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39話 プロポーズ

 

 肩の落ちる花蓮さんを先頭に再び神社に戻って来た。どうやら先程のほとぼりも冷めているようだ。と、思いたい……。


 混み合う本殿を脇目に裏手に回り、例の入場方法で地下スペースへと案内された。


 内装は古き良き和の造りであり、地元の神社よりかなり広い印象である。まあ、美月ちゃんが近代化させたのが異例なのだろうけど。


「戻って来ちゃった……クリスマスなのに大勢で神社に来ないでよぉ……あ、お茶出すから座って~」


 とても感情の起伏の激しい子だ……そこに原因があるのかも知れない。


「うむ、やはりこの造りの方が落ち付くのう~。おお、囲炉裏もあるではないか~」


 尻尾をフリフリとご機嫌そうだ。それとは裏腹に俺の緊張はどんどん高まっている。一世一代の大告白だし、噛まずに言えるかな……。


 お茶を一口いだただきと少しだけ心が落ち着いた……美味しいお茶だ。


「それで、今日はどうしたらいいの? 二人は十分仲良さそうに見えますけど? 私のご利益なんて必要無くない?」


 あら……なんか、ご機嫌が斜めなような。どうやら仕事もたんまり貯まっているようだしなあ。きっと秋祭りのときめと美月ちゃんみたく、仕事を始めたら最後クタクタになっちゃうんだろう。


「何を言うておるのじゃ、もっともっと仲睦まじくなりたいのじゃ! さあ、はようせい!」


「むきぃ~! この贅沢者め! 神に向かって何たる態度!」


「ときめも神じゃ」


「……そうだったね。てへっ!」


 舌を出してウインクしている。この子、まずは自分の性格を直さないとずっとこのままのような気がする……折角可愛いのに。


「じゃあ、サクッとやっちゃいましょ。いっぱいお仕事貯まって来てるし、年始は年始で結婚の予定入ってるし。そもそも元日に結婚なんてしなくてもいいじゃないの……」


 おそらくあの目線の先には執務室があるのだろう……その目は完全に生気を失い、半笑いとなってる。大丈夫か、この神様!? 


 そして気になる言葉があったな。元日に結婚式って翔とひすいさんじゃないかな? 


「大丈夫じゃ、変わったやつじゃが腕は確かじゃ。それはこの神社の繁忙を見れば瞭然なのじゃ」


 不信感を察してくれたのかときめが言葉を添えてきた。まあ、確かに全国各地からここのご利益にあやかりたく集まってくるもんな、腕は確かなのだろう。ガイドブックにも一押しって書いてあったし。




「は~い、じゃあそこに座って~! サクサク行っちゃうからね!」


 連れてこられたのは良く見る本殿内部のような場所だ。中でご祈祷していただいているのよく見るが、その造りと似ている。しかし、どうしてもサクサクやりたいみたいだな。


「手を抜くで無いぞ!?」


「分かってるよ~ときめちゃん! ただ早く終わらせたいだけだよ……」


 花蓮さんも巫女姿に着替えてくれている。しかし、巨乳だ、かなりの巨乳だ……おっと、神聖な場所で何を考えているんだ。それに俺の横にはときめという最愛の人が居る。


「まったく、それでは頼むぞ、潤ともっと仲睦まじく――」


「あ、あの! すみません、お願いがあるんのですが!」


 首を傾げるときめと明らかに怪訝な表情を浮かべる花蓮さん……とても素直な表現ですね。一体何が貴女をそう変えたんでしょうか。


「何ですか、ときめの彼氏さん。私はサクッとですね――」


「彼氏ではなくて……ときめの旦那に、夫婦になる誓いを聞いていただけませんか!?」


 噛みはしなかったが最後の方、なんか叫ぶ形になってしまった……。


 ときめの尻尾が下がり、何が起こったか分からない顔をしている。対する、花蓮さんは先程の怪訝な表情は何処へやら、優しく微笑んでくれている。


「分かりました……我が名のもとに二人の想い、聞き遂げましょう」


 とても素敵な笑顔をむけられた。見ているだけで心が温かくなるような笑顔だ。これが恋愛の神……この表情ならおそらく彼氏なんて作り放題だと思うけど。


「じゅ、じゅ、潤!? い、今なんと!? ふ、夫婦と聞こえたのじゃが、聞き間違いかの!?」


 今度はせわしなく尻尾を左右に揺らしている。完全にテンパってる様子だ。さて、俺もここでしくじる訳にはいかない!


 秋元潤、一世一代のプロポーズだ!


 ポケットに忍ばせていた箱を取り出し、未だ混乱中のときめの前でフタを開ける。中身はいわずもがな、婚約指輪、エンゲージリングだ。 


 それに恐らく、おそらくときめはエンゲージリングの事は知らない。まずは説明してあげないと。


「この指輪は男性が一生の愛を誓う人へ送るものです。そして俺は、小さな時から見守っていてくれて、十年間待ってくれて、とても優しく、常に一生懸命なときめが大好きです。結婚して下さい!」


 慌てふためいていたときめだが、状況を理解出来たのだろう。涙を流して俺を見ている。あらら、ときめを泣かしてしまった……。でもこの涙は悲しみの涙では無い筈だ。


「……もちろん、『はい』なのじゃぁ……」


 そっと、ときめの左手に指輪を通した。細く綺麗な薬指にきらりと輝くダイヤモンド。その輝きに負けないときめの泣きながらの笑顔。この光景は一生の宝物だ。


「ときめは、ときめはとても……ぅ、嬉しいのじゃあ~!」


 飛び込んで来たときめを受け止め、熱いキスをする。柔らかくて、暖かくて――


「ちょっと、二人とも! 人の神社の中でやり過ぎ! ご利益はもうあげたからささっと出て行く!」


 さっきはあんなに優しい表情してたのに……でもしっかり誓いは聞き遂げてくれし、ご利益もいただけたようだ。それになんとかプロポーズは成功する事が出来たし万々歳だ。


「きぃぃ~! お幸せにね!!」


 半ば蹴り飛ばされるような感覚で神社の外に放り出された……。


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