第八話 哀れな2頭
ユニーク4000突破嬉しいです。
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「だけど、帝国は本当にそんなことを?」
「別にしてもおかしくはないな。何せ向こうには変態開発者で有名な『教授』とその右腕がいるからな。」
そこまで話したところで2人はすでに2頭の前にいた。
鶯劍はベヒーモス、ケイミーはミノタウロスの前に立つ。
「哀れだな。」
鶯劍の赤く染まった瞳に映ったのは2頭の体の丁度真ん中のところに1人ずつ、人間が埋めこまれている光景だった。
「あの格好からして、俺らを付け回していた奴らだな。」
「・・・そうですか。」
鶯劍は腰に差した刀に手を置きながら龍牙の言葉を思い出した。
『あいつらは恐らく、完成した殻に埋めこまれたタイプではなく、中の2人を本体として作られたものだと思います。』
『それにどんな違いが?』
ケイミーが尋ねる。
『つまりあの『殻』も彼らの体の一部なんです。だから、あの体に何かダメージを与えると中の本体がやられてしまう。』
『そんな。じゃあ、どうすれば・・・』
『ですが、たまたま打開策は見つけました。』
『なんだ?』
『それは、』
「ガアアァァァァァ!!」
横から迫る巨大な腕を鶯劍は軽々と避けると左手に持つ小刀を握りしめた。
それは龍牙の『雷鮫』だった。
それへ冥力を流しこみ、ベヒーモスの肩へと軽く突き刺した。
「はああぁぁぁぁ!!」
『雷鮫』に蓄積された冥力は電気へと変換され、ベヒーモスの体中を駆け巡った。
その高電流を受けたベヒーモスはただピクピクと体を震わすしかできなかった。
『神経ですよ。』
『!?』
『あの殻の部分の神経を麻痺させればその間に中の2人を助けられるかと。』
鶯劍はその鋭い小刀でベヒーモスの腹を縦に一直線に切り開いた。
するとその中からまるで産まれて来た小鹿のようにベタベタした液体をつけたままあの長身の黒装束の男が滑りでてきた。
鶯劍はそれに地面から生やした木の根を絡め、地面の中へと引きずりこんだ。
「あと一匹」
鶯劍はミノタウロスの頭上へと跳び、小刀を突き出した。
ミノタウロスも即座に斧で応戦しようとしたが、その斧に向かってケイミーの巨鎚が打ちつけられた。
その攻撃でミノタウロスが軽くひるんだのを見逃さず鶯劍はその肩へと小刀を突き立てた。
するとミノタウロスもベヒーモスと同じように痙攣を始め、鶯劍に腹を掻ききられた。
中から出てきた男もまた先と同じように地面の中へと引きずりこまれた。
「ちょっと、私の傑作になんてことしてくれるのよ!!」
そこへ上の方からかん高い声が飛んできた。
2人がその方向へ顔を向けると戦艦の上に誰かいた。
「嫌なやつに会ったな。」
鶯劍は軽くため息をつく。
「分かる?これは私の作品よ?それをよくもまあこんなスクラップにしてくれちゃって。どうしてくれるのよ!?」
「ケイミー、先に中の奴らを解放していてくれ。」
「はい。」
「無視するな~!!」
「ん?なんだ、いたのか?」
「キィ~~~~!!もう怒ったわ。やっちゃいなさい!!」
「誰に言っているんだ、!?」
誰もいなかったはずなのに鶯劍は横から殴りつけられた。
そこへ目を向けるとさっき腹を掻ききったミノタウロスが立っていた。
「ということは、!!」
言葉より先に鶯劍は横に跳ぶ。
さっきまで鶯劍が立っていたところには巨大な爪が突き立てられていた。
「2対1か。少しキツいかもな。」
『雷鮫』を腰にしまうと、代わりに愛刀である金色の刀を抜いた。
「『煌月』第一破型」
鶯劍の言葉に合わせ、その刀が輝きはじめる。
鶯劍は輝く刀の柄の部分を両手で持つとそれを左右に引っぱった。
「『崩滅劍』」
するとそこには刀身が三日月のように太く反り返っているより輝きを増した金色の刀があった。
「それがあなたの『アナザーソウル』?いいわね。いいデータが取れそうだわ。」
「悪いが、」
「?」
「一撃で決めさせてもらう。」
そういうや否や鶯劍は迫り来る2頭を気にかけず『煌月』を地面に突き立てた。
「『制空』」
「えっ?」
キャシーは気づいた、この技が何なのか。
「風が、消えた?」
「『制天』」
鶯劍を中心としてドーム状の光が展開されていく。
それは瞬く間に2頭を呑み込んだ。
そんなドームの中を鶯劍の声が響きまわった。
「『崩天』」
凄まじい光がキャシーの目を襲った。
「くっ。」
キャシーは恐る恐る目を開けるとそこにはさっきまでいたはずの2頭は霧散し、ただ鶯劍が立っていた。
「この技・・・、なぜ地龍の力しか持たないお前がこの技を!?」
そういうキャシーの前にはいつの間にか鶯劍が刀を持ったまま立っていた。
「まさか、お前」
鶯劍のその眼を見て頭脳明晰なキャシーは即座に理解した。
その首へと手刀を決め、その先を言わせずに意識を刈り取り。
鶯劍はその場でサングラスを外しキャシーを一瞥すると天を仰いだ。
その左眼はまさしく
龍の瞳だった。