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33話 夏の余韻


 甘い香りに柔らかな毛並み……いつもこのもふもふに癒される。この大きさが堪らないだよなあ……根本の尻尾の生え際辺りがちょうど手に収まって……あれ、なんか少し余裕があるなあ、


「あふぅ……こそばゆいよぉ……」


「はいぃ!?」


 一気に覚醒させていただいました! 俺、美月ちゃんの尻尾触って、いや抱きかかえてるじゃないか! 少し細いなと思ったけど!


「どうしたのじゃあ……」


「ううん……なあに……」


 どうやら俺のせいで二人を起こしてしまったようだ。片目をごしごししながら眠たそうな顔をしており、見事にシンクロしている。


「す、すみません、起こしてしまって!」


 時計の針を見ると12時前となっていた。あらら結構寝ちゃたなあ。


「お腹すいたのう……美月、朝ご飯、いやお昼ご飯を一緒に作るのじゃ」


「うん、材料はあるよ~」


 どうやら美月ちゃんも家庭的な子のようでしっかり自炊しているみたいだ。流石はときめの妹さん。


「あ、私は先にお風呂を用意してくるね。昨日は入れなかったからね」


「うむ、分ったのじゃ」


 そっか、俺達も帰ったらお風呂に入らないと――うん、美月ちゃんがこっちに来た?


「潤さぁ~ん、昨日の事はお姉ちゃんには内緒だよぉ。じゃないと美月の尻尾を抱いてた事を言っちゃうからねえ?」


 うわあ……暗黒微笑【だーくねすすまいりんぐ】再び! 気付いていたのね……。


「これでチャラだね! さ、お風呂の準備してこよっと~!」


 ときめ、あなたの妹はとっても可愛くて家庭的だけども、ちょっと腹黒いかも。




 二人の神様が作ってくれた料理が食卓に並ぶ。恐らくこれ程の御利益が詰まった料理は無いだろう。


「ふふ、どお? 美月のお料理は?」


 正直、侮っていた。ときめと同等、いやそれ以上かも!? 料理についてそれほど詳しくないし、大そうな事は言えないが、素材の味を完全に引き出している。


「うむ、やはり美月は料理が上手じゃのう。でもときめも負けてはおらぬのじゃ。潤、これも食べて欲しいのじゃ」


 出されたのは酢の物だ。これもいい塩梅だ。


「私もいただき~! うん、美味しい! お姉ちゃん腕を上げたね!」


「それはそうじゃ、毎日三食、潤の為に愛情を込めて作っておるからのう!」


「くっ! リア充め!」


 ああ、味噌汁も美味しい~。でも美月ちゃん、また怖い目になっているよ? 後、言葉の意味多分だけど分かって無いと思うから。


「割烹着も久しぶりに着たのじゃ」


 二人は巫女さんの衣装の上から割烹着を着ている。これがまた斬新であり、それでいて何か古き良き時代を感じさせてくている。


「じゃが、いつもの『めいどえぷろん』も使いやすくて良いのじゃ。今度美月にも見せてやるのじゃ」


 美月ちゃんの箸が手からするりとテーブルに落ち、乾いた音が鳴った。その目は驚愕の目、というか、感情が無いというか……いや、遠まわしな表現はやめよう。ずばりこうだろう『おい、まじか?』これだ。


「み、美月ちゃん!? 違うからね! それはときめが自分で選んだものだから!」


 誤解は解いておかないと! 今後の関係にひびが入ってしまう!


「そ、そうだよね! ははっ、お姉ちゃん変わった服が好きだから!」


 まあ、初めて会った時の服装も大変魅力的だったけど。実は一番好きな服装だったりもする。


「そうじゃ! この夏は水着も初めて来たのじゃ! 潤が作ってくれたのじゃぞ! 『すくーるみずぎ』というのじゃ! 名前も胸元についておるので間違えたりもしないのじゃ!」


 ……終わった。どうしてパレオの方を伝えてくれなかったんでしょうか? 


「潤……さん?」


 ドン引き……完全にドン引きされてる。どうしよう、この後のフォロー。信頼関係取り戻せるかな……。


 


 ときめと美月ちゃんの頑張りによってなんとか外に出られたのだが、秋のすがすがしい陽気とは正反対に肩を落としながら家路に向かっている。その足取りは重い。


 ときめは巫女さんの服は着替えて、昨日来た時の服に戻っている。じゃないと困る。こんな日中にそんな恰好されてしまって普通にマンションに戻るのは完全にアウトだ。まあ、美月ちゃんはそのまま来た事あるけど。

 

 しかしどうしたものか……とりあえず、誤解は解いたけど、変な性癖の持ち主だと思われていないだろうか。神様の前で嘘なんてつかないと熱く語ったけど、どこまで信用してくれているやら。


 くよくよ考えていても仕方が無い! 失われた信頼は秋祭りで取り返そう! 


「ところであの内装や建屋はどういった仕組みなんですか?」


「うむ、内装などの工事は丑三つ時に神社専門の宮大工が来て行うのじゃ。もちろん、それも神じゃ。日本には様々な神がおるでのう。それにあの空間は地下じゃ。流石に本殿内だとすぐにバレてしまうからの。神社の改修などは行われるが、地面を掘り越す事は滅多と無いからのう」


 成程、確かにその理屈だとつじつまは合う。神社の下に温泉でも湧かない限り、地下まで掘り進める事は滅多と無いだろうし、万が一それが分かれば先に移動しちゃうか。


「そんな事より楽しみなのじゃ! 秋祭りは五十年振りじゃからのう!」


 それは是非とも楽しんでもらわないといけないな。俺も十年振りのお祭りだし……って! そんなに行ってないの!? 完全に様変わりしちゃってるから!


 理由はシンプルに見た目が変わら無いかららしい。その為のスパンだそうだ。


 確かに毎年同じ姿の女性がいたら怪しまれちゃうもんなあ……。しかし、その点は考えさせられるものがある……。


「あ、そうじゃ! 家に帰ったら久しぶりにすくーるみずぎを着て一緒にお風呂に入るのじゃ! そ、そしてまた――」


「よおし! ときめ! おやつのまんじゅうが待ってますよ~! おなかを空かす為に運動がてら思いっ切り走りますよ!」


 そんな大きな声で言わないで! 周りに人が居るんですよ!? 


 ときめの手を引き、前だけを見据えて走った……。天然きつねさんは不意に大きな爆弾を落とすから油断ならない……。


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