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記念告白のくせに生意気だ

前半シリアス気味、後半コメディ要素なお話です。

 内気で暗いクラスメイトがいる。

 放課後はパソコン使って陰気に作業。

 それ以外は即帰宅。

 元々仲良しの6人組だったが、最近はそこまでではないらしい。


 元仲良しに聞くと、曰く

「なんか、忙しいみたい」


 髪はぼさぼさ、化粧なんてしていない。制服の着かたも適当、なのだが。


(美人だよな……)

 磨けば輝くタイプ。

 見た感じ彼氏もいないようだし、告白しようかと、本気で思った。

 高校最後の思い出としてちょうどいい。


 そこで

「美佳に……告白?」

「うん、そう。あんまり喋らないんだけど、きになっちゃって。離ればなれになる前に、思いを伝えたくて」

「……うーん」

 篠原の友たちである大川は首をひねる。


「おれじゃ釣り合わない?」

「あ、いや。松原君、けっこういけてると思うよ。そうじゃなくて……」


「そうじゃなくて?」

「……松原君って、美佳と一緒になったの、この学年からでしょ?」


「え?うん、そう」

「中学の時と高一の美佳しらないでしょ?」


「ま、まあ。中学はしらんかな。おれ高校編入組だし」

「……あの子。あんなんじゃなかったのよ。化粧はしてなかったけど、小綺麗で。かわいらしくって」


「そ、そうなんだ」

「あんな風な風体になったのは、男よけらしいわ」


「お、おとこよけ?」

「そう。男の人がだめみたい……うん、そういうこと」


「ま、まって、詳しくきかせて」

 なんかひっかかる。


「……噂、話なんだけど」

「う、うん」


「彼女、レ○プされたんじゃないかって」

「え?」


「元々内気だったけど、あんな性格じゃなかったし……激変しちゃったの。それって、結構レ○プがきっかけとか、多いし……」

「う、うわさだろ」


「……まあ、ね。でも……」

 すこし言いづらそうに


「……元々、仲良くなった理由はアイドルなの。内気な彼女も好きでね。イベントもよく行ったわ。それが、高一のある時……」

「あ、ああ」


「……急に、なんというか、お金の使い方が荒くなったの。おごりとか多かったし」

「へ、へえ」


「その頃から心配していたんだけど……高2の夏……いや秋か。アイドル関係に完全に拒否感をしめしたのは」

「拒否って」


「好きでなくなったではないわ。むしろ嫌いみたいなね。話は合わせるけど、もう態度でわかったわ。んで、なんかあったんだろうと……」

「聞かなかったのか」


「聞けないわよ」

「そ、そうか」


「……松原君、悪いことは言わないわ。記念告白なら、別の人にしなさい……あの子だと、傷つけてしまうかもしれないわ」

「……そ、そうか、ありがとう」



 気になる。

 元々気になるから告白しようとしたのだ。

 気になる。


「というわけで、情報をくれ」

「…………」


 新聞部の小林。

 こいつに金を払うと噂話を教えてくれる便利屋さんである。


「篠原さんは追えない」

 あっさり拒否

「な、なんで?」

「得体がしれないから」

 憂鬱そうな顔


「まあ、答えられる話だけでよかったら」

「あ、ああ」

 2000円払う。


「……んで、なにを話そうか」

「レ○プ疑惑って……」


「彼女がレ○プ未遂にあったのは事実よ。高2の時にね」

「み、みすい?」


「ええ。未遂」

「未遂で性格激変したのか?」


「その前から性格は変わってきていたわ。あれはとどめでしょうね。噂は聞いているわ、松原くん。篠原さんに告白したいのでしょう?やめなさい。あなたは、彼女がもっとも嫌悪を抱く人種よ」

