表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/41

9話 夢と現実

 

「でも、ほんとに良かったね! 潤さんとまた会えて!」


「うむ。神に感謝せぬといかぬのじゃ」


 いや、ときめは神でしょ……。


 しかし、この姉妹、正直全く似ていない。妹の方はかなり幼く感じるし、お胸さんも発展途上のようだし……。


 いや、年齢的にも身長含め、このサイズで成長済みなのかも知れないな……。


「潤、何を美月に見とれておるのじゃ! もう心変わりしてしもうたのか!?」


「えっ! そ、そんな……あわあわ……ふ、不束者ですが……」


 前言撤回、とっても良く似てる姉妹だ。特に天然さが……。


「心変わりなんてしてませんから、安心して下さい」


「ふふ、冗談だよ! お姉ちゃん!」


 こ、この子は! 騙された! やはり違う! ときめと全然っ違う! 


「じゃあ、私、そろそろ戻るね! もうすぐ新しい動画がアップされるから!」


 この十年で俺の知らない日本が出来上がっていたようだ……今時の若い子はみんなこうなのだろうか。本人は520歳らしいけど……。



 嵐のように妹さんは去って行った。えっと……何の話をしてたんだっけ……。


「騒がしい妹で済まぬのう、あれでいて中々優秀なのじゃが、いかんせん落ち着きが足りないのじゃ……」


 はい、心中お察しいたします。


「もちろん、美月ちゃんもきつねさんですね?」


「そうじゃ、先程は尻尾を出してはおらんかったが……ま、まさか! 美月の尻尾の方が良いというのか! ときめの方が大きくてもふもふなのじゃ! 美月のは一回り小さいのじゃ!」


 おお……なんか尻尾アピールが凄い。


「はい、俺はときめの尻尾が大好きですよ」


 うん? 何か……。


「も、もう一度言って欲しいのじゃ!」


 思い出した……このやり取りしてたんだった……まだやるの?



 とんだ来客があったおかげで随分時間を使ってしまったが、取りあえずは今日は休もう。有給は掃いて捨てる程あるので、たっぷりと消化させてもらう手筈を取ってる。


 明日はクーラーの取り付けと、やっぱり買い物かな。


「さあ、寝るのじゃ!」


 尻尾をフリフリしながら俺の背中を押して部屋に押し込まれた。


「ちょ、ちょっと! 俺の部屋はあっちです。ここはときめが寝る所ですよ!」


「ダメなのじゃ。向こうの部屋には毛布しかなかったのじゃ」


 当然、一人暮らし用の荷物には一組の布団しかない。なのでときめには布団の方を用意したのだが……。


「ときめの為に無理する必要など無いのじゃ。一緒に寝なければ我もここでは寝ぬ」


 参った……流石年上の彼女である。見破られてるし、ときめの事だ、本当に床で寝かねない。


「……本当に一緒に寝ていいのですか?」


 こちらと男である。そんな状況になったら……。


「いいのじゃ、一人は寂しいのじゃ……美月もおらぬし……」


 ……大変失礼致しました。寂しく無いように添い寝させていただきます。



「今日は冷えますからね、しっかり布団を――おうふ!」


 尻尾のもふもふがみぞおちに、痛くはないけどちょっと驚いたよ?


「尻尾にくっつけば暖かいのじゃ! 美月とも寒い時は良くくっつけていたのじゃ」


 なん……だと……? もふもふ尻尾を抱きながら寝れる……。そんな事が許されるのですか?


 全国のケモナーさんが泣いて喜ぶシュチエーションじゃないか。


「じゃあ、遠慮無く……うわあ、きっもちいい……」


「ぅん……」


「とっても柔らかな毛並みですね……」


「くぅ……」


「……あの?」


「はぁはぁ……な、なんじゃあ……じゅ、潤……」


 寝れない。そんなに悩まし気な声を出され続けて、くねくねされたら……。


「あの、こそばゆいみたいのなので触るのやめますね……」


「さ、触って欲しいのじゃ! ほれ! ときめは動かぬぞ!」


 思いっ切り尻尾を抱きしめておいた。神様……俺、幸せです。





「ふあああ……」


 朝、目を覚まして大きく伸びをする。俺の起床スタイルだ。昨日はなんか大変だった……でも尻尾がとっても気持ちよかった……あれ?


 布団に居たのは俺一人、ときめは居ない。


 部屋から出てキッチンに向かうが人影は無い、他の部屋にも……俺一人である。


「え……? まさか……夢なんて事は……」


 いや、あり得る。そもそも神様が彼女? ケモミミに尻尾? しかも巨乳で献身的? そんな都合のいい話がある訳が無い。


「はは、いい夢見れたよ……」


 誰もいないキッチンで一人呆けていると、自然に脳裏に浮かんだ、いやその時点からすでに動き出していた。ときめの痕跡を探すために。


 非常に不謹慎極まりないが、洗濯かごを漁らせてもらった。そこにはときめの下着が確かにあった。でも本人は居ない……。


「まさに神隠しってか……あんなに一緒に居たいって言ってた癖に」


 上手い事言ったつもりだが、全く笑えない……珈琲でも飲むか……。



「饅頭のゴミ……か。ときめ、美味しそうに食べてたな……」


 今日はゴミの日だったな。昨日のコレクションもまとめてあるし……これはもう捨ててしまおう。ときめが戻って来た時に怒られてしまう……。


 ゴミをまとめて玄関の前に置くとふと思いたった。


「あ、段ボールも持って来なくちゃな……資源ゴミも今日出せた筈だし……」



 これがときめが味わった気持ち……十年待たせられた気持ちか。まあ、いい。十年ぐらい待っててやる。その頃には三十八歳か……もうおっさんだな。帰ってくる保障なんて無いけど……。



「のわあ! な、なんでこんな所にゴミが置いてあるのじゃ!」


 声のする方に走った。


「おお! 潤、起きておったのか! 頑張って一人で神社に行って美味な梅干しを――」


 ときめの言葉が終わる前に抱きしめた。


「な、な、な! じゅ、潤、どうしたのじゃ!?」


 柔らかな感覚を感じる為に更に強く抱きしめた……。


「あ……じゅ、潤……そ、そんなにされたら……」


 この暖かさ……正真正銘ときめだ、夢じゃない。


「一人で勝手に出かけないで下さい! 俺は十分も待ちましたよ!」


「な、何を言っておるのじゃ! 我は十年待ったのじゃぞ!」



『ふふふ……』


 二人の笑い声が玄関で重なった。


「もう少しだけ、このままでいさせて下さいね」


「それはときめからのお願いなのじゃ……取るで無い……」


 しばらくの間、力いっぱい抱き寄せた。


 古風で美人のきつねの神様……俺の大事な彼女を。


ご愛読有難う御座います。

今話にて序章部にあたる出会編は終了となります。お楽しみ頂けましたでしょうか?


お気に召されればで構いませんので、ブクマ、評価、感想お待ちしております!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宜しければポチりとお願いします!小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