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38話 花蓮、見参!

 

 本州を西に進むと国内屈指の人気を誇る神社がある。ときめの神社は勉学で有名ではあるが、今向かっているのは数ある中でも断トツに有名な恋愛の神社である。


 温泉旅行のついでに、という口実だったがその神社はときめが以前、『あやつの……』と言っていた神社であったのには驚いた。


 電車旅で温泉旅行。しかも神社にお参りしてそこでプロポーズ。ときめに合わせたプランだ。それに今日はクリスマスイブなので、神社の参拝客は少なめであろうと、予測していたのだが……。


「こ、これは……大渋滞ですね……」


「花蓮の神社はいつもこのようじゃ。流石は恋愛の司る神じゃのう」


 クリスマスを舐めていた。一見、神社とは縁が無いように感じたのだが、和、洋に限らず、いや、むしろ和・洋の両方から参拝者が押し寄せる事となっている。


 しかもこの神社には花蓮さんという神様が居るらしいのだが……何の神様なんだろう。


「これは、花蓮に会うのは厳しいかもしれぬのう」


 その時、冷たい風が頬をさし、意識を外された。この感覚は……。


「もう嫌~! 今日ぐらい休む! 今年こそは、今年こそは!? えっ水月(みなづき)!?」


 だれ? 水月って? 


 泣きながら人混みをかき分けて出て来たこのお姉さん、ゆるふわ系の服装だ。ワンサイズ大きめの服を着ている感じになっている。とても元気そうでとても巨乳だ。ときめ以上だと……?


「神社から逃げ出してきおったのじゃ、それに花蓮、今の名はとき――」


「そんな事はどうでもいいから! 早くしないとどんどんお仕事が貯まっちゃう!」


 ときめの言葉を聞き終えずに花蓮と呼ばれた女の子は大きな胸を揺らしながら、ときめを掴み、出口の方に走り去ってしまった……あの、俺、置いてけぼりなんですけど。



「今年はもう諦めます! ですが来年は! 来年こそは!」

「まだだ、まだ俺はあきらめません! 神よ! どうか今年のクリスマスに光を!」


 うわあ、隣で全身全霊で参拝しているお兄さんが二人……。他の参拝者にからも鬼気迫る思いを感じる。神社ってこんな殺伐とした空気感だっけ? 


 そりゃあ、花蓮さんが逃げ出してもしょうがないかな。ここに居る参拝者さん全員から死に物狂いで依頼されている訳だから。


 しかし何処に行ってしまったのだろう……こんな場所で彼女の名前を叫ぼうものならどうなるか分かったものじゃない。じっくり探して行くか。幸い目立つ二人だし……。



 神社の出口の方に向かって歩くと、なぜか人だかりが出来てる場所が……きっとあそこだ。


「ええい! 離すのじゃ! 潤をほったらかしなのじゃ!」


「やだよぉ! 諦めてよぉ~!」


 ……何、この状況。完全に俺との三角関係みたいな発言をしてるじゃないか。まるで今カノと元カノの言い争いみたくなってるし。


 ダメだ、こんな場面で出て行ったら確実に周りの方から石を投げらる。この神社、砂利仕様だし……。


「おぬしに会いには来たのじゃが、潤がおらねば意味がないのじゃ! お、潤! こっちじゃ!」


 お手てをフリフリするときめに、俺はこの年になってかつて無い程の走りでときめに近づき、そのまま手を握った。


「ときめ、それと花蓮さん! 走って! 後ろを見ちゃダメですからね!」


 明らかに殺意の念を背中から感じる……やめましょう、ここは神聖な神社なんですよ? 神様に失礼ですから! こっちには二人の神様が居るんですからね!




 神社の出口から出てしばらく走り、息を整える。こ、ここまでくれば……しかしなぜ俺は知らない土地で全力ダッシュしなければならないのだ……。


「はぁはぁ、こ、このたわけが……」


「ご、ごめん、水月……ひ、久しぶりだね……ふぅ~……」


「ま、まあ、立話もなんですから、どこかお店は……あ、あのお店で一息つきながらお話しませんか?」


 目の前にあったのは今風のおしゃれなカフェ。とりあえず、寒いし暖かい珈琲でも飲んで――


「え!? な、ナンパ! 水月! 私、初めてナンパされたよ! やったあ! 流石クリスマス~! さあ、行こう! お兄さん!」


 腕を掴まれぐいぐい引っ張られてる。あの、お話ってそういうのじゃなくてですね!?


「たわけが……」


 ブちぎれてる……完全に……なんと冷たい目なのだろうか。




「えっと……花蓮さんは何になさいますか?」


 ときめをなだめながらなんとかカフェに入ったのだが、今度は花蓮さんが虚ろな目をして斜め下をずっと見ている……。


「ホット珈琲で……そうか、そうだよね……あたしなんかに……ねえ……」


「む! 潤、ときめも珈琲なのじゃ! 花蓮には負けられないのじゃ!」


「ときめはミックスジュースにしておきますね。すみませ~ん!」


 そんな所で意地をはらなくてもいいの! ほんとにもう! 少し膨れてるときめと生気を感じない花蓮さん、話にくいなあ……。




「ところで、今日はどうしたの、水――ときめから来るなんて明治維新の時以来だね」


 珈琲を飲んで少しは落ち着いたのだろう、昔話モードに移行したようだが、相変わらず年代が気合入ってる。それにしてもときめの愛称は水月だったのか。


「うむ、前々から来るつもりじゃったのだが、今日は潤とじゃな、その……より、仲睦まじくなれるようにじゃな……」


「はぁぁ~……分かってるよ、うちの神社は恋愛を司っているからね。わざわざ彼氏を連れて来る理由なんて分かり切ってるよ、でもどうしてあたしには声の一つもかからないの!?」


 最後なんかキレた!? とても情緒不安定だ!


 じっと俺の方を見て観察している……巨乳ゆるかわ系さんでこんな可愛いのに何故モテないのだろうか……不思議だ。しかし彼氏を探しているなら自分の神社の人をあたれば結構いい人がいるのではないだろうか。それとも運命は自分で切り開きたいタイプの方なのだろうか?


「仕方無いね……珈琲もご馳走になった事だし、神社に戻ろうか……はあああ……嫌だなあ……」


 珈琲一杯でどうやら事が進むらしい……。


 しかしこれで当初の予定通り恋愛の神様に参拝が出来る。でも、ときめ、仲睦まじくはもちろんあってるんだけど、それだけじゃないんだよ? 楽しみにしていてね。


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