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第二話 世界

「ここです。」

ケイミーの腕の中にいるイブの言葉で4人は足を止めた。

「ここ?」

「はいっ!!」

ケイミーの腕をすり抜けたイブが嬉しそうに龍牙の質問に答える。

「何にもないけど・・・。」

龍牙は辺りを見回す。周りにはただ太い樹木が見えるだけだ。

「まあ、見てて下さい〜♪」

イブは自分の腹の辺りをまさぐりはじめた。

すると、どこからか青い鉱石が埋め込まれた指輪を取り出した。

だが、それを鶯劍はしゃがんで、手で制した。

「どうしたん・・・」

「静かにしてろ。」

制した方とは反対の手を地面につける。

すると、地面にひびが入り始め、ついにはそこから何十何百という樹の根が飛び出してきた。

それらは束となり、龍牙達の後方にある周りより一際大きい樹に当たり、貫通する。

突然のことに4人は唖然としたが、龍牙はその砂煙の中に人影を見たかと思うとそれらはどこかへと跳んで行った。

「逃げられたか。」

地面から手を離し、サングラスを持ち上げる。

「すまない。もういいぞ。」

「はいです。」

イブはまた腹を探り、あの指輪を取り出すと、上に掲げた。

すると、その鉱石はさらに大空を思わす鮮やかな青色に輝き始めた。

それに呼応して目の前の空間もいがみ始めたかと思うと、一瞬のうちに何もなかったはずの場所に大きな扉が出現していた。

「行きましょう♪」

イブはそういうや否や、迫り来るケイミーの腕をすり抜け、龍牙の体をよじ登り、その頭にちょこんと座った。

「ここが落ち着くです〜。」

龍牙は、その愛らしさに目を細め、その頭を軽く撫で、歩き始めた。

それに対し、スルーされたケイミーはと言うと、

「・・・・・・」

真っ白になって固まっていた。






「うわぁ。」

門を抜けた龍牙達を待っていたのは・・・、

「小さいな〜。」 麗那にぴったりのサイズの家並みだった。(ちなみに麗那は138センチ)。

そこはどうやらメインストリートらしく、多くのヘレー族がこちらをじろじろ見ながら行き交いしていた。

龍牙はその小さい家の一つに見入っているとイブに軽く髪の毛を引っ張られた。

顔をイブの方へ向けると、今いる大通り(?)の先を指差した。

「おばば様の屋敷はこの通りを真っ直ぐ行った突き当たりです。」

「ああ、分かっている。さっさと行ってもらうものだけもらって、さっさと出るぞ。」

「了解です。」

「イェッサー」

「・・・・」

龍牙と麗那が元気(空元気)に返事をしている中、1人だけ暗い人がいた。

「ケイミー、行くぞ。」

「・・・・・・はぃ。」

歩き出した3人の後をケイミーはとぼとぼと肩を落としてついて行った。

それを見た龍牙は、可哀想に思い、小声でイブに話しかけた。

(なあ、イブ。)

「なんですか?」

(ケイミーさんが何かしたのか?)

「いえとても可愛がってもらいました、ただ、」

(ただ?)

「すごい力で締め付けられたんですよ〜。」

よほど怖かったのか、軽くしゃくり始めるイブの頭を軽く龍牙は撫でてやった。

(なあ、頼みにくいけどさ、)

「・・・なんですか?」

(できれば、ケイミーさんのところに少しでもいいから行ってあげてくれないか?あの落ち込みようは流石に、な?)

「・・・分かりました。危なそうな時は助けて下さいね?」

(分かった。)

イブは少し名残惜しそうにしながらも龍牙の肩から飛び降り、ケイミーの肩へ移った。

龍牙は、じっと前を見たまま歩いていたが、それでもケイミーの声を聞いて、心底喜んでいるのが分かった。

「珍しいな。」

「えっ。なにがですか?」

龍牙と同じく前を向いたままの鶯劍が突然口を開いた。

「あのイブとかいう若い『ヘレン』だ。」

正式に文書に載っているのはヘレー族だが、一部の人はその呼びやすさから『ヘレン』と言っているらしい。(by鶯劍)

