28話 お土産
「先輩……くらげかなにかに刺されましたか?」
朝ご飯を食べながら翔から質問された。おそらく一つだけなら『昨日はお楽しみでしたね!?』とか言って茶化すんだろうけど、首に集中して付けられたキスマークに対して本気で心配してくれている。
「と、ときめ!? あれはやり過ぎにゃ! 怪我みたいになってるにゃ!」
はは……色気は無いようだ。
「何を言っておるのじゃ! まだ足りぬぐらいじゃ! 潤が余所のおなごに取られたどうするのじゃ!?」
力説してくれてますが、俺もさっき鏡で見たけどこれはちょっと酷いかなって。
「も、もしかしてそれはキスマーク……なんですか?」
ちょっと引いてる……お鼻が少々赤くなってますよ?
「限度があるにゃ! 潤さんが可哀そうにゃ!」
「そ、そうなのか? と、ときめは迷惑をかけてしもうたのか……」
「いえ! 大丈夫です! ときめのしるしがいっぱいで嬉しいです! はは!」
半ばやけくそではある。しかしときめを悲しませる訳にはいかない。男なら笑って泣こう……。
「そ、そう言うてくれるのなら、もっと付けてあげるのじゃ!」
「いやあ、朝ご飯美味しいですね! やっぱり朝は和食に限ります!」
誤魔化しておいた。これ以上付けられると本気で病院に行く事になる。
なんとか追加キスマークを回避し、今はみんなでお土産コーナーをうろうろとしている。これも旅行に来た時の醍醐味の一つだ。
「何を買って帰りましょうかね? お菓子なんかもいいのですが、記念に残る物がいいですね」
折角のときめとの初旅行だし、形に残したい。出来れば普段使い出来るような物はと……。
「これは面白いのお!」
民族工芸品のお面を被って興奮するきつねの神様って一体……それ、欲しいんですか? もうちょっと違うものにして欲しいかな?
「折角ですから二人で使う物にしましょうか?」
「そうじゃの、流石にこれは持って帰っても使えぬしの」
どうやら興味はあったものの、欲しくは無かったらしい。
とはいえ、お土産コーナーも中々の広さであり、様々な物が並んでいる。先ほどの民族工芸品のようなものからアクセサリーなども潤沢に揃っている様子だ。流石はスターシティー!
「うん?」
和のコーナーを眺めていると、目に止まったものがあった。『夫婦茶碗』だ。同じ柄で色違い、これはいいかも。まあ、海に関係するものではないが、これはこれで欲しいかも。
「潤! ときめはあれが欲しいのじゃ!」
指を指す方向を見ると……摸造刀? ねえ、何に使うの? 俺を斬るの?
「と、ときめ、それも使い道が無いと言いますか……」
「じゃあ、あっちにあるのはどうじゃ?」
ああ……忍者グッズね。何処かに忍びに入るのですか? きつねの忍者とは……それはそれで一部のケモナーには人気が出そうだけど。
しかし、スターシティー、お土産の選択基準間違っていないか?
いや、そう考えるのは素人の浅知恵だろう。ここは超一流のホテルであるのだ。当然の事ながら海外からのお客様も多い。そういった意味では刀や忍者は『日本お土産』として人気の高いものばかりだ。
ふふ、翔、やはり抜け目が無い。代表取締役社長の名は伊達では無いですね!
「こんなの誰が買うんだろうね? はは!」
……恥ずかしいじゃないですか。返してもらえませんかね、俺の気持ちを。
まあ、夫婦茶碗は実用性第一に考えて買うとして、やっぱり海のアイテムは欲しいな。何かいい物は無いかなと……。
その時、先ほどから変な物ばかり見つけてくるときめが、一角でじっと眺めているものがあった。
「どうしました、何かいい物が……ほう、これは」
ときめが見ていたのは海のスノードームだった。しかも夕焼け仕様。そうか、ファーストキスをした時もこんな感じの空だったな……。
「ときめ、これを買いましょうか。二人の初めての思い出として」
「じゅ、潤も気付いてくれておったのか!? う、嬉しいのじゃ……これを見てると初めて唇を合わせた時の事を思い出せるのじゃ……」
最高の一品に出会えた。これを買わずしてこの旅行は終われないだろう。
「でも、お風呂場での接吻も気持ち良かったのじゃ……家に帰ったらまたスクール水着を着るからして欲しいのじゃ……」
うつむき、人差し指をつんつんしておねだりされた。キスはともかく、スクール水着は別に着なくても……。
「先輩! そんなのずるいですよ! 何度も何度も!」
いやだから何がずるいの?
「にゃにを言ってるにゃ!? 私も恥ずかしいのに昨日ちゃんと着たにゃ! それなのに翔はそのまま――」
『ストップ!!』
「?」
危ない……ひすいさんは熱くなると結構ボロが出るな。翔がお楽しみをする事に口を出すつもりは無いのだが、うちのきつねさんが真似をしかねない。スクール水着をぶっちゃけ気に入ってるみたいだし。
「なんじゃ? あの水着を着て何かしたのかの?」
ダイナマイトボディのきつねさんが翔とひすいさんに迫ってる。あれは厄介だ。純粋なだけに。
「はは、何でも無いですよ、ときめさん! さあ、お会計しましょう! 僕のカードで一括で支払っておきますから! あはは!」
お土産代が浮いた。なんか気を使うな……。
「ありがとうございました! とっても楽しい旅行でした!」
「こちらこそ、また一緒に行きましょうね、先輩!」
翔のヘリでひとっ飛びでスターシティー本社まで戻って来た。しかも帰りはハイヤーまで用意してくれていた。この一泊二日の旅行で一体いくら損失が出たのだろう。考えたくないものだ。
「どうしました? あ、スノードームですか?」
家に帰る車中、ずっとお土産のスノードームを眺めているときめが居た。
「……潤、ときめはとっても幸せなのじゃ!」
満面の笑みを向けられた。
それはね、こちらのセリフですよ。スノードームも大切ですが、俺にとってはその笑顔が一番の宝物ですからね。
今話にて夏到来編の終了となります。
ニッチなお話ですが、お気に召されればブクマ、評価、ご感想の程お願い致します!
次回は『秋祭り編』を予定しておりますので、しばしお待ち下さいませ! 出来るだけ早く投稿出来るよう頑張ります!




