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30話 古風な内装?

 

 神社本殿の内部はときめの話を聞いていた通り、とてもレトロな雰囲気を醸し出して……いなかった。


 デザイン住宅のような玄関口におしゃれなフローリング。奥に見えるは吹き抜けのリビング。とても天井が高い……。奥には50インチ程の大型テレビにラック。あ、Wi-fiルータも置いてある。


「な、なんじゃ!? じ、神社を間違えたのかのう!? み、美月は何処じゃ!」


 完全に困惑している様子だ。おそらく、少し前までは俺の想像していた通りの家だったのかも知れない。


「に、二階に行くのじゃ! そこに美月の部屋があるのじゃ!」


 確かに内装は変わっても面積は変わらないみたいだし、ってか俺も行くの? 


 腕を掴まれそのまま螺旋階段を登り二階へと向かった……とことんおしゃれな家だな。神社感が皆無だ。階段の明かりは間接照明ですか……。


「美月! む……おらぬのか」


 妹さんの部屋を除くのは少々気が引けるが、ときめに連れられてきてしまったのだから仕方無い、という事にしておこう。


 美月ちゃんの部屋はとっても女の子らしい部屋で、部屋の真ん中にはテーブルが置かれ、奥にはソファーと可愛いぬいぐるみが何点かおかれていた。テーブルの脇にはビデオカメラのスタンドとよく見るとテーブルにも定点カメラが付けられている。


 動画を取る部屋!? 完全にセッティングがソレじゃん! 良く見るよ? このレイアウト! ってか、自分で思ってて何だけど女の子らしさの要素ぬいぐるみだけじゃん!?


「あ、お姉ちゃん、潤さん! いらっしゃい! もうダメだよ、撮影室覗いちゃあ!」


 やっぱり撮影室なんですね……何処で寝てるの?


「どお? リフォームしたの! 大分痛んでいたし全面改修したよ!」


 ときめは美月ちゃんに神社を任せるって言ってたし、別に悪い事をしている訳じゃないからいいとは思うが……。


「そうなのじゃな、びっくりしたのじゃ。違う神社かと思うてしもうたぞ?」


「しかし本殿の裏はこんな空間があったとは……あ、これ、お土産です」


 この辺りの仕組みは後でじっくり聞くとしよう。かなりファンタジーな話になりそうだが。


「うわあ! 駅前のケーキ屋さんだよね! あそこのタルトとショートケーキは絶品なんだよ~! 食べよ、食べよ!」


 元気な巫女さんが尻尾をふりふりしてとても喜んでいる……良い!! もふりたい!


「……美月、ときめの部屋は残しておるじゃろうな?」


「う、うん。お姉ちゃんの部屋はそのままだよ……」


 ときめの顔が無表情に……怒ってる、超絶怒ってる。顔とあの尻尾を見れば誰にでも分かる! 


 そのままこちらを振り向かずに自分の部屋に向かって行った。


「み、美月ちゃん! な、なんで急にときめ怒っちゃたの!?」


「わ、分からないですよ!? 潤さん何かしたんですか!?」


 二人してパニックだ。ときめがあそこまで怒ったのはキスの邪魔をしたひすいさん以来だ。ケ、ケーキが食べたかった、とか?


「も、もしかしたら……ときめはケーキを食べるのが楽しみだったのかも!」


「え! そ、そうなの!? じゃあ急いでお皿取って来るね!」


 急いでキッチンのあるであろう方に走って行った、でも、ときめはそんなにケーキを食べたかったのだろうか……まんじゅうの方が興味持っていたような。でもそれじゃあ部屋に戻る意味無いし、ときめの機嫌が悪くなった原因……う~ん。


「持って来たよ! さあ、お皿に……うわあ! 美味しそう! いっぱい買ってきてくれたんだね!」


 ケーキのラインナップに喜んでくれているようだ。少ないよりは多い方がいいかなと思って、手あたり次第買っておいたのだ。


「……どうじゃ?」


 ときめの声が不意に後ろから聞こえてきたので、振り返ると、そこには巫女の服に身を包んだときめが姿があった。


 元気一杯の巫女姿の美月ちゃんも可愛さ満点だが、対するときめの姿は美しさ満点、更に胸も満点だ。


「と、とても良く似合ってます……き、綺麗でとても神々しいです」


 赤と白のコントラストと神衣装の精巧な作り、そしてそれをまとう最高のポテンシャルを持つときめが合わさっているのだ。


 似合わない訳が無い。


 もちろん、美月ちゃんが似合っていない訳では無い。それはそれ、これはこれだ。


「美月の服に見とれておったから、ときめも着たのじゃ……妹とはいえ、他のおなごを好色の目で見るのは悲しくなるので止めて欲しいのじゃ……」


「す、すみません!」


 普通に注意されてしまった。そうか、ときめの機嫌が悪くなったのは俺のせいだったんだ……ときめに失礼な事をしてしまった。


 でも服じゃなくて見てたのは実は尻尾なんだけど……これは黙っておいたほうがいいな。


「いいのじゃ、反省してくれてるようじゃから許すのじゃ。良き妻は心も寛大なものじゃ!」


「俺にはときめしかいませんから。信じて下さいね」


「うふっ、当たり前なのじゃ、夫を信じぬ妻が何処におるのじゃ」


 美月ちゃんを眺めてる俺を見て二秒でキレてましてたけどね。それと完全に夫婦化しましたね。


 そう言えば、美月ちゃんは一体――


「お姉ちゃん、潤さん、イチャラブするなら外でしてくれない?」


 イライラしながらケーキを頬張ってる……なんか、ごめんね。


「はむ! はむ! どうせ私は彼氏いないですよ! スタイルもお姉ちゃんとは違いって子供みたいですよお~だ! ふん! あむあむ!!」


 怒涛の勢いでタルトを……タルト生地をそんな勢いで食べちゃうと口の中の水分を全部持っていかれちゃって――


「んぐうぅ!! ぅぅ!!」


「美月! 何をしておるのじゃ! ゆっくり食べぬか! ほれ、これを飲むのじゃ!」


 背中をさすって用意されていた紅茶を渡している。とっても面倒見の良いお姉さんだ。そうか、こんな感じの美月ちゃんをずっと相手にしていたから小さな子供と遊ぶのにも慣れていたんだな……。


 美月ちゃんにはちょっと失礼かもしれないけど、すごく子供っぽいし。


 リビングで盛大に喉の詰まらせ、尻尾を振り回す妹と焦りながらも的確な介抱をしているお姉さんきつねをしばらく眺めていた。


 癒し度200%だ……。


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