第九話 アマルガム
キャシーを縛り上げた鶯劍は、ひとまず先に回収した2人を麗那達がいる場所へと運んでいた。
「っ!?」
麗那はその2人を見て息を呑んだ。
「こんな・・・、ひどい」
麗那がそう呟くのも無理がない。なぜなら2人の体には一滴も『力』が残っていなかったのだから。
もうこれは助かる助からないの問題ではなくなっていた。
「頼む」
それを分かっていながら鶯劍は、ただそれだけいうとまた戦艦の方へと歩き始めた。
その刹那、麗那の前を疾風のごとく何かが駆け抜けた。
それに気づき、鶯劍は振り向きざまに刀を横に一閃。
それは凄まじい金属音とともに騎士のような鎧をつけた男の剣によって受け止められた。
「貴様、誰だ?」
「私はあなたの『弟』」
「なんだと!?」
鶯劍はその言葉に驚きを隠せずにいた。
「お前、まさか・・・」
唖然とする鶯劍の周りにはいつの間にか、さらに4人鎧を着た者達がいた。
「我々はあなたと同じ。聖霊の命と引き換えに力を得た者」
「聖霊の、命?」
「違う!!」
麗那の呟きを背に、その声を掻き消そうと声を張り上げる鶯劍。
「何を言っても事実は事実。あなたは崇め、そして共に歩むべき者の命を殺めた。自分の欲望のために」
「違う、俺は・・・」
男は鶯劍を一瞥し、地面に置いていたあの2人を担いだ。
「誰だ?」
「・・・」
「誰がお前らをそんな体にした?」
俯けていた顔を上げる鶯劍。
「答えろ!?」
男は全く振り返らずに答えた。
「我々は望んでこの体になった。あの御方の手を借りて。」
「!?誰だ、それは!?」
「帝国軍技術開発部主任、『教授』と言えば分かりますか?」
「あいつか!!あいつが、」
「おや、どうやら本当に我々の兄弟のようだ」
「黙れ!!」
「これは失敬。では、我々『アマルガム』にはまだ任務がありますゆえ、失礼します。『兄さん』」
そのまま5人はどこかへと跳んで行った、キャシーとあの2人を連れて。