第九話 紅玉
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その会話を聞いていたサヴァリスはたまらず口を開いた。
「龍牙。」
「分かってる。」
龍牙はサヴァリスの横へ飛び退きながら答えた。
「さて、始めようか。」
爆破は両手の魔道銃を一方を龍牙とサヴァリスに、もう一方をロッソへと向け、引き金を引いた。
3人は散り散りに走り出し、それを追うようにして次々に爆発が起きる。
「『スランブル』」
「遅い。」
サヴァリスが術を展開し発動するその少しの間隔にブラストは近づき、その肩を蹴り飛ばした。
「そこ!!」
ブラストの動きが空中で一瞬止まった所へロッソの赤い鞭が疾る。
だがそれが放たれた時にはすでにブラストの左手に握られた銃身が黒い魔道銃がロッソへと向けられていた。
「甘い。」
「ロッソ!!」
そしてその引き金が引かれると同時にロッソの体は壁を突き破り、外へ放り出されていた。
「ロッソさん!!」
「おっと、行かせないぜ。」
駆け出そうとした龍牙とサヴァリスの前にブラストは立ちはだかった。
「くっ。」
その間にロッソは無理やり体を捻り鞭を建物へと伸ばした。
しかし後少しという所で減速していく。
(届け!!)
限界まで伸ばされた鞭はまるでその願いを聞き入れたかのように赤く輝きだし、急に伸びたかと思うと一番近くにあった柱に何重にも巻きついた。
そしてロッソもまたそれに引っ張られ、易々と床に足をつけていた。
「ほう、物質変化か。
ということは暗殺部隊、『アサシン』の者だな。」
「・・・」
「沈黙もまた肯定なり。
まあ、別にどうでもいいんだけどな。」
ブラストは左手に持つ銃を宙に投げた。
その左手をジャケットの内側へと差し込むとあの赤い石を取り出した。
それを右手に持つ銃のグリップの上にある窪みにはめ込み、また落ちてきた銃にも空中ではめ込み、キャッチした。
「悪いが実験台になってもらおうか。」
その言葉と共に龍牙達に向けられた魔道銃は一回り大きさを増した黒い銃身に赤い傷のような線が走っていた。
「『紅玉』か。」
「さすがは元ジャッジメントだな。その通りだ。これは人造魔晶石、通称『紅玉』だ。」
魔晶石とは魔鉱石の中でも特に純度の高い物を指す。魔晶石を使った時に出せる力は不使用の時のおおよそ2倍。
「だけどがっかりだ。」
「なんだと?」
「やっぱり噂の通り夜のあんたは弱すぎる。なんで昼に来なかったんだ?」
「・・・」
「答えない、か。まあいい、どうせお前たちはここで死ぬんだからな。」
3人はまた走り始める。
それと同時にそのまま動かさずブラストの人差し指に応え右手の魔道銃が吠えた。
「なっ!?」
それは確実に横へ交わしきっていたはずの龍牙を吹き飛ばしていた。
龍牙は空中で回転し、体勢を立て直し着地したところへまた猛獣が吠えた。
「くっ!!」
避けきれないと判断した龍牙は左手に冥力を集めた。
一瞬にして白銀の鱗に包まれた巨大な腕が龍牙の前に現れた。
そしてそこに弾丸が衝突した。
左手が軋む音を聞きながらも龍牙はそれを受けきった。
だが、その腕を退けると同時に見えたのは、
もう一方の魔道銃の引き金を引くブラストだった。
「くそっ。」
龍牙はそう吐き捨てながら左手を押さえた。
鱗を大量にもぎ取られた左手はもう元の手へと戻っていたが切り傷だらけで血まみれだった。「たった2発でダウンか。」
そう言いながらもブラストの動きが止まることはない。
引き金を引き続けながらも相手に座標を特定させないようずっと一カ所に留まるのではなく、場所を撃つ度に変えているのだ。
仮想現実系を得意とするサヴァリスとしては相性の悪い相手だった。
そのためか、サヴァリスは攻撃することは全てロッソに任せ、部屋の中を駆け回っていた。
龍牙は立ち上がり、右手で首飾りを弾いた。
銀色の破天石から伸びる柄を掴み引き抜いた。
「行くぞ。『旛龍』」
『いいのか?』
その刀に意志を宿している神龍の声が龍牙の頭の中で響く。
「ああ。本気で行かないとこっちがやられる。」
『・・・分かった。』
「『旛龍』、第一解放」
龍牙の右手に握られた大刀が神々しく輝き始める。
「『極滅刀』」
その言葉が紡がれると同時にその光ははじけ、部屋を真っ白に染め上げた。