「特におかしいことはないと思いますけど。」

「『ヘレン』は、特に子供は『外』の奴らに対して恐怖心を抱いているから、怯えてあんなに話しかけてはこないはずなんだがな。」

「まあ、中にはああいうのもいるんじゃないですか?」

鶯劍はまだ納得していないのが、龍牙はその後ろ姿から分かった。

「気にすることはないと思いますよ?」

「ああ。ん、ここか。」

いつの間にか龍牙達はその通りの突き当たりまで来ていた。

「意外と早かったですね。結構な距離があるように見えましたけど。」

「・・・」

「先生?」

「ああ、いや、何でもない。単なる考えごとだ。早く中に入るぞ。」

「・・・はい。」

その反応を疑問に思いながらも龍牙は階段を上がり、ドアの前に立った。

その家は流石に長老が住むだけあって、周りの家よりも大きく作られていた。

だがそれでもやはり小さく、ドアなどは、大人だったら腰を軽く曲げなければならないぐらいのサイズだった。

そんなドアをノックしようと龍牙が手を上げた瞬間、ゆっくりとそれは開かれた。

するとそのドアの陰から灰色と白色の混じったヘレー族がいた。

「そろそろ来る頃だと思っていたよ。さあ、お入り。」

口調と毛並みからしてかなりの歳であろうそのヘレー族が中に龍牙達を招き入れた。

戸惑いながらも、それぞれが挨拶をしながら中へと入った。


建物の中は、意外と天井も高く、普通の街にある家と大差なかった。

そのまま廊下を進んだ先にある客間に龍牙達は通された。その部屋にはテーブルを囲むようにして大小様々なイスが5つ置かれていた。

そのテーブルの上には今煎れたばっかりなのかほんわかと湯気が立ち上る紅茶が置かれていた。

「座りなさい。」

一番小さいイスに腰かけたあのヘレー族が促した。

「はあ。」

それぞれが席につく。イブは龍牙の頭の上に腹ばいになって乗っていた。

「さ、お飲み。」

4人共、それぞれ目の前のカップを口へと運んだ。

「鶯劍と龍牙のはストレート、麗那は砂糖を2つ、ケイミーは砂糖を1つで良かったと思うけど、どうだい?」

「なぜそんなことを?」

今度は龍牙が怪訝の色を見せた。

「それに、さっきの『そろそろ来ると思った』と言ったことも気になりますし。第一あなたは誰ですか?」

「ふむ。その辺りの話をしてもよいかの?鶯劍。」

「ああ。というより、分かっているなら聞くな。」

「無駄に時の流れを変える必要はなかろうて。

まあよい。私はこの村の相談役でな、皆はおばばと呼んでおる。

まあそれはいいとして、どこから話すとしようかのぅ。

まずはこの世界の歴史からかの。」

おばばは、鼻にかかっている小さな眼鏡を押し上げ続けた。

「この世界は何でできているか知っておるか?」

「普通に水とか、土とかじゃないんですか?」

と麗那。

「ふむ。まあ、普通はそう考えるの。じゃが、ならその土と水はどこから出てきたのかの?」

「それは・・・」

「答えはな、大量の魔力と冥力じゃ」

「え!?」

「魔力は物質を生み出し、冥力はそれを今の世界へと形を整えた。水を、土を、木を、風を創り、それぞれに生を与えた。

 最初に生まれた物は精霊と呼ばれ、それぞれが純粋な魔力と冥力で形作られていたがゆえにその力は絶大だった。それらは互いに争うことなく徐々に個体数を増やし、世界中に精霊が満ち、平和な時が流れた。

