13話 メイド服のきつねさん
ショッピングモールで買い物を済ませ、帰宅した。中々の荷物量だ。
「ふう……とりあえず休憩しましょうか。お茶を淹れますね」
「潤はそんな事しなくていいのじゃ! ときめに言えば何でもやるのじゃ!」
このきつねさんはとても古風なのだ。考え方も。
「いいですか、ときめ。気持ちは嬉しいですが、俺も出来る事はやりますので。甘えてくれてもいいんですよ。じゃないと疲れてしまいますからね」
「……甘える……じゃあくっつくのじゃ~」
おお、ケモミミと尻尾が解放された。相当機嫌がいいみたいだな。大きな尻尾がキッチンで所狭しと暴れておられる。
「はは……まあ、家の中ならいいですよ。でも脱がなくていいですからね?」
「む……」
この神様は服が嫌いなのだろうか……。
みたらし団子と珈琲を合わせて食べてみたが、これも案外イケる。やっぱり和菓子と珈琲の相性は悪くないな。
さてと、晩ご飯の食材を買いに行こうかな。きょうは久しぶりに魚にしようかな……。
「くぅ……」
あら、床で丸まって……そういえばあまり出歩かないって言ってたし、疲れちゃたのかな。起こすのもなんか悪いし、買い物は一人で行くとするか。
しっかりとメモ書きを残してと。よし、行ってきますね~。
パンパンに詰まった買い物袋を手に家に戻って来た。とりあえず目に止まる食材を買い漁って来た結果、もう手に袋が食い込んで痛いのなんの。でもこれでいろんな料理が作れる事だろう。
「ただい――うわ!」
玄関先でメイド服に着替えた狐さんが三つ指ついて待っていた。
「お帰りなのじゃ、着替えて待っておったのじゃ」
なにこの、古風なメイドさん。しかもケモモミと尻尾付き。かつ巨乳……神よ、貴方はなんて存在を作ってしまたったのでしょうか。あ、神様は本人か。
「買い物にまで行かせてしまって済まぬのじゃ、潤はゆっくりしていて欲しいのじゃ、ときめにも甘えて欲しいのじゃ」
なんかメイドの服を着て古風に喋られると混乱するな……。
「わ、分かりました、ではお料理の方はお任せしますね。食材はたっぷり買って来ましたから。今日はお魚もありますよ」
「任せるのじゃ! 今日も愛情いっぱい注ぐのじゃ」
美味しくなあれ……はしてくれるのかな?
「では早速『えぷろん』に着替えるのじゃ!」
そう言い残し、かつて、パンドラボックスが静置されていた部屋に入って行った。
ちょっと待てよ、着替える? 着るの間違いですよね? 嫌な予感がする……物凄く……。
「ときめ、入りますよ、エプロンとは――」
とても綺麗な肌だ、背中が丸見え……ブラは? なんで脱いじゃうのかな?
「じゅ、潤、ま、まだ着替え中なのじゃ!」
胸を押さえながら顔だけをこちらに向け、焦った様子で伝えて来た。尻尾と耳もピンと反り立っている。
「す、すみません!」
素早く回れ右をした……思ってた通りエプロンに着替える途中だった……。
それはね、ときめさん『裸エプロン』と呼ばれるものですよ? 料理する時には結構危ない衣装ですからおすすめ出来ませんから。
「ときめ、エプロンは服の上から着て下さい!」
「そ、そうなのじゃな、てっきり全部脱ぐものだと思っておったのじゃ……恥ずかしい服とは思っておったのじゃが……」
流石にそのレベルになると恥ずかしいんですね。
結局、メイド服にフリフリエプロンを着る事で落ち着いた訳なのだが、もはや属性が付き過ぎてどう表現したらいいのか分からない……。最近の言葉で例えるなら存在がチートだ。
晩ご飯は焼き魚をメインに純和風の食卓となった。十年間海外にいたせいもあり、こういった料理は懐かしくて堪らない。日本人としてのDNAがひしひしと伝えて来る。
「今日も美味しいお料理をありがとうございます。そうそう、これをどうぞ」
「なんじゃ? 書物か?」
書物って……まあ書物ですが……。
「これはお料理のレシピ、作り方が書いているものになります。洋風の料理もありますので参考にしていただければと」
「おお~! ハイカラじゃのう! しかもなんて素晴らしい絵なのじゃ。さぞ有名な絵師が書いたのじゃろうな!」
本っ気で江戸時代ぐらいから外に出歩いて無かったんだろうか……。
「ま、まあ和風、洋風にこだわりはありませんが、見てるだけでも楽しいと思いますし、俺が仕事に言ってる間は一人で退屈になってしまうでしょうしね」
「え……」
なんですか、その生気が完全に抜けた目は……ずっと家には入れませんよ? 流石にお仕事しないと。
「そ、そうじゃの……潤も働かなくてはならぬからのう……と、ときめは我慢出来るのじゃ……あ、安心するのじゃ……な、泣いたりはせぬのじゃ……う、ううぅ……」
とりあえず抱きしめた。どうやら健気属性まで身に着けたようだ。この神様、成長が著しい!
「落ち着きましたか? そういえば下着の方も届いていましたね。確認しておいて下さいね、俺もどんな物が入ってるか分からないので」
「分かったのじゃ! ちょっと見てくるのじゃ」
まあ、最悪合わないようだったら妹の美月ちゃんが持って来てくれたものがあるし、大丈夫だろう。
「潤、一点だけ変な物が混じっておったのじゃ。」
「うん? どんなもので――」
……ああ、夜専用の下着ですね。手に持っているブラ……枠しか無いですもんね。
「これでは胸が丸見えになってしまうのじゃ……でも潤が買ってくれたものは粗末には出来ぬのじゃ、今日はこれを着て――」
「それはやめましょう」
流石にそれを着られると、俺自身を制御出来なくなる自信があります。大切にとって置いて下さい……いつか来るその日まで。




