第1章 風雲
はじめまして東南瓜と書いてアズマナンキン言います。
連載は不定期ですが、頑張って書いていきますので応援よろしくお願いします。
何て数だと一人呟く男が居た彼の名はジューダス、怪力を誇る冒険者である。
魔法処理された特別な重鎧を着込み、手には顔を見なければオーガと間違われるような無骨で大きく頑丈な戦槌を持った男である。
中が広くなった洞穴にゴブリンが住み着き巣を作っていた。
ジューダスを中心に辺り一帯は屍山血河の有り様でゴブリンの死体で埋め尽くされ、青色の体液とゴブリンだった臓物と手や足が撒き散らされている。
ジューダスは心の中で悪態をつく
「クソ!それにしてもこの数は増えすぎだ!何匹潰したのか途中で数えるのも忘れたぞ」
ジューダスが戦槌を振る度にゴブリンが弾け飛び臓物と体液が撒き散らされる。
慣れぬ者が見たら間違いなく吐くような凄惨な光景を作り上げながら、一心不乱にゴブリン駆逐していく。
ようやく辺りからゴブリンの気配が消えた頃ジューダスは兜を脱いだ。
「報告するにもこの数は流石に・・・・親玉の首を確保したらギルドに調査してもらおう。
しかしその肝心な親玉は何処に飛んでった?途中から考えることを止めてひたすら潰してたから分からんぞ」
ジューダスはゴブリンの死骸を1つ1つ退かし親玉を探すがジューダスの大槌で吹き飛ばされたと思わしき死骸をこの山の中から探すのは重労働である、疲れ知らずのジューダスであっても気疲れはする。
「あったあった!まさか体が弾けて首だけ何処かへ飛んでるとは、ようやく町に帰れる。
ただの調査の筈が何でこんな目に」
元々は森でここ数日ゴブリンの発見報告が増えていたため、周辺調査で何か異変がないかを探し報告するだけの簡単な仕事を請け負った筈なのである。
それをたまたま見つけたゴブリンの後を見つからぬように気配を消し追いかけた結果、廃坑で大量に繁殖したゴブリンを見つけたのであった。
「それにしてこれだけのゴブリンが居ると言うことは・・・・・」
ゴブリンは繁殖力が高く殆どの人種を相手でも孕ませる。
またオスに比べてメスが極々稀にしか生まれず、そのため母体になる被害者が大型の巣からは見つかるのであった。
ジューダスは考えたが直ぐに考えることを止めた。
「少し中を探索するか」
ジューダスは親玉の首を麻袋に入れ廃坑の中を探索することに。
「元々は自然の洞穴なのだろうか?結構掘り広げられているな。ゴブリンどもが住み着いたのは最近ではないのか?それとも元々は賊か何かの隠れ家だった?」
すると奥まった部屋のような所に大量の食料と食い散らかされた複数の死体が見つかった。
「生存者は無しか?珍しいが仕方無い」
ジューダスは犠牲者に黙祷を捧げ、フランの町へ帰ることに。
フランへ着く頃には日が暮れ外灯に火が灯され、仕事を終えた人々が酒食を求めて酒場に繰り出す。
団欒の声や煮炊きの煙が上がる町中を歩きギルドへと進む。
この町は様々な人種が集まる、獣人にドワーフ数は少ないがエルフも居る。
領主の政策で差別が無く使える者は魔物でも使えと言うような豪快な人らしい。
『すまないが受付を頼む』
『はい、ギルドカードを出してください、えーと周辺調査ですね何かありましたか?』
『コイツを鑑定してもらえないか?中にはゴブリンの首が入っている、あと大量のゴブリンを西の森の向こうにあった洞穴で始末した』
『首1つだけですか?ではお預かりしますので少しお待ちください』
『すまないが頼む』
暫くすると受け付けをしてくれた女性が戻ってきた。
『すみませんが少しお話しが有りますので奥の方に来ていただけないでしょうか?』
女性はジューダスを奥へと誘う
『こちらの部屋へ、ギルドマスターがお待ちです』
女性が扉をノックすると入れと声がしたのでジューダスは入室する。
『ジューダスさんをお呼びしてきました』
『ご苦労だった、悪いがお茶を頼む』
中には椅子に座る頬に古傷の残る壮年の男が待っていた
『そこに座ってくれ、わざわざ呼んだのはお前さんが持ってきたあの首の事だ、お前さんはあの首が何か分かるか?』
『ゴブリンの親玉だろ?普通の親玉より大きいからキングだな』
『そうだゴブリンキングだ、Cランク下位とはいえキング級が何故急に湧いたのか?しかもお前さんの報告には大量のゴブリンが居たとある中で何かを見なかったかね?』
ジューダスは運ばれてきたお茶を啜りながら洞窟で目にしたものを全て伝えた。
『そうか生存者は無しか、被害にあった者には悪いがその方が良かったのかしれんな、生き残ってもこの先が辛かろう』
場に沈黙が落ちる。
