表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/41

29話 秋祭り前日

 

 日の落ちる時間が早くなってきており、空は夕焼けが広がっている。しかし会社で若い子達とその話をしているとちょっと笑われた。


 最近では夕焼けの事を『マジックアワー』もしくは『マジックタイム』などと呼ぶそうだ。SMSなどではその画像などが多数アップされており、日々投稿者さん達は競い合っているそうだ。


 夏に行ったビーチでの夕焼けの画像、撮っておけばよかったと後悔している。


 しかし、オフィス街から望むその景色も中々のものである。特にスターシティー本社ビルは周りのビル群より飛び出ているので都会ならではの幻想的な景色を生んでいる。


 オレンジ色のグラデーションがとても暖かな色合いを出し、濃く、淡くと広がっている。



「さあ~てと! 今日は神社に行かないといけないし、早く帰るとしますか」


 今も相変わらずひすいさんの服を作るのが業務となっている。翔と揃ってパーティになどに出かける事も多いので、ドレスのオーダーが多くなってきている。


 もともとは尻尾を逃がす為にデザインしたものだが、案外評判良く、中には製品化されたものもある。


 もちろん、尻尾部分は無くしてあるものだが。まあ、製作者からすれば廉価版とも言える。



 タイムカードを通し、会社を後にして電車に乗る。今日は週末という事もあり、幾分車内は空いている。世のサラリーマンは金晩と言えばお楽しみの時間にしている方も多いからかも知れない。


 なので週末のこの時間は満員電車になる事は無い。


 ただ、一度だけキリのいい所まで仕上げる為に終電近い時間になった事があったのだが、その時は地獄を見た……乗車率200%の電車、社会人の洗礼を今更にして受けた。


 しかし、一番の大変だったのはときめだ。もう、怒りながら悲しみながら笑って泣いてた。


 本人曰く、浮気の心配で怒り、事故に巻き込まれていないか悲しみ、顔を見て安心して、嬉しくて泣いてたらしい。


 それ以降、無茶な残業はしなくなった。いろいろ大変だから……。



 自宅の最寄りの駅に到着し、少し遠回りの道を選んで歩く。ときめが待っているので早く帰りたいのだが、今日は買って行く物があるからだ。



「ただいま~」


「おかえりなのじゃ~! む、何を持って――おお! まんじゅうではないか!」


 袋を見て瞬時に気付いたようだ、もふもふの尻尾が揺れに揺れている。帰りに買ったのはまんじゅうだ。それともうひとつ。


「はい、どうぞ。あと、これは美月ちゃんへのお土産です」


 ケーキである。今日は秋祭り前日なので美月ちゃんからお呼ばれしている。神社にだが……。なんか神様はその日は忙しいらしく、ときめにお手伝いして欲しい事があるそうなのだ。


「む、それは西洋菓子か? 確かケーキとか言ったの」


 渡された箱をツンツンしている。こちらにはあまり興味が無さそうだ。でも美月ちゃんは現代っ子なので、まんじゅうよりもこっちの方が喜ぶかと思って購入したのだ。


「さあ、晩ご飯食べたら神社へ行きましょう。ちょっとときめが暮らしていた神社の中がどんなものか楽しみですし」


 ときめはマシになったとはいえ、相変わらず電化製品には弱い。まあ、最近の家電でボタン一つで大概動くので問題無いのだが、掃除などはほうきにチリ取り、雑巾がけで対応してくれており、掃除機に埃がかぶるという謎の現象が起きている。


 まあ、その掃除機も掃除されているのだが……。


「もう準備は出来ているのじゃ! さあ、一緒に食べるのじゃ~」


 ご飯は先に食べててもいいと言ってるのだが、そこは断固譲ってくれない。どうしても一緒に食べたいらしいのだ。とっても古風で尽くしてくれる。


 でも食器を一緒に洗うのも譲っていない。そこは現代のニーズに合わさないとね。




 晩ご飯を食べ終わり、神社へと足を向けているのだか、道中で気になる事を尋ねてみた。


「ところで、神社に呼ばれて行くのはいいのですが、どうやって中に入るのですか?」


 正直、境内の奥の本殿には柵が張られており、それを乗り越えて入れろうものなら即通報ものである。中にはご神体などもある訳だし。


「ふふ、秘密の入口があるのじゃ! 何処の神社にもあるんじゃぞ」


 そうなんだ……でもそんなの聞いた事が無い。まあ、もしばれてたら確実に開拓されてるか……。



 ときめに連れられて境内、本殿の前に着くとそのまま後ろに回り込んだ。まさか裏口でもあるのだろうか……それはそれでばれそうだが。


「ここなのじゃ、よっと」


 何箇所かときめが本殿の柱や壁を触っている。すると少し強い風が吹き、木の枝が音を鳴らした。ついそちらに気を取られていると、ときめが俺の腕を掴んで壁に入って行った。


 ……擦り抜けた? 壁を?


「神社の建屋によって違うのじゃが、神の出入りの際には周りの注意を引き付ける為に、注意を逸らす仕組みが働くのじゃ。まあ、世間では『神隠し』などと言われておるがの。でもこの事は内緒じゃぞ?」


 神隠しって実は神様が隠れてたんだ……。じゃあ、昔から言われてる『神隠しにあって行方不明になった!』というのは、その人達はときめや美月ちゃん、ひすいさんと同じく実は神様という事ですね……。


 世の中って広いなあ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宜しければポチりとお願いします!小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