄金の光を発し、くっきりと浮かび上がった。
剣は黄色いくまばゆい光を纏い、バチバチバチ!という音を立て始めた。
ライは今までのどんな時よりも力があることを体で感じ、それをガリンめがけて振った。
ライ自身も驚くような速さだった。
サンッという鋭く、透き通るようなきれいな音がした。
ライは自分の目の前の剣を見て、目を見開いた。
その剣は今まで切ることができなかった、鋼のマネキンを真っ二つにしていたのだ。
ぜーぜーという荒い息を整えようとするが、MP不足でその場に膝から崩れ落ちそうになるライ。
それを後ろからガシッとガリンが受け止めてくれた。
「よくやった!今のが、お前の本当の力だ...勇者ライ...お前は選ばれしものしか使えない「光輝切り」を習得したんだ...あとは…三…を...探...だけ...」
ライは薄れゆく意識の中、ガリンの言葉を半分聞き流していた。
なぜなら、ふとした疑問を覚えたからだ。
なぜ、ガリンはあの速さの稲妻切りをかわせたのかということに。




