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21話 金銭感覚

 

 日本に居た学生時代、俺には好きな漫画があった。警察漫画で、ハチャメチャな主人公が規格外な事を繰り広げるコメディだが、十年の時の間に現在は最終回を迎えてしまっている。


 その漫画の中に超金持ちの御曹司が居るのだが、その金持ち具合も規格外であった。


 当時は『そんな奴居る訳無い』と確信しており、二次元の世界を楽しんでいたのだが、最近、実在している事に気付いた……。


「さあ、出発しましょう! 先輩!」


 夏休み休暇に入った初日、翔に誘われて海に行く事になった。集合場所はスターシティー本社屋上、ヘリポート。


「まさかこのヘリで? も、もしかして翔が操縦するんですか?」


「うん、そうだよ! 車は混むからね!」


 ドロップサングラスをかけ、すでにハワイアンTシャツを着こみバカンス気分の翔から返事が返ってきた。その横にはひすいさんも居る。何故かペアルックだし同じサングラスをかけている……。


「なんじゃ、あれは? 面妖じゃのう」


 それはヘリを見た感想なのか、二人を見た感想なのか……前者であって欲しい。


 翔曰く、本当は海外に行きたかったらしいのだが、パスポートを持っていない神様達の出国は難しいので、国内に展開しているスターシティーリゾート系列のホテルを丸々貸し切ってあるらしい。


 この掻き入れ時になんて事を……。


 いくら自分の会社とはいえ、金銭感覚がおかしい。あの漫画に出て来た御曹司と大差無い。



 早速ヘリに荷物を乗せ、乗り込みシートベルトを付ける。軽快なエンジン音と共に機体は地面を離れたのだが……。


「と、飛んだのじゃ! お、落ちるのじゃ!! いっ! い、痛いのじゃ!!」


 ヘリが空を舞うと、ときめがパニックになってしまった。これはまずい、暴れられると危険だ、シートベルトをした状態なので尻尾で圧迫されてるし!


「大丈夫です! 落ち着いて、翔が操縦してくれてますから! 落ち着いて、とりあえず尻尾隠して!」


「うう、痛かったのじゃ、怖いのじゃ……」


 とりあえず尻尾は収めてくれたが不安は消えていない様子だ。まあ、正直俺もヘリに乗るのは初めてだし、怖くないと言えば嘘になる。ひすいさんは乗り慣れているのか、ケロッとしている。


「ほ、ほら! 景色が綺麗ですよ! 空からの景色なんて滅多に見れるものではありませんからね!」


「ほ、ほんとなのじゃ……人がまるで埃のようなのじゃ!」


 それ、どこかの王族さんが言った言葉に近いよ? あまり外で言わないでね?


 翔が操縦するヘリはそのまま高度を上げ、海の方角へと向かって行った。




 小一時間程、空の旅を満喫した後にヘリはホテルのヘリポートに到着した。最後の方はときめ慣れてきたようで眼下に広がる海を眺めて興奮していた。


「さあ、着いたよ! 一度部屋に行って早速水着に着替えましょう!」


 やけに水着に着替えさせたがるな……一応、念の為、万が一、備えあれば憂い無しという事でアレは持って来ているが、流石に到着してすぐにアレを出す訳にはいかない。


「潤! 先程大きな池が見えたのう、あそこに行くのじゃな!」


 そうか、ときめは海を知らないのか。魚料理も多く作ってくれるのだが、全て川魚と思っているのだろうか。


「ときめ、あれは海ですよ。初めて見たのですか?」


「あ、あれが海なのじゃな! その昔、書で読んだ事はあるのじゃ……そうか、あれが海なのじゃな……」


 なんか遠い目をしている……いや、綺麗ですけどなんか違う……。


 その様子にひすいさんが来てちょっとやれやれ的な表情を浮かべている。


 俺とときめの付き合いはまだそれほど長く無いが、神様同士は数百年の付き合いはあるのだろう。この前、幕府がどうのと言っていたし。


「ときめはずっと神社に引き籠っていたからね、妹さんはあんなに活発なのに」


 確かに、妹の美月ちゃんは良いも悪いも活発だ。最近気付いたのだが、、動画配信もしているようであり、人気なんだそうだ。とっても現代っ子である。


「い、忙しかったのじゃ……でも今はスーパーに買い物に行ったり、近所の幼稚園に通う幼子とも遊んだりしておるのじゃ! 管理人さんとも一緒に掃除したりもしておるのじゃぞ!」


 活動範囲が狭いような気もするが、立派な成長だと思う。ときめは近所からの評判は良い。


「『秋元さんは本当にいい奥さんだね、旦那さんが羨ましい』と毎日三回ぐらいは言われるのじゃ!」


 待って、それは聞いてない。いつの間にか結婚してるし……。


 そんな会話をしながらロビーに向かうのだが、当然ながらお客さんは誰一人居ない……こんな巨大な高級ホテルで……損失が計り知れない。


「はい、これは部屋のカギだよ。当然同じ部屋だけど問題無いよね? 後、お客さんはいないけど、スタッフは居るからなにかあったら気兼ね無く声を掛けて。話は通してあるからね」


 つまり緘口令の事だろう。まあ、一緒に住んでいるぐらいだから同じ部屋で問題無い。


「……今日はお楽しみですね、先輩」


「な、何を言ってるんです、翔! 俺とときめはまだキスすらしてないんですから」


「え、出会ってもう三か月以上経ちますよね、一緒に住んでるんですよね?」


 なにか物凄く驚かれている。


「もう、先輩は……このチャンスは物にして下さいよ……さあ、部屋に行きましょう~!」


 背中を力強く叩かれた……チャンスって言われても。俺はこれで結構幸せなんだけどなあ。


「ときめ~、行きますよ」


 なにか女性陣も話をしていたようだ。心無しかときめの顔が赤いような気がする。しかもなにか慌てているような素振りだ。


「わ、分ったのじゃ!」


 小走りでこちらに向かって来た。しかし、夏場の服は目のやり場に困る。特にときめは大きいからなぁ。水着を着たら一体どうなってしまうのだろうか……。


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