19話 神様達とのカオスな現場
ときめとの出会いやひすいさんとのなれ初め、バイト時代の話などで盛り上がっていた頃、ふと、ときめに目をやると、呆けた表情に頬を染め、ケモミミは片方が折れ曲がり、尻尾もゆっくりと左右に振られ、同じように体も少し揺れている……これは酔ってますね。
「大丈夫? ときめはあんまりお酒強くなかった筈だよ? ほら、二百年ぐらい前だっけ? 私が遊びに行ったあの時も……」
「そ、その話は内緒なのじゃ! あ、あれは少々やらかしてしもうたのじゃ……あれは幕府がいけなのじゃ……我のせいではないのじゃ……」
俺と翔の話と違って、神様の昔話は一つ一つに歴史を感じる。幕府って……。
「ときめ、飲み過ぎは良く無いですよ? ちょっと休憩して――」
「じゅ、潤! 違うのじゃ! ときめは何も悪い事はしておらぬのじゃ! その証拠に純潔は今も保っておるのじゃ!」
『……』
いや、あの……一応、隔離された場ではあるけどそんな発言は。ほら、翔もひすいさんも困ってるじゃないですか。
「でもときめは潤に捧げるのじゃ! あの『よるのいしょう』も着るのじゃ~!」
『え……』
違うんです……引かないで、翔、ひすいさん……。
誤解の無いようしっかりと説明させてもらった。尚、ときめは冷や汗を流しながら必死に弁解している最中、俺の膝の上では体を丸くして幸せそうな顔をして眠ってしまった。
「そ、そうですよね。潤さんはそんな人じゃないですもんね!」
「そ、そうだよ、いくら先輩でもそんな下心は持ってませんよね」
少々言葉が引っかかるが、誤解が解けたのならそれでいいや……しかし、とんでも発言をしてくれたものだ……。
「ときめさんも寝ちゃったみたいだし、今日はこの辺でお開きにしましょうか」
「そうですね、ありがとうございます。とても楽しかったです! これからも頑張っていきますので宜しくお願いします」
「……潤……そ、そこはダメなのじゃ……は、恥ずかしい……のじゃ……ダ、ダメなのじゃ……」
「……先輩?」
「してません! 何もしてません! キスすらしてませんから!!」
なんて寝言を言うんだ……。
店を出ると再びSPの方に連れられ、裏口に用意されたタクシーに乗せてもらった。もちろん、緘口令が敷かれているのでケモミミと尻尾があるが問題は無い。ただ、問題はマンションに着いてから自宅までの距離……ケモミミ、尻尾全開のときめは熟睡中……人に会わずに切り抜けられるかどうかが問題だ。
マンションの前までタクシーを付けてもらい、ときめをお姫様抱っこで持ち上げる。豊満な体ではあるが、とても軽い。さて、ミッション開始だ!
ますはエントランス! よし、誰もいない、キーを差し込み自動ドアを開け――
「お帰りなさい、おや、大丈夫ですか?」
管理人さん……ゲームオーバーだ。いや、誤魔化さなければ!
「は、はは! どうもこんばんわ!」
見てる! めっちゃ見てる!? そりゃそうか、酔った長身巨乳美女を抱えているんだ。しかもケモミミと尻尾付きで!
「い、いやあ、彼女がコスプレしたまま寝ちゃって! はは、良く出来てるでしょ? それじゃあおやすみなさい~!」
「は、はい。おやすみなさい……」
ふうう!! ご、誤魔化せたのか!? は、早くエレベーターに!
「あ、のじゃのお姉ちゃんだ! あれ? 尻尾があるう!」
ひいい!! 今度は幼稚園の子供とお母さん! しかも幼児の方はときめを知ってるようだし! しかもお母さんは引いてるし!
「こ、こんばんは! ときめお姉ちゃん知ってるんだね!? お姉ちゃんね、きつねさんの真似をしてて寝ちゃったんだ!」
苦しい! 自分で言っていながら言い訳が苦し過ぎる!
「あ、エレベーター来たみたいだね。お兄ちゃんとお姉ちゃんは次のエレベーターで行くから先に乗ってね! おやすみなさい~!」
そのまま園児達とお母さんに先に乗ってもらった。少々お母さんの顔に疑問が残っていたが……いや、かなり怪しまれていたな……。
「ただいま……」
とりあえず、ときめをソファーの上に降ろして、壁に手と頭を付けた。ミッション大失敗だ……。どうしようか……とりあえず今後はときめにお酒を飲ますのは家の中だけに限定した方が良さそうだ。
部屋着に着替え、布団を用意して再び戻ってきたのだが、安らかにソファーの上で可愛らしい寝息を立てて寝ている……今日は着替えさせずこのまま寝かせといてあげるか。
「お布団に行きますよ、よっと」
ときめを再び持ち上げ、寝室の方に運び布団に寝かせて上げた。
「……ぅん、潤……」
おっと、起こしてしまったか。
「ここまで運んでくれたのじゃな……済まぬのじゃ……はっ、大事な服が! すぐに脱ぐのじゃ!」
焦った様子でワンピースの背中のボタンを外し出した。その動きに迷いは無かった。
「え、あ! 脱がなくていいです!」
脱がれたあ! 見えたあ! 大きなお胸のブラとパンツぅ!! 白ぉ~!?
「と、と、ときめ! は、早く服を着て下さい!」
光の速さで回れ右だ! はぁはぁ……なんですぐに脱いじゃうかな……。
「大事な服なのじゃ、着たまま寝てしまってはシワになってしまうのじゃ……それと……」
背中に明らかに人肌の温もりと弾力のある生地が当たった。こ、これは……。
「い、言ったじゃろ……ときめは……捧げると……」
ま……マジですか。まだキスすらしてないんですけど。で、でも一気に駆け上がるパターンもあるにはあるはずだ。お、俺もいよいよ……。
「酒の力を借りて言うのもなんじゃが……そうでもせぬと言えぬのじゃ……我を受け取ってくれるかの……?」
ここまで言われて、拒否しようもなら失礼に当たるだろう。ときめも勇気を出して言ってくれているのだ。俺も答えなえれば!
「分かりました……それでは」
「お姉ちゃ~ん! 何処に居るのお~? 頼まれていたお漬物、持ってき……た……よ……?」
半裸で俺の背中に抱き着つく姉を見た妹……手に持っていた漬物が入っている風呂敷を力無く床に落として、茫然とこちらを眺めている。
しばし無言の時間が流れた。
「うわぁ! 美月ちゃん! 玄関開いてた!?」
「お姉ちゃん! は、裸で!!」
「こ、子供は見てはいかぬ!」
「えっ! 子供って! 美月ちゃんて子供なの!?」
「は、裸ではないのじゃ! ちゃんと下着は着ているのじゃ! 脱ぐ予定じゃったが……」
「玄関は開いていたよ。それで入ってきたら、潤さんとお姉ちゃんが!」
「玄関が開いていたからと言って、そのまま入って来る奴がおるか!」
「子供じゃないもん! 大人だもん! だ、だから大丈夫だから!」
「ときめ! 美月ちゃんの前でそんな事言っちゃダメ!」
もう誰が誰に返事してしるのか分からない……現場はカオスだ。
ときめとはまだ清く正しい恋愛が出来そうである……。はは、ありがとうね、美月ちゃん……。
今話にて日本お仕事編の章区切りとなります。
お気に召されればで構いませんので、ブクマ、評価、ご感想お待ちしております!




