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34話 動画のネタ

 

 神社の入り口からは甘いベビーカステラの匂いが漂っており、神社の外周には様々な屋台が軒を連ねている。


 神社内は家族づれや元気にはしゃぐ子供達、お年寄りの方など、様々な年代の方が秋祭りを楽しんでいる様子が伺える。


「お~い! こっちだよぉ~」


 元気に手を振る浴衣姿の女の子、美月ちゃんだ。


 流石に巫女姿では無く、浴衣姿となっていた。お祭りに合わせているようだ。ちょっと、ほっとした。


「うむ、待たせたのう」


 ときめも同じく浴衣姿であり、その艶やかな姿に行き交う人々の注目を集めている。尚、俺も浴衣姿ではあるが、これは自作では無く既製品だ。作ろうと思えば作れるのだが、そこまで自分の着る服にこだわりは無い。


 もちろん服を作る事は好きだが、それはそれ、これはこれ。時間と手間もかかるし買ったほうが楽なのだ。


 そんな事よりも、無事、美月ちゃんと合流出来たのだが、どうしても気になる事があるので確認しておこうと思う。


「そのビデオカメラ、邪魔になりません?」


 右手にカメラを持ってにこにことしている。完全に動画にあげるつもりだわ、この子……。


「大丈夫だよ! 今回は『美月ちゃん、秋祭りで一万円使うまで帰れません!』を撮るつもりなの!」


 定番のやつですね。まあ、構わないですが、通行の邪魔をしちゃダメだよ?


「相変わらず訳の分からぬ事をしておるのう……なんじゃ?」


『は~い! 今日は秋祭りに来ている美月だよ~! 今日はね、美月のお姉ちゃんを紹介するよ! とっても美人なお姉ちゃんで~す!』


 自己紹介で自撮りをした後、なめられるようにカメラを向けられているのだが、本人はあまり良く分かってないようだ。きょとんしている。


「何をやっておるのじゃ? さあ、早く行くのじゃ」


『それでは、美人姉妹が行く、秋祭り動画、スタートです!』


「よし、これでオープニングはよしと……後はいつもの曲を入れて、テロップは……」


 秋祭りに行きたかった理由はときめを使ってチャンネル登録数を獲得する気だったのね。


 ところで俺は? 美人姉妹って事は俺は入らないよね? さっきのスクール水着で距離をあけられているのかな……。




「いやあ、懐かしいです、お祭りはいくつになっても楽しいものですね」


 小さい頃はお小遣いをもらってはしゃぎまわったのはいい思い出だ。どうしてお祭りってこんなに心躍るんだろう。


「お姉ちゃ~ん! 買って来たよ~!」


 本殿を背にお祭りの様子を眺めていると、美月ちゃんが早速屋台でなにか買って来たようだ。


 ほう、チョコバナナ、とても美味しそうですが……凄く嫌な予感が。


「おお、なんじゃそれは?」


「ふふ、バナナっていうんだよ。食べ方はね、こうやって先端を――」


 ペロリと小さな舌を出してなめる仕草をしている。この子、動画の為なら少々オーバーワークも辞さないようだ……。やめようね、ときめのイメージが崩れるから。


「美月ちゃん、ときめをそんな風に使わな――」


「こうかの? うん、甘いのじゃ!」


 ときめもやらなくていいの! ここには子供もたくさん居るんだから……でもなんか見ちゃう……。


『まず始めはお姉ちゃんのチョコバナナで~す! とっても美味しそう~!』


 カメラ回してるし……。


「この黒い部分は甘くて美味しいのじゃ! 潤も食べるのじゃ、あ~んなのじゃ」


「あ、あ~ん」


 うん、甘くて美味しい! やっぱチョコバナナは美味しいよね!


「この部分はカットね」


「え!?」


 すっとカメラを下ろした……ま、まあ美人のお姉さんがチョコバナナを隣の兄ちゃんに『あ~ん』なんてこんな光景が映ったら即見るのやめちゃうだろうけど。


 でもちょっと扱い酷くないですか?



『やきそばだよ~』

『焼きとうもろこし~!』

『唐揚げ&ポッテイトウ~』


 やけにネイティブな発音を織り交ぜながら動画撮影は続いている。尚、ときめも全部が全部は食べられないので、後処理は全部俺に回って来る。しかし五十年振りだというのにいろいろとよくご存知ですね、美月ちゃんは。


 ……きっと内緒で出回ってるな、これは。


「こ、これ、もう食べられぬのじゃ! お腹いっぱいなのじゃ」


 まあ、そうなる……結構屋台だけで一万円ってかなりの量になると思う。


「そうだね、食べ物はこの辺にしておこうか! じゃあ次はね、くじや射的とかのアクティブ系に行ってみよう!」


 あらあら、ときめの手を引いて。


「ま、待つのじゃ、潤をほったらかしなのじゃ!」


「大丈夫ですよ、今日は美月ちゃんと一緒にたくさん遊んであげて下さい」


 最初はちょっとやり過ぎた行動に引いていたが、途中で気付いた。美月ちゃんはときめと遊びたいのだ。ずっと二人で居たし、会えない寂しさもあるんだろう。


 すると美月ちゃんがこちらに気付いて笑ってくれた。


「はは、優しい潤さんにはバレちゃいました? ごめんね、お姉ちゃんの独り占めはやめるから一緒にお祭り回ろ!」


 そう言ってもう片方の手で俺を掴んで来た。どうやらあの事件のわだかまりは無いようだ。


「そうじゃの、みなで秋祭りを満喫するとするかの。でも潤の隣はときめじゃ」


「ええ~、じゃあ美月は反対側~、これでいいでしょ?」


 右にときめ、左に美月ちゃん……神様にオセロされてしまった。



「くっ、あそこにリア充が居るぞ……」

「おのれ…お、おのれ……あ、あれ……雨かな……なんか視界が」

「おい、それは雨じゃない、涙さ……」


 若めのお兄さん方が羨ましがってる!? しかも真ん中の人なんか泣いてるみたいだし!


「さ、さあ、行きましょう! 俺は後ろからついて行くのでときめは今日は美月ちゃんと手を繋いであげて下さい」


 このままでは神社中の男性を敵に回してしまう可能性がある! それは避けねば!


「何を言っておるのじゃ! 離れぬぞ!」


「ありがとう、潤さん! でも私、潤さんとも一緒に回りたいの!」


「よおし~じゃあ行こう! 早く人混みに紛れよう! 隠れましょう!」


 うう、こんな美人と可愛い子を連れて歩いていたら目立って仕方無いよ……まさか、お祭りに来てこんなに気を使う羽目になろうとは……。


「何をするかのう!」


「楽しみだね、お姉ちゃん!」


 まあ……いいか、とっても楽しそうだし。


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