9話:現在地と情報収集
9話:現在地と情報収集
ここは神魔狼フェンリルが住まう土地であり、人族や魔族から言わせれば、【人生の墓場】・【未開の大地】と呼ばれているみたいだ。
川も湖も木々もあるし、バナナやリンゴの果物だってあるのに墓場って物騒な名前が出てきているのは、人族でも魔族でも、この地に訪れる為には何もない『死の砂漠』を超えてこないといけないからだ。そこは昼は灼熱・夜は極寒の土地で簡単には往来ができないらしい。
それに、その死の砂漠の前には森が広がっており、そこには強力な魔物が跋扈しているようだ。
だからわざわざここに来る者はいないそうだ。
ここに来る者がいないから、この地の実りについては人族や魔族は知らないらしい。
まあ、頑張ってここを開拓するためには人手も物資もあり得ないぐらい必要だし、しかも流通させるためには森の中にいる魔物と環境が敵の砂漠の2つを相手にしないといけない。
それに砂漠を超えた先にこの実りがあると知らないんだから超ハイリスクすぎる。返ってくればリターンはあるかもしれないが、確率が低すぎる。
超ハイリスク超ローリターンということだ。
そりゃ人が寄り付かないわけだわ。
そして【神魔狼】とは、神より生まれし魔力を持った狼という意味で、この世界の大地に存在するすべての魔物の頂点に立つ者だそうだ。
他にも【神魔龍】と言って、同じく、この世界の空に存在するすべての魔物の頂点に立つ者で【神魔龍バハムート】という龍らしい。
種族と得意な魔法属性は違うが、フェンリルとバハムートの力関係は同等のようだ。何度かどちらが強いか勝負をしたようだが、引き分けだったんだと。
この2匹は何か特別なことをするわけでもなく、気に入った地にて自由気ままに生きているんだとか。
人族・魔族のどちらにも与することはないが、敵対行動を相手がしなければ手を出すことはないという。まあ手を出したら災害になるだろうよ。
あと、オレとフェンリルの間で言葉が通じるのは神様からもらった言語理解のおかげだ。
でも言語理解はすべての種族に通用するわけではないそうで、ある一定以上の魔力を持ち、理性と知性を持っている魔物に限るそうだ。
またその一定以上の魔力というのは、かなり高くないといけない為、言語理解できる魔物は少ないようだ。
最初に遭遇したハイモンキーは魔力は微小で、理性と知性も少なかったから話せなかったというわけだ。
この地にも強い魔物がいるが、ここはフェンリルの住処となっているため、近くには寄ってこないんだそうだ。
たまに果物を取りにハイモンキーとか知性が少ないやつが来ることはあるようだけど。
ちなみにこの世界の神というのは三貴神と呼ばれる
【天照大御神様】【月夜見様】【須佐之男様】らしい。
今知りたいことはこれで知れたかな。
とりあえずはここから一番近い、人が住んでるところに行こう。ここには誰も人はいないらしいし。
まずはこの森を出て、砂漠を通りぬければ人里ぐらいはあるんじゃないかな。
「わかった。いろいろ教えてくれてありがとう。遠そうだけど、元々いろいろなところに行ってみたいと思ってたし、
とにかく人が住んでる街に行ってみるよ」
食糧はここに来るまでにバナナやリンゴを確保したし、水は魔法でどうにでもできるし。
「待て待て!なんだ?もう行ってしまうのか?」
「あぁ。他の人にも会いたいし、この世界がどんな世界なのか知りたいしな。人族と魔族が争ってるってことは知ってるけど、オレには関係ないしな」
「人族なのに関係ないと言うのか?」
「全く関係ないね。それになんで人族と魔族が争ってるのかも知らないし、事情も知らないで人族だから魔族と戦うなんて馬鹿なことはしないよ。オレは自分の目で見て、自分の耳で聞いて判断する。ただ、オレに敵対するというのなら人族でも魔族でも容赦しないだけだよ。」
「神が勇者召喚をしてまで人族を救おうとしているのにか?」
「神様が勇者召喚をしたんじゃなく、人族の国が勇者召喚をしただけだろ。神は乞われて召喚をしただけ。しかも、今回は3人も勇者を呼んだようだし。なんなら魔族側を手伝ってあげたほうがバランスがいいんじゃないか?まあ現状する気はないけど。」
その所為でオレは巻き込まれたんだから・・・
「神様がどういう考えで勇者召喚という儀式を伝えたのかは知らないけど、オレはオレで自由に生きるだけだ。」
「・・・・・・」
フェンリルが黙ってオレを見ていた。
「なに?なにか文句ある?」
「ククククッ!面白い!気に入った!我もおぬしについていこう。」
「は?いや、ついてこなくていいよ」
「何故じゃ?!」
「いや、邪魔だし?」
「邪魔?」
「だって、オレ普通に旅したいだけだし。フェンリルって有名なんだろ?」
「当然じゃ!」
語尾が元に戻ってる気がするけどまぁいいや。
「じゃあ、お前を連れてたら目立って旅どころじゃなくなるだろ!絶対国とか動いてきそうだし・・・」
「クッ!確かに・・・じゃが、ここから人が住んでおる場所まで遠いぞ!我も着いていけば、おぬしを乗せて移動できるぞ」
「? それはいいな!」
「そうじゃろ!それに我は地に属する魔物の頂点に立つ者だ。道中の魔物も我がいれば問題ないぞ。」
「それは別にいらないな。」
「何故じゃ?!」
「力があっても、その使い方がわからなければ宝の持ち腐れだ。道中、敵対する魔物に対して力の使い方を覚えいきたいし」
「まだ強くなろうと思っておるのか?」
「当然!あの時もっと力があれば・・・とか後悔したくないからな。それに今回の戦いだって、お前本気じゃなかったろ?自由に生きるのにもある程度の力は必要だろ。
とすると、お前を連れて行くメリットが移動だけで、デメリットのほうが大きい。」
「な・・・メリット・デメリットの大きさで決めるのか?!」
「当たり前だろ。サラリーマン舐めんな!」
あっ、元サラリーマンか・・・
「サラリーマン?」
「とにかく!連れていくメリットが移動手段だけでデメリットのほうが大きい。よって却下!」
「待て!おぬし情報もほしかろう。我は長く生きておるし、魔法やこの世界の魔物についても詳しい。道中の魔物の生態も教えてやれるぞ!どうじゃこれはメリットに入るであろう?!」
魔法ももっと知りたいし、情報は宝だ。
「それは確かにメリットだな。でもなぁ・・・」
「ならば、おぬしの眷属になろうではないか!」
眷属?なんだそれ?
読んでいただきありがとうございます。
「面白い」
「次話も楽しみ」
など思って頂けたら、とても励みになるのでブックマーク&評価をお願いします。
それでは次話で('ω')ノ