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最終話 最高の笑顔

 

「ねえ、パパぁ? しぐれもそれ飲みたいのじゃ~!」


 拙い言葉を発し、白いワンピースを着た可愛らしい女の子が小さな指が差すのは、俺の愛用の珈琲マグだ。


 愛する我が娘のしぐれ、四歳の超絶可愛い時期であり毎日がメロメロだ。


 ただ、語尾がのじゃのじゃとなってしまってるが。子供は身近の言葉から覚えていくもんな……。


 そんな日曜日の昼下がり、俺はティータイム中である。


「ダ~メ、これは苦いし、子供には飲めないの。牛乳にしておきなさい」


「むうぅ! 飲みたい! 飲みたいのじゃ!」


 ぱたぱたと小さな尻尾を左右に振っている。ほんとに可愛らしい姿だ。なんでも言う事を聞いてあげたくなる。仕方無いなぁ、それじゃあ一口だけ――


「これ、しぐれ! 幼子に珈琲はまだ早いのじゃ! 夜眠れなくなるのじゃ!」


「ママぁ……」


 尻尾がポトリと垂れ下がった……ああ、可哀想に。


 ときめが饅頭を持って来てくれテーブルに置き、座った。その手には珈琲マグが握られており、中には珈琲が注がれてる。まあ、カフェオレだけどね。


 コクリと一飲みするその手の薬指には指輪がきらりと輝いている。


「はは、そうだよ、ママだって最近だからね、珈琲が飲めるようになったのは。昔は嫌いだったんだよ?」


「そうなんだ~、じゃあ、しぐれは大きくなったら珈琲飲むのじゃあ!」


 小さなコップに注がれた牛乳を飲むと無邪気な笑顔でまんじゅうを食べだした。うちの子が世界で一番可愛いんじゃないかな?


「そうじゃ、忘れておった、確か郵便が届いておったのじゃ」


 席を外した……チャンスだ! すかさず愛娘に手招きをする。


「……一口だけだよ?」


 そう伝えると、全てを浄化できそうな笑顔を向けてくれた。ああ、天使の笑顔だぁ……。


 しかし、俺のマグを持ち一口含むと一気に笑顔が引いてしまった。


「うぅ……にがぁいのじゃあ……」


「はは、そうだろ? さ、おまんじゅう食べて口直しを――」


「何をしておるのじゃ!? 潤! それにしぐれ!」


 ひいい! バレたぁ! だって、可哀想だったんだもん!


「全く、潤はしぐれに甘過ぎるのじゃ! このまんじゅうのようにの!」


「はは、ごめんごめん、子供の好奇心は無駄にしちゃダメかなって」


 まんじゅうを一口ほおばる。うん、美味しい。ときめの影響ですっかり和菓子好きになってしまった。まあ、ときめも好んで珈琲を飲むようになったが。


「しぐれはおまんじゅうだけでいいのじゃ~!」


 俺の足の上に座り身体の尻尾を再びパタつかせている。しぐれの言った言葉を聞き、少し思い出し笑いをしてしまった。


「なんじゃ? どうしたのじゃ?」


「いや、初めてときめと出会った時の事を思い出して……あの時もまんじゅうを美味しそうに食べていたなあって」


「何を言うのじゃ、潤も最初はまんじゅうを嫌がっておったではないか」


「ママは珈琲が嫌いで、パパはおまんじゅう嫌いだったの?」


 とても不思議そうな表情を浮かべている。それはそうだ、二人とも嫌いなものを笑顔で食べて飲んでいる訳だから。


 思わずときめと顔を合わせ、笑う。珈琲とまんじゅう、それは切っても切れない関係。ときめと俺を結び付けてくれたものだと言ってもいいぐらいだ。


「そうだよ、珈琲とまんじゅうはとっても合うんだよ? パパとママの好きな物と嫌いな物は反対だったけど、これのおかげで二人とも好きになれたんだ」


 まんじゅうと珈琲を持ち、しぐれに見せてあげた。


「そうなんだ~、おまんじゅう美味しいね~」


 あ、興味無しですか。子供には難しかったかな? それとも反抗期か!? 反抗期なのか!? パパは、パパは悲しいぞ!!


「懐かしいのう。じゃが、これからは永遠じゃぞ?」


「ふふ、嬉しい限りですよ。ときめとなら」



 結婚した日、ときめと俺は愛し合った。その日は同時に俺も神になった日でもある。そして可愛い子供にも恵まれた。


 ちなみにケモミミと尻尾が出た状態でも幼稚園に通っている。なにやらコスプレで通っている様だ。尚、翔とひすいさんの子供も同じ幼稚園だ。


 きつねさんと猫さんのコスプレが通る幼稚園って……きっと裏の力が働いているの違いない。しかしスターシティは子育て応援にも力を入れてる! ほんとなんでもありの企業だ。


「潤、研修の案内が届いておるのじゃ」


 ときめから真っ白な封筒を手渡された。結構大変なんだよなあ~神様の研修って……。


「頑張るのじゃぞ! 愛しておるのじゃ、あ・な・た」


 頬にキスをいただけた。今だにちょっと照れてしまう。いずれは俺も翔も社会からは退く事になるので今は神様の研修中だ。ときめの期待にも応えないと。


 それと、いただいてばかりでは悪いので、お返しに俺からもキスをしてあげた。


「あ~、またパパとママがちゅ~してるのじゃ! しぐれにもして欲しいのじゃ~」


 口元にまんじゅうをつけた娘に見らてしまった。はは、これは恥ずかしい……また? 結構見られてる!?


「分かったのじゃ、ほれ、潤」


 ふふ、言われなくても分かっていますよ。


 真ん中にしぐれを挟み、俺とときめの両方からほっぺたにキスをしてあげた。


「パパ、ママ、だあ~い好きなのじゃ~」


 とっても献身でちょっと天然なきつねの神様は大きな尻尾を振りながら、今日も最高の笑顔を俺としぐれに届けてくれている。


 この幸せは色褪せる事は無い。これまでも、そしてこれからもずっと――


「パパとママ、どうして夜になるといつも裸になるのじゃ?」


『しぐれ!?』


 お、弟か、妹が欲しいかなって。それ、絶対幼稚園で言わないでね?


ここまで読み進めて頂き、有難う御座います!

ひたすら山無し、谷無し、甘々ロードの物語を書いてみました。

完結出来たのもここまで応援していただいた皆様のおかげです! お礼申し上げます!

宜しければ連載中の物語もございますので覗いて頂ければ幸いでございます。


それでは皆様、引き続き、良い読書タイムを!


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