空白に愛を落として
秘め事があったのはいつからだろう。
彼が旦那になる前、彼氏になる前、それよりもっと前、彼が私に恋心を抱く頃にはもう胸の中にあったかもしれない。
それは悪癖、愛に飢えた心は渇きを愬える。
彼のいない時間、私には誰からも愛が向かない。
そんな空白の時間を空白の心を埋めるため、私はまた彼以外に愛を求める。
私を愛して、私を見て、私から離れないでと醜い顔を精一杯綺麗にぼかして。
ある日、彼が言った。
いつも一緒にいられなくてすまないと言った。
謝らないでと私の心は叫んでいた。
何かを見透かされたような気がして、呼吸が荒くなった。
私はその場に倒れ、彼はすぐに救急を呼んだ。
病院で私は子供ができていたことを知った。
彼は喜び泣いていた。
私はどこか遠いものを見るような気持ちで彼を見ていた。
子供ができてから、私は愛されることよりも愛することに心が向くようになり、気付けば悪癖は消えていた。
彼は今日も私達を愛してくれる。
この子の親を知っても彼は私達を愛してくれるのかしらと、私は少し大きくなった我が子の頭を撫でた。
そこに彼の面影はない。