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第七話 二頭の猛獣 2

バグで1つ書き置きしていたのが消えてしまいました。

「ふっ!!」

龍牙は2頭の攻撃を真っ正面から受け止めるということはせず、力を受け流し、確実に攻撃を決めていく。

「くっ。」

だが、龍牙が与えた傷はすぐさま血の泡が包み込み一瞬にして治していた。

「はあ、はあ。」

龍牙は肩で息をするほど疲労していた。だが、その切っ先は揺るがない。

「はあ、はあぁぁぁぁ!!」

そしてまた駆け出した。







そこから少し離れた高台では、巻き貝のように金髪を巻き、白衣を纏った女が双眼鏡を目に当てていた。 キャシーだ。

「うふ、やっぱり私は天才のようね。自分の才能が怖いわ~。」

「やはりあの教授の右腕と言うだけあるな、キャシー博士。」

その後ろには総司令官を含む部隊長5人とその後ろには普通の兵士と雰囲気が違う者達が5人いた。

「お褒めに預かり光栄ですわ、総司令官。で、その後ろの兵達は?」

「ん?ああ。あれは人造半霊体、通称、『アマルガム』だ。」

「へえ、これが。」

キャシーがジロジロて見回すが兵達は微動だにしない。

その反応に司令官は意外そうな顔をした。

「おや、君も『教授』と共に開発したはずだが?」

その言葉に首を横に振るキャシー。

「『教授』ったら何も私に全く見せてくれなかったのよ。」

「ふっ、あの人らしいな。」

「で、これ、使うの?」

「いや、もう帰還命令を出すつもりだが、必要か?」

「いえ、全く必要ないわ。」ニヤリと笑い、ケイミーはまた双眼鏡を目に当てた。





キャシー達がそのような会話をしている間にも、龍牙の体力は刻々と削られていた。

「くっ」

何度目か分からない交錯で、龍牙はついにベヒーモスに弾き返された。

後ろに跳んでその衝撃を殺そうとする龍牙に、ミノタウロスが斧で追い討ちをかける。

龍牙は足でもう一度地面を蹴り、横から迫る斧をすれすれで交わした。

龍牙は敵が近づけない空中で上手く刀を振るい、体勢を立て直す。



だが、龍牙は忘れていた2頭にはまだ投擲という選択肢があることを。


ミノタウロスによって投げられた斧は見事に龍牙の頭目掛けて飛んで来た。

空中でとっさによけられる訳もなく、龍牙はそれを双劃で弾き返すしかなかった。

しかし、それを弾いた龍牙の体はそのあまりの威力に地面へと押された。

そして、待ってましたと言わんばかりに龍牙の足にベヒーモスの尾が絡まり、5メートル程の高さから地面に叩きつけられた。

「がはっ!!」

その一撃で龍牙の体の半分が地面に沈みこみ、押しつぶされた肺からは空気が絞り出された。

「がっ、かはっ」

そのような状態の龍牙に容赦なくベヒーモスは尾を何度も何度も叩きつける。

もう龍牙の体は完璧に地面に呑み込まれ、視認すらできなかった。

まだ満足していないのか、背中に担いでいた新たな斧がミノタウロスによって、その穴へと振り下ろされた。


深く突き刺さった斧を引き抜くとミノタウロスは角笛のような声で吼え、それにつられてか、ベヒーモスも雄叫びを上げた。






それを双眼鏡越しに見ていたキャシーは満面の笑みを浮かべ、司令官の方を向いた。

「うふっ。あの神龍を倒したわ!!本当に自分の才能が怖くなるわ!!」

「回収部隊を送ろうか?」

「お願いしようかな~、。ん?ねえ、あんな物あった?」

視線を戻したキャシーが指差した物とは巨大な木だった。

「いや、なかったと思うが、いつの間に・・・」

その木を睨みつけるキャシー。

「どうやらまだ戦いは終わってないようね。」

「はっ?」

キャシーはただそれだけ言うとその木に向かって跳んだ。






その間にも、ベヒーモスの前に、あの赤い着物を着た鶯劍が立っていた。

「ガルルルルル!!」

「うるさい犬だな。」

刀を構えもせず、ただ突っ立っているだけの鶯劍の背には麗那とケイミーが、横たわっている、先ほど潰されたはずの龍牙の横に座っていた。

「先生、そいつらは、」

「ああ、分かってる。できるだけ傷つけないようにだろ?」

苦しそうに言う龍牙に背を向けたまま頷く。

「さて、どうするか。」

「先生、俺も、俺も戦います。」

振り返ると龍牙は双劃を杖がわりに立ち上がっていた。

だが、その体はボロボロで、立っているのが精一杯というのは誰の目にも明らかだった。

「そんな体でか?」

「まだ俺には、これが残っているんで。」

龍牙は左手を顔の前にかざした状態で止めた。

「全身までできるようになったのか。確かにそれなら一時的にだが傷を塞げる。だがな、考えてもみろ。もし、向こうにバックアップがいたらどうする?誰が戦う?」

「そ、それは・・・」

口ごもる龍牙。

「確かに俺は自分の心のままに動けと言った。

だが、それはあくまで何のために戦うという目標を考えろということだ。

ただ無作為に出てくる敵を全て倒す必要はない。

必要最低限に抑えるのがベストとは思わないか?」

龍牙は俯き、唇を噛み締めた。

「そう思うなら、今は下がれ。それがヘレー族を守ることに繋がるんじゃないのか?」

鶯劍の言葉に龍牙は頷き、そこに座りこみ、そのまま横になった。

「じゃあ代わりに私が。」

それと入れ替わるようにケイミーは立ち上がり、鶯劍の横に並んだ。

「龍牙、今分かっていることを全て教えろ。」

「はい。」







「そんな・・・」

龍牙の説明にケイミーは言葉を失った。

「・・・そうか。麗那、お前は龍牙の治療を頼む。」

「・・・うん。」

頷くやすぐに麗那は自分の背丈ほどもある杖を構え呪文を唱え始めた。

その言葉が紡がれるにつれ龍牙を淡い光が包んでいく。

龍牙と麗那の姿が完璧に見えなくなるのを確認すると、鶯劍はずれ下がったサングラスを中指で押し上げた。

「行くぞ、ケイミー。」

「はい。」

2人はそれを合図にあの哀れな2頭へと駆け出した。







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