 ずきり

「け、嫌悪?」


「あなたが悪いんじゃないわよ。彼女は、あなたのような、爽やかで、明るくて、積極的な男性にひどい目に逢わされたの。今の彼女に告白とか自殺行為だわ」

「……お、おれの評価はともかく、……彼女は……」

「忘れなさい。もうあの子はあなたともうすれ違わない」


 小林はふんわりと笑うと

「……記念告白の最良の相手なら、あと千円で答えるけど?」

「……」

 黙って千円出す。


 なんとなくだが、小林は正しいことを言っている。おれとはすれちがわない。

 確かにそんな気がした。


「素直ね。幸せになるわよ」

 さらさらっとメモをする

「どうぞ」

 名前を見ると


「……おい」

「なに?」


「なんで5人いるんだ?」

「よ、もて男」


「おまえの名前もあるんだが」

「好き好き大好き」


「棒読みで言うな」

 ……

「ええっと」

 どうしようか。って


「ん?椎名って誰?」

知らん

「二年の子だよ。なんだ名前も覚えていないのかい。彼女は君に好意的だよ」


「へー。だれだろ」

「ほら、……あの、にゃんにゃんしてる子」

「あー、あれか、あの猫耳カチューシャ付けてる娘」


 いた、たしかにいた。

 名前椎名って言うのか。めっちゃかわいい子だったが、性格とかはさっぱり分からん。


「……俺に、好意的?」

「ああ、間違いない。そっちから告白なら断らないよ。今ならね」

「そうか」

 じゃあ


「とりあえず、篠原への好意はここで終わり、椎名に行ってくる」

「行ってらっしゃい。君に幸あれ」

 小林は、ぱたぱたと手をふっていた。



「にゃーーー」

「あの、だから」

「にゃーーーーー」


 飛んでる。猫耳カチューシャつけて歩いていた椎名を捕まえて、話があると踊り場に連れ出し、告白したのだ。


 その結果

「にゃーーーーー」

 跳ねてる。


 にゃーしか言ってない。

 どっちなんだ。いいのか、だめなのか。


「……しーちゃん、なに騒いでるの?……あ、先輩」後輩がくる。名前は知らん。


「告白されたにゃーーーー!!!」

「……は?……え?ほ、本当に?」

「ああ、そうしたらこんな感じでにゃーにゃー……」

「しーちゃん、おめでとーーーーー」

「にゃーーーーーーー」

 やかましさが二倍になった。



 結局、OKらしかった。

 それはとても良かったのだが。

「先輩、しーちゃんのニャー語理解できます?」

「……できないから、ちゃんと話せ」

「にゃー」


 デートの時に毎回あの時の後輩、大峰が付いてくるのだ。

 別にエッチ目的ではないにしても、どうなんだ、これ。


「ふふふ、先輩、次どこいきます?」

「にゃーーー」

 まあ、楽しい。

 楽しいから、この選択は間違ってなかった。

 そう思い込むことにしよう。



 思い込めなかった。

「いや、あのさ」

 カラオケボックス。


 デートでカラオケボックスは普通だ。

 ここまではいい。


 カップルがカラオケボックスで二人きりになり、気分が盛り上がってキスとかするとか、とてもロマンチックだ。

 なのだが、これはカップルでもなく、二人きりでもない。


「にゃあ♪」

 椎名が甘えて寄り添ってくるのだ。


 美少女。絡みついた腕におっぱいの弾力がある。

 キスしたい、めっちゃキスしたい。


 しかしだ、横にキラキラした目で見ているのがいるのだ。


「あの、大峰さん」

「なんですか、先輩、敬語で」


「あのですね、大変に申しあげにくいのですが」

「先輩、みなまで言わずに結構です」

 大峰が目を瞑る。


 出て行って貰えないか?という意図だったのだが、目を瞑るだけでも良いか。

 いや、良くない。葛藤していると


「私は二番目でいいです!」

「お前なに言ってんの!?」

 大峰は胸をはり


「私はセ○レ枠バッチコイですから!」

 キャラ崩壊どころじゃない。

 大峰は大人しい、清純なイメージなのだが。


「にゃーにゃー」

「椎名、お前は日本語で喋れ」


 さっきまでのロマンチックな雰囲気は吹き飛んだ。キスはお預け。

 まあ仕方ない。


「せんぱい、わたしは、みーちゃんと一緒がいいです」

「しゃ、しゃべった!!!」


 椎名がまともに喋るの初めてじゃねーか。

 そして、その台詞がこれかよ。


「そこに驚きますか」

「だって初めてだぞ。にゃーつけないで話すの」


「そもそも、わたしはドラフト外れ一位みたいな扱いなわけなんですから、御身1人を愛するみたいなのを気取られても、ちゃんちゃらおかしいわけですが」


「めっちゃ毒舌じゃねーか!お前!」

 ドラフトの外れ一位って。野球好きなのかよ。椎名。


「そうだ!そうだ!どうせ記念告白で適当に選んだくせに生意気だ!」

「大峰!お前もかよ!」


 事実を言われているだけに、ズキズキ胸が痛む。

「私達は本気ですよ?先輩はどうですか?」

「お、俺は」


 二人同時に付き合う?そんないい加減な事俺は出来るのか?


「あ、元々適当に選んでおいて、いい加減な付き合い方は出来ないとか気取られても、へそで茶が沸くというか」椎名。

「心読むんじゃねーよ!」


 しかし、椎名、こんなにキャラ濃いのか。

 にゃーにゃー言ってた方が平和だったな。


「しーちゃんとキスしたいですか?」大峰。

「いや、お前がいなかったらめっちゃしたかったんだが……」


「私とキスできたらドキドキしますか?」

「え?いや、それはまあ。ドキドキは……」


 突然、唇に柔らかいものがあたった。

 そして

「んんんん!!!!!!!」

 舌!舌を突っ込むな!


 椎名はイタズラっぽく微笑むと

「じゃあ次はみーちゃんでーす♪」

「はーい!セ○レのみーちゃんですよー!」

 大峰が上に乗る

「アホかお前らー!!!」

 大騒ぎしながら、結局何回も二人とキスをした。



「いいのか、こんなので」頭が痛い。

 彼女が出来たと思ったら二股でした。

 どんなんだ。


「にゃーにゃー」椎名がご機嫌

「お前はにゃーにゃーお気楽でいいなぁ」


「適当に彼女選んだお主に言われたくはないのぉ」

「前言撤回、お前にゃーしか話すな」

「にゃー♪」


「大丈夫ですよ、先輩」にこにこする大峰

「きっと、明日も楽しいですから」

 話の繋がりのない言葉。

 でも

「……そうだな」


 明日も大騒ぎして、楽しく過ごしそうだ。だから、この選択は正しかった。そう思った。

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