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16話 夜桜で……

 

 就任して最初の休日の夜、夜桜を見に行く事にし、ときめと散歩している。


 月明かりに照らされた桜の花は昼間とはまた違った顔色を見せてくれる。舞い散る花びらも陰と陽で見方が変わりに、非常に風流だ。


 しかし、いくら夜桜といっても有名な場所は人も多い。なので、昔からの隠れた名所、神社の桜を眺めている。ここには立派な桜が植えられており、小さい頃から良く眺めていた。


「綺麗ですね、桜をじっくり見るなんて長い事してませんでしたよ」


 実際、桜の木は目に入りやすいが、枝に付く桜の花をまじまじと鑑賞する事は少ないのではないかと思う。


「ときめもここではずっと見続けておるが、潤の言う通り、花をじっくり見るなんて事は長い事してなかったのう……」


 優しく微笑みながら、桜の花を見るときめの姿に心を奪われる……透き通るような指で、黒く長い髪を耳にかき上げる。なんて事はない仕草ではあるが、妙に色っぽい……。


「さ、さあ、お花見しましょうか、はい、桜餅ですよ。お茶もありますからね」


 桜の木の近くにあるベンチに腰掛け、持って来た荷物を広げる。


「いいのう! この季節ならではだのう!」


 ふう……なんかときめの事を無性に抱きしめたくなってしまった。


 いかんいかん、ここは公衆の面前であり、神様がおらる場所だし……あ、ここの神様は横でものすごい笑顔で桜餅食べてるわ。


 ときめと暮らしだしてしばらく経つけども、あれからは家に帰ってきて倒れている事は無くなった。いつも泣きそうな顔にはなっているものの、家事に勤しんでくれているようだ。


 買い物もしっかりと特売を狙い出してきており、とても順応が早い、流石勉学の神様だ。


「美味いのう、やっぱり一人で食べるよりも潤と食べる方が美味しいのじゃ~」


 はは、毎日食べてるんですね。太らないように気を付けてね? あと虫歯とかも。


「風流ですね~、ああ、珈琲もいつもより美味しい気がします」


「……潤……ちょっと、いいかの……」


 ときめがすぐ隣に座って来た……ケモミミと尻尾を出して。


「と、ときめ! 尻尾出てますよ!」


「大丈夫じゃ……この時間は滅多と人は来ぬ。この時間帯にいつも漬物や梅干しなどを作っておったぐらいじゃからのう……」


 でも万が一と言う事もあるし……しかしわざわざ尻尾を出して……いや、出ちゃったのか。感情が高ぶって。


「……して……しぃ……のじゃ……」


 言葉は聞き取れなかった。だがその恍惚とした表情、潤んだ瞳、染まる頬を見れば何をして欲しいのかぐらい分かる――キスを待っている。


 しかし俺はまともにキスなんてしたことは無い。先日勢いでときめのほっぺにチュっとしたぐらいだ。


 実はあれが俺のファーストキスだったりする。


 しかし、本当のキスってどうするんだ……ただ、あの過去のコレクションのようなキスだけはしてはいけない事だけは分かるが。


「い、いいんですか……?」


 その言葉に小さく頷き、そっと黒い瞳を閉じた。微かに震えているのが分かる……ときめも初めてのようだ、俺がリードしないと!


 く、口は尖らせた方がいいのか? い、いや、そんな事したらかなり不細工だし……ああ! 恋愛映画ぐらい見ておくべきだった! 考えても仕方無い、ええいままよ!


 ときめの方に向き直り、両手で肩を掴む。少し驚いたようで体を震わせたが、そのまま瞳は閉じている。


 温かい……その体温を感じながらときめの顔に近づく、小さく零れる息遣いが聞こえる……このままときめの唇に――


 うん? 視線を感じる……そこで何してるかな? 美月ちゃん?


 ベンチの裏でしゃがみ込み、顔を真っ赤にさせながら、巫女の服を着た現神社の神様がこちらを見つめていた……。



「まったく! 盗み見などしおって!!」


「うう、お姉ちゃん痛いよぉ……」


 キス直前まで行った現場をぶち壊され、大変ご立腹な姉きつねさんとげんこつをもらった妹きつねさん……確かに尻尾は一回り小さいな。


「だって、二人が神社に来たかと思ったら、急にイチャイチャし出すんだもん!」


 まあ、こちらにも非はある。人の家の玄関先でイチャラブされたら嫌だもんな。


「たわけが! 見て見ぬふりをすればよかろう!!」


 うわあ、なんかパンドラボックスを開けた時と同じぐらい怒ってる……ケモミミが逆立ちまくってるし。


「うう……潤さん助けて~!」


 妹きつねが俺の後ろに隠れた……まあ、確かに可哀想かな。


「助けてくれたら美月の尻尾触ってもいいから! お姉ちゃんのに比べらたらちょっと小さいけど毛並みは美月の方が上だよ?」


 ……え? 触りたいんですけど。


 いや、いかん、いかんぞ! 彼女の妹に手を出そうもんなら人として失格である。


「み~づ~きぃ!!」


 結局もう一回げんこつをもらっていた……。



「全く! 美月のせいで台無しじゃ!」


 家の帰り道なので尻尾は隠してもらってるが……この精神状態はひょっこり出てきそう。


「潤もじゃ! 美月の尻尾を触りたいと思うたじゃろ!?」


 ひい……バレてる!? 


「言っておくが大きさはもちろん、毛並みもときめの方が上じゃ!」


 なんか尻尾に対して凄いプライドがあるようだ……しかしこれ以上感情が高ぶると本当に尻尾が出ちゃいそうだ。何とかしないと。


「じゃあ……帰ったら思いっ切りもふらせて下さいね? 手加減しませんからね?」


 その言葉の跡、ケモミミと尻尾は全開で露出した……幸い周りには誰も居なかったが、俺も言動には気を付けなければならない……。


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