7話 ケモナーだった
「こ、こんな失態……もう、お嫁に行けないのじゃ……」
大変落ち込んでいらっしゃるが、貴女がここに来た理由はなんでしたっけ?
しかし、困った。普通のズボンでは不意に尻尾が出たら、さっきみたいに突っかかってしまうし、スカートだったら完全にめくれ上がっちゃう。
「あの、ときめ?」
「うぅ……恥ずかしく死にそうじゃ……尻を見られたのじゃあ……」
とりあえず、明日、下着を買いに……いや、ネットショッピングにしておこう。一緒に女性下着コーナーなど悪い予感しかしない。
「あの、後で服を注文しましょう。とりあえず、ときめの作ってくれた晩ご飯が楽しみなので、早く食べましょう! ね?」
「そ、そうであったの。い、今すぐ用意するのじゃ……」
う~ん、あまり元気が……仕方無い、ちょっと照れ臭いけど。
「ときめは俺の彼女ですから、見てしまった責任はちゃんと取りますよ。それに可愛かったですし……」
「はぅ……そ、それはまことか!? いっ! 痛いのじゃあ~! 尻尾がまたあ!?」
……尻尾対策が早急に必要だ。
ときめの作ってくれた料理はとても美味しかった。オーダーした肉じゃがの他に、ホウレン草のおひたしや酢の物まで添えられており、完璧なザ・日本食であった。
「ときめは料理が上手なんですね、とっても美味しいですよ。この味噌汁なんてとても味わい深いですし」
「そ、そうか! そう言ってくれると嬉しいのじゃ!」
自分の家で飲む味噌汁なんてインスタント以外、あり得なかったもんな……。
「ところで、ときめのケモミミと尻尾なんですが、一体どんなタイミングで出てしまうのですか?」
「基本的には自分の意思で出し入れ可能なのじゃが、感情が高ぶってしまうと、玉にポロっと出てしまう時があるのじゃ……今まではずっと出しっ放しじゃったからのお」
成程、思い当たる節もあるが、出る時と出ない時があるのか。
「これからは頑張って、耳と尻尾を出さないようにするのじゃ」
「どうしてそんな事を!?」
あ、しまった。ときめがめっちゃ驚いてる……咄嗟に出た反応であるが、今確信した。俺には誇り高きケモナーの血が脈々と流れている事に。
「あ、いや、その、すみません。確かに人前では出さないようにして欲しいのですが、俺の前では……その……ずっと出してて欲しいぐらいで」
もう、ケモナー宣言出しちゃおう!
「と、ときめの耳と尻尾がす、好きなのか? は、初めてそんな事を言われたのじゃ……な、なんかとても恥ずかしいのお……でも、すごく嬉しいのじゃ!」
この笑顔、顔立ちは大人であるが、子供のような無邪気さがある。そしてケモミミ、尻尾。俺はとんでもないものを手に入れてしまったのかも知れない。
「ご馳走様でした。ときめ、ありがとう、とても美味しかったです」
「そうか、良かったのじゃ! ところで何をしておるのじゃ? 皿など持って」
「え? 洗うんですけど。どうかしましたか?」
「そんな事はときめがするのじゃ! 潤は休憩しておればいいのじゃ!」
う~ん、あんまり何もかもやってもらうのも、気が引けるんだよなあ。せめて自分が食べた食器ぐらい持って行って洗うけども。
「じゃあ、一緒に洗いましょうか? それならいいでしょう?」
「い、一緒……そ、それならいいのじゃ!」
まあ、今はそんな時代じゃないですし、出来る事はやっていかないとね。
「……家事の手伝いまでやってくれるのじゃな……なんと心優しき……」
「うん? 何かおっしゃいました?」
「な、何でもないのじゃ! 何でも――い、いたた! し、しまったのじゃ! また尻尾が!」
いや、あの……もう脱がないでね?
「これでいいのじゃ!」
俺のズボンをローライズ風に下げ、常に尻尾を出している。おしりの始まりが見えてる……もちろん、パンツは履いていないので大変不安定な状態だ。
さっき『尻を見られたのじゃあ!』って言ってませんでした? それは見えてる内には入らないんですね。
しかしこれは由々しき問題だ、早くネットで頼んで、明日の午前中に付く超特急便で下着を手配しておこう。
「ときめ、下着なんですが……ちょっと男の俺には分からないので、一緒に見てもらえますか?」
「その板は最近よく見るのじゃ。みんなそれに向かって指をあてておったが、そんな物でどうやって――のおお! な、なんじゃこれは!? 絵が次々に変わってるのじゃ!」
まあ、そういう反応になりますよね?
「凄いのう~、でも良く分からないのじゃ。下着のサイズなど分からぬのじゃ」
そんなこと言われても俺も困る……胸の大きさです、神様。
「下着にアルファベッド一文字が記載されていませんでしたか?」
「おお~! そういえばあったのう! 確か『G』じゃ!」
……A、B、C、D、E、F……G、七番目……。
「あ、ありがとうございます。じゃあ後は私が適当に見繕っておきますね」
とは言っても、俺も良く分からないな……あ、このセットのやつでいいや。なんか色々入ってるみたいだし。数も多いからちょうどいいや。ポッチとな。
「よし、これで明日には届くでしょう。今日は申し訳無いですがそのままで――」
あれ? いない。さっきまで横で『へーへー』、『ほーほー』言っていたのに。何処に行ったのだろうか。
「ときめ~、何処に居るんですか?」
「こっちじゃ」
返事がなんか素気ない気がするが、奥の部屋に居るのか……いや! あの部屋はまずい! 大方、荷物は片付けたのだが、ときめの前では片付けれない海外のお土産が入っている段ボールがあるんだ!
ま、まさかそれを見たのでは……。
「あ、あの……ときめ?」
「早く来るのじゃ」
付き合って初日、海外のお土産のせいで破局の危機に面してしまったようだ……。
もう、震えが止まらない……神様を怒らせたら一体どうなってしまうのだろうか……。