『まあ良い今回はご苦労だった報酬は用意してある、後で窓口で受け取ってくれ。取り合えずキングの分だけだが調査とは別に討伐報酬には色を付けてある、残りの討伐分はこちらで専門の調査員を巣に送り報告が上がり次第倒したゴブリンの数を払おう』
『分かった報酬が上がるのは助かる。ここに流れ着いたばかりで懐が寂しかったからな、簡単な仕事しか受けられなかった』
『それで今回みたいなことにぶち当たるとはお前さんは運が良いのか悪いのか』
『解決できる範囲で揉め事に巻き込まれるのは冒険者には飯の種だろ?』
『違いない、自己紹介がまだだったな?グランだ、元々ここで冒険者をしていた』
『ジューダスだ、最近この町で世話になっている』
『ジューダス、お前さんみたいな腕利きが来てくれて嬉しいよ。今回みたいな面倒事を解決するには使えるのは一人でも多い方が良いからな、これからも頼む。長々とすまなかった、調査員からの報告が上がり次第お前さんを呼ぶが今回は上がってくれ』
ジューダスは受け付けで報酬を貰うと足早に帰路に就く、この町に来たときから世話になっている宿屋に向かうのだ。
ジューダスがギルドから出ていく背を窓から見送るとグランは考え事をし始める。
しかし何故だ?ここ最近でこの辺りからゴブリンの被害に遭ったと言う報告は聞いていない。
それにゴブリンが母体となる女を殺すことは珍しい、何処からか群れが流れてきて移動の際に亡くなったのか?それなら辻褄は合うが、しかしあの近辺に洞窟など無かったはず一体何処から?
調査員からの報告を待つしかないか。
グランは冷たくなったお茶を一気に飲み干しこれからの事を考えるのであった。
宿に着いたジューダスは戦槌を魔法袋の中へと入れ建物に入っていく。
『すまんが戻った』
『お帰りなさい、遅かったですねお食事はどうしますか?』
宿屋の受け付けにはこの宿の看板娘が座って帳簿とにらめっこをしていた。
『すまないが先に湯を貰えないだろうか?食事は酒も頼むよ、ビールを冷やしておいてくれラガーが良いな』
『分かりました。ではお風呂代を先に頂きますね、お湯はどうします?』
『新しいのが良いな』
『では、5000グラスで銀貨5枚頂きますね』
ジューダスは財布から銀貨を5枚取りだし渡した。
『はい、確かに頂きました準備が出来次第お部屋にお呼びにいきますね』
『分かった』
ジューダスは部屋に戻り鍵を開ける。この宿屋は鍵つきで中庭には風呂場もあり、酒や食事も美味しく中々に人気がある。
この町に流れ着いたジューダスにはこの宿に泊まれることは僥倖であった、宿泊費を除けばだが。ジューダスの財布が寒いのもこれが理由であった。
重鎧を脱ぎ(魔法鎧のため一人でも装脱着可能)楽な格好になる。
暫く待つとコンコンと扉を叩く音がした。
『ジューダスさーん?お風呂の準備が出来ましたよー』
『分かったいま行く』
宿の中庭にある風呂場に行き入浴中の札を扉にかけ中に入る。風呂は石造りの浴槽と洗い場があり湯は魔法具で沸かされる、この魔法具は魔石を使うことで水をお湯に変えるのだ、水もポンプの魔道具で運び込まれているのだろう、この風呂はこの宿の名物の1つである。
湯を桶で掬い頭から豪快に掛け体の汗を流す。この宿には高級品だが石鹸とシャンプーもあり、瓜科の植物から取った綿に石鹸をつけ体を擦る、シャンプーを手に少し取り擦り合わせてから頭を洗い全身に湯を掛け洗い流す。
ジューダスは湯に入りながら独りごちる。
「あーさっぱりしたここの宿を選んで良かった。
値が張るだけはある、湯に入ると落ち着くな~」
ああ"ーと間延びしたような声を出しながらのんびりと湯に浸かり体の中から憑き物を払うかのように疲れを癒していく。
長いこと浸かっていたジューダスは湯から上がり新しい服を着て宿屋に向かうのであった、冷えたビールを楽しみにしながら
いかがでしたでしょうか?はじめて書くお話なので拙い所は有りますが
補足
通貨
銅貨1枚10円換算です、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨と桁が上がるごとに代わります、お風呂の値段が高いのは魔石と石鹸などの消耗品の代金です。貨幣名は大陸ごとに違います。
会話
『』は会話「」は心の中とさせて頂きます
魔石
どんな生物にも存在します、しかし死後に生成されるため弱点とかにはなりません。人も死ねば魔石が出現します、これは体内の魔力が変異したもので魔力が大きい者ほど魔石は大きいです。大切な人の形見として体内から魔石を取りだし大事にするのがこの世界の文化の1つです。
スライムは魔核を持ちますがこれは魔石とは別の物となります