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第壱拾八話 西の連行

何を血迷ったのか新たにもう1つ連載を始めてしまいました。

一応主人公はかけらの1つである狼牙です。

そちらの方も読んで下さいね。




「ユウさん!!」

龍牙はすぐさまユウへと駆け寄った。

それに続いて駆け寄ろうとした麗那をサヴァリスが呼び止める。

「誰だい?あの人は?」

「ユウさんです。私達の仲間ですよ。」

麗那は嬉しそうに(実際嬉しいのだが)そう話すとユウに駆け寄った。

笑顔で話し始めた3人にサヴァリスは目を向けた。

「いい仲間を持ったね、ケイミー。」

「サヴァリス様・・・」

「別に怒ってはいないよ。君が決めた道だ。好きなようにするといい。」

「はい・・・」

「ふふっ。別に気に病むことはない。君は自分の進むべき道を進めばいいんだ。ね?」

「はい。」

「やっと笑ったね。」

やっと微笑んだケイミーにサヴァリスは笑みを向ける。

「まだこんなところにいたのか?」

そんな微笑ましい状況を後ろから来た鶯劍がぶち壊した。




鶯劍が来たのを目の端で確認したユウは龍牙達に軽く笑顔を向けると2歩3歩と後ろへ下がった。

「どうしたんですか?」

龍牙の質問にただ笑顔だけ向け、ユウは高々と腕を挙げると指を鳴らした。

それにその場にいた皆の視線が集中する。

「ん?」

その静寂の中、いくつもの気配が動くのを感じた鶯劍が振り返った。

次の瞬間、木枯らしとともに龍牙達は何十もの人に囲まれていた。

「ユウ!!」

駆け出そうとした鶯劍の足は、その首に当てられた二振りの刀によって止められた。

「どういうつもりだ?」

鶯劍の後ろには2人、鮮やかな色合いの鎧で体を覆っていた。

周りを見渡すと全員、その模様は違えど同じ鎧を身につけているのが見える。

「西の武士(もののふ)か。武士にしては珍しく統率がとれているのを見ると、西の国の1部隊を連れてきたか・・・。

どういうつもりだ?」

「さすがは鶯劍さん。ご名答ですよ。」

ユウはニコニコしながら鶯劍に近づく。

その脇では全員が側にいる鎧甲冑の者達に取り押さえられていた。

「いえね。そろそろ期限なので、いい加減来ていただこうと思いまして。なので、念には念を入れたという訳ですよ。」

「ふん。まあ別に構わないがな。サヴァリス。」

「えっ?なんだい?」

突然の指名に焦るサヴァリスを気にもせず鶯劍は続ける。

「攫犀の呪いは解けたのか?」

「あ、ああ。逆にこれでできていなかったらもう僕は何もできない。」

「そうか、わかった。」

鶯劍は深く息をつくと真っ正面からユウを見据えた。

「従おう。もともと期限を作ったのはこっちだからな。」

「ありがとうございます。」

「その代わり、」

「?」

ユウは下げていた頭を上げ、怪訝な顔をする。

「そこの3人、サヴァリス、サリア、後あの赤髪の女を匿ってもらいたい。」

「お安いご用です。じゃあ、こちらへ。」

「どういうつもりだ!?」

サヴァリスは無理やり拘束を振り切ると、鶯劍に詰め寄った。


「僕は、元帝国軍の『ジャッジメント』だ!!それだけじゃない。一時はお前たちと戦い、さらにはお前たちの長を苦しめた。

そんなやつをなぜ救おうとする!?」

「サヴァリス様・・・」

「ああ、そうだな。」

「先生!?」

素直に頷く鶯劍に龍牙は叫ばずにはいられなかった。

「なら、なぜ・・・」

「別に昔のお前などどうでもいい。」

「えっ!?」

「俺はもうこの世界に100年以上生きたせいか、過去という物に逆にこだわりがなくてな。

だから俺は『過去』のお前ではなく『今』のお前を見て判断した。それだけだ。」

その言葉にサヴァリスはもう何も言えなくなってしまった。

「それでは決まったようなので、行くとしますか。」

そんな中ユウは笑顔のまま7人を誘導し始めた。




しばらく歩いた後、立ち止まったユウに従い、7人も立ち止まり、辺りを見回した。

そこはなにもない平地の真ん中だった。

ユウはごそごそと何かしていると、7人の前に鶯劍のとは比べものにならないほどの大きさの飛空挺があった。

「では、こちらに乗ってください。」

ユウの言葉と共に龍牙の前に入り口が出現した。

戸惑いながらも龍牙を先頭に全員は艦内へと踏み出した。





???艦内


内装は特に特別なものはなく、ただ普通の飛空挺のを大きくしたようなものばかりだった。

「これも西のか?」

「ええ。」

周りの乗組員に指示をだし終えたユウが頷く。

「よくもまあ、あの貧乏で有名な西の大陸でこんなのが作れたな。」

鶯劍は話しながらも周りの機器を見て回る。

「つい最近、西の大陸が統一されたんですよ。」

「あの暗黒地帯をか!?」

鶯劍は驚きのあまり即座に振り返り、ユウに詰め寄った。

「ええ。」

「どこだ!?」

ユウは閉じた目をゆっくりと開く。

「『魔天道』」

「なっ!?」

驚愕の色を見せる鶯劍を傍から見ていた6人はサヴァリスを除き、なにそれ?、といいたげな顔をしていた。

「あいつが、あの『悪魔』が生きているのか?」

「ええ。もちろん。あのお方を宿しておられる方ですから。」

「・・・」

黙り込む鶯劍に、耐えきれず龍牙は尋ねた。

「先生、『魔天道』ってなんですか?それに『悪魔』とか・・・」

「それは僕が教えてあげるよ。」

立ち尽くす鶯劍を尻目にサヴァリスが口を開いた。

「50年前に起こった大戦のことは知ってるね?」

その質問に皆、頷く。

「じゃあそれが起こった理由は知ってるかい?」

これには誰も頷かなかった。

「暗黒時代が終わってから初めての4つの大陸全てを巻き込んだこの戦争、それは東の大陸である国家が成立したことから始まった。」

「それが、『魔天道』。」

龍牙のその呟きにサヴァリスは首を横に振る。

「いや、それはユーラス王国といういたって普通の国だよ。

今のユーラス公国の王政だったころの名前だ。」

「じゃあ、いったい・・・」

「ユーラス王国の13代目だったかな、その時の王があまりにも酷い統制をしたんだ。

それに市民は怒り、『魔天道』と呼ばれる集団を結成し、西の国に逃げ込んだんだ。」

サヴァリスは近くの壁に貼ってあった地図の上を指差す。

「ここで急速な成長を遂げた『魔天道』は西の大陸にある数カ国と同盟し、ユーラス王国に宣戦したんだ。

後は分かると思うけど、ユーラス王国には帝国が、西の国々にはヒドゥン国が付き、あの大戦争が始まったんだ。」

「そうだったんだ。」

麗那は感嘆の声を上げ、残りもまた同じように頷いた。

「じゃあ『悪魔』というのは?」

「今の『魔天道』のリーダーですよ。」

ケイミーの問いにいち早く答えたのはユウだった。

「あの人は気に入らない者はすぐに斬り伏せ、必要とあらば町1つ消し飛ばすような人です。」

「なら、なんであんたはそいつに味方してるのよ?」

「あの人と僕の目的が同じだからですよ。」

龍牙はユウが拳を強く握りしめているのに気づいた。

「そのためなら僕はなんだってやってみせる。」

そう呟くユウは揺らぐことのない決意を秘めた目をしていた。








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