表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/41

15話 新しいお仕事

 

「失礼します……社長、秋元様がいらっしゃいました」


「ああ、分かったよ。来客を待たせているので、ここまでにしましょう、この条件でお考え下さい」


 ……翔と話をしているあの人知ってる。超有名な携帯会社の社長さんじゃないか。 



 商談を終えた社長さんに会釈する。やたらと観察されているようだ。そりゃそうか、ここに居る以上、一般の人では無いのが常識だろう。


 でも残念ですが俺はただのヒラです。そんなに見られても何も得るものはありませんよ?


 ひすいさんが先客の社長を出入り口まで案内し、扉を閉めた所で改めて社長に向き直り、挨拶をした。


「本日付けで本社に異動となりました、秋元潤です。宜しくお願いいたします」


 本日二回目の就任挨拶である。


「うん、宜しくね。秋元君……ひすい、社長はもう帰ったかな? 扉に入室禁止の札はかけてくれた?」


「ばっちりにゃ!」


 ……ギャップね。猫かぶってたんですね、猫だけに。


「先輩、すみません。バタバタさせちゃって」


「いえ、大丈夫ですよ、でもいきなり本社勤務は驚きましたよ」


 通常、この本社で働こうとするなら、有名大学院卒で主席ぐらいの実力が無いと難しい。


「何を言ってるんですか。先輩は十年も海外で経験を積み、実力を備えて来たじゃないですか。十分本社に居る権利はありますよ」


 まあ、そう言っていただけると嬉しい。


「しかし私は服を作る以外は特に取り柄は……」


「ふふ、先輩、そこですよ! 僕が呼んだ本当の理由は。あ、珈琲飲んで下さいね、先輩はブラック好きでしたもんね」


 ひすいさんが珈琲を運んで来てくれた。好みまで覚えていてくれていたとは……ああ、美味しい。良い豆使ってますね!


「ところで先輩、困りませんでしたか? 尻尾に」


 ……成程、全てを語らなくても分かる。今は社長と部下、昔はバイト仲間、だが、今も昔も変わらないものがある。それは二人とも『ケモナー』であるという事実。


「私がひすいさんの服をデザインして作る。のですね」


「流石先輩です。全てを悟っていただけましたか、もちろん、ときめさんの分も作ってあげて下さいね」


 ひすいさんもときめも普段は尻尾を隠している。が、やはり出ているのが普通のようなので窮屈らしい。なので家に居る間は基本的に出しっ放しになるのだが……服装がローライズの選択肢しかない。


「尻尾に合わせたズボンやスカート、耳を隠す帽子なんかもいいですね」


「やっぱり先輩は違いますね! 工房はこの下の階を使ってもらって構いませんので! 服を作るのに必要な器具や道具はすでに全て揃ってます」


 おお……鼻っからその気だったな、これは。


「それでは、一応、名目上だけど会社だからね……ごほん! 秋元君は本日より僕の直属の「デザイン兼パタンナー部門主任」として業務にあたってもらう」


「はい、分かりました。宜しくお願い致します」


「ふふ、この下のフロアも僕の許可が無い限り誰も入れないからね。はい、これは入退室用のカードキーだよ」


「はい、お預かりさせていただきます」


「期待しているよ、先輩のデザインは僕好みだからね」


「嬉しい限りです、翔にも気に入ってもらえる服を作りますよ」


『……ははは!』


 あの時と同じように二人で笑った。さあ、頑張らないと!





「ただいま~」


 玄関を開け部屋に入るがときめの返事は無い……何処か出かけているのだろうか。しかし、晩ご飯の味噌汁の匂いはするしなあ。


「ときめ~、居るんですか」


 電気を付けた時、真っ先に目に入ったのはフローリングに横たわるときめの姿だった。


「ときめ! どうしたんです!?」


 急いで駆け寄り、ときめを抱き起す。


「……幻かのう……じ、潤が見えるのじゃ……」


「何を言ってるんです! しっかりして下さい! 俺はここに居ますよ!」


 虚ろな瞳で焦点が合っておらず、か細い声を出している。


「……現なのか……じゅ、潤!? 寂しかったのじゃあ!!」


 そんなにおもいっきり抱き着かれると、む、胸の感触が……。どうやら寂し過ぎて倒れていたようだ……。


「帰って来ましたよ。大丈夫ですか?」


「ちゃんと留守番出来たのじゃ! 引き籠るのは得意なのじゃあぁ~!」


 涙を流しながら見栄を張っている……引き籠るって言われても。しかし、参ったな、退屈であったには違いないが、何か手を考えなければ。



「今日の晩ご飯は『はんばーぐ』じゃ! 書を読んで作ってみたのじゃが……洋風料理は初めてなので自信が無いのじゃ……」


 いやいや、立派なハンバーグですよ。どれどれお味は……うん! 美味い!


「最高です! 何を作っても上手ですね、いいお嫁さんになれますよ!」


「そ、そ、そうかのう!? て、照れるのお……」


 自分で尻尾を持って毛づくろいをしている……セルフもふもふ!?


「そうだ、明日からはときめがお買い物に行ってくれますか? ときめが欲しい物もあるでしょうし、近所のスーパーには饅頭も売ってますよ?」


「そ、そうじゃの! 饅頭は欲しいのじゃ! ときめは頑張って買い物に行くのじゃ!」


 饅頭効果が絶大過ぎる。まあ、ずっと家の中にいるのもあまり良くないし、外に出るのもいいと思う。


「じゃあ、これからはときめに家計管理をお任せしますね。上手にやりくりして下さいね?」


「うむ! 分かったのじゃ! 良き妻は家計を把握するものじゃ!」


 目標があれば今日みたいに瀕死になる事も無いだろう。毎日倒れられても困るし、ストレスも溜まってしまう。気分転換に今度の休みには桜も綺麗だし花見でも行こうかな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宜しければポチりとお願いします!小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