 だが、そんな魔力と冥力は自分達が生み出したその精霊達を苦しめるような存在を生み出した」

「それが、私たち人間」

麗那の言葉にオババは頷く。

「じゃあ、俺達は魔力と冥力の塊ってことですか?」

「まあ簡単に言うとそうじゃ。

じゃが、どうやらその魔力と冥力にはそれぞれ意志があったようじゃ。」

オババはそこでカップをまた口へ運び長く息をついた。

「冥力と魔力はそれぞれが自分の役割を完璧にこなすことで均衡を保っていた。

だがそこへ悪意を持った『何か』が入って来た」

 カップを音がたたぬようゆっくりとテーブルに置き、続けた。

「その『何か』はその魔力の中へと侵入し、冥力への攻撃を始めたのじゃ」


「それに操られた魔力はこの世界を我が物とするために冥力を葬ろうとした」


「そして、戦乱の時代が幕を開いた」

鶯劍の言葉に頷くオババ。

「精霊や魔物、人間は、2つに分けられ、争い始めた。俗に『暗黒時代』と呼ばれておる時代の始まりじゃ。」

オババは左側の壁に架けられている絵に目を向けた。

その絵には奇怪な姿をしたものや人間などが殺しあっているおどろおどろしい情景が描かれていた。

それを見ながらケイミーは尋ねた。

「・・・それはどちらが勝ったんですか?」

「今、現在の世界を見たら分かると思うがの。」

「冥力が勝ち、魔力は衰退の一途をたどった。異世界の魔術師が来るまでは。」

その言葉を発した麗那に視線が集まる。

「私の村の書物の冒頭文です。今までなんのことかさっぱり分からなかったけど、今分かった気がする・・・」

「そう、魔力は大きな力を秘めている。

 だがの、それゆえに発動に時間がかかり、精神力も魔力も大量に消費するため、最も数の多かった人間の中で使える者があまり多くはいなかった。

 それに対して冥力は、持ちうる力は小さくとも、あくまで自分という個人の肉体や手に持つ武器を起点に使用するため、凡庸性が高かった。

 まあ、これが主な理由じゃろうの。

 なのにその『何か』は魔力のみに侵入し、その心に悪を植え付け続けた。

 そして、永きに渡る闘いはその『何か』の封印で終わった。

 だが、その『力』同士の闘いが終わっても『悪』の心を持った人間達は争い続けた。

それは、最初は冥力と魔力の闘いだったが、だんだんと部族同士の抗争へと変わっていった。

しかし、それが世界中に広まる前に世界中を大震災、大洪水、さらには大嵐が起こったことで終結した。

そして、そのすぐ後、世界はこの戦争が二度と起こらぬよう地下深くに魔力とそれを使用する術を封印した。その『何か』とともにの。」

またゆっくりとカップに口をつける。

それを龍牙達はもう終わりなのかと訝しみ始めたところで鶯劍が話し始めた。

「最初はそれで全て解決したと誰もが思った。

だが、この封印は個人の魔力と共に世界に満ちた魔力をも封じ込めてしまった。そうなると、分かるな?」

「創造を司っていた魔力が消えたことで資源が枯渇した、ということですか?」

ケイミーの完璧な解答に少し満足気に頷く鶯劍。

「そこで今度は資源の争奪戦が始まった。だが、元々魔力を使っていた者達はその肝心の魔力を失ったために新たに確保をするどころか、逆に奪われていってしまった。

そこから、冥力を使う者達と魔力を使っていた者達の格差が生まれ始めた。

時が進むにつれ、魔力を使っていた者達は奴隷のように扱われ始めた。」

先の絵の横に飾られている鎖に繋がれた人達の絵に龍牙は目を向けた。

「反乱を起こしても、何も力を持たない彼らはすぐに制圧され、さらには今まで以上の迫害を受けた。」

凄まじい怒りや憎しみを感じるその絵の横には、人々に囲まれ、杖を高く掲げている男の絵があった。

「たがそんな中、異世界からの来訪者が来た。」

「名は『来訪者(ミグラーテ)』。魔力勢にとってもう今や神と崇められるようなやつじゃ。」

その横にある絵には右側の人々が火の玉を打ち出し、左側の人々を焼き殺していた。

「ミグラーテは魔力を失った者達に、また一から魔力を扱う術を教えた。

その力を使い、魔力側は力を盛り返し、奴隷という見下される立場から、冥力側と対等の関係を築くことに成功した。」

その横には物を投げて喜ぶ人々の絵があった。

「だが、やはりまたあの『何か』の悪意が魔力側の人々の中へと流れこんだ。今まで虐げられてきた冥力側の奴らに復讐しろとな。そして、そう洗脳された者達は、なぜか北の大陸に集まりある国を作った。」

「それが帝国。」

帝国の紋章が描かれた旗を掲げた騎士団の更新の絵を龍牙は眺めながら呟いた。

「じゃから、帝国の中では魔力を使える者がほとんどじゃ。しかしの、それも厄介じゃが、それ以上に魔力側は冥力側に対抗するために『技術(テクノロジー)』を手に入れておる。奴らの技術は創造を逸しておるわ。」

「そこまでの力を持って奴らの狙いは?」

麗那の問いにオババは頷く。

「奴らはかの『聖獣王』を使いこの世界を征服するのが狙いとは聞いておるな?確かにその通り。じゃが、奴ら自身も気づいていない目的がある。」

「帝国自身気づいていない、ですか?それはいったい?」

「我々が『混乱(カオス)』と呼んでいるあの冥力と魔力の均衡を崩すきっかけを作った悪意の塊の復活じゃよ。」

「えっ?」

「カオスはそれ自身が持つ力のほとんどを封印されているにも関わらず、まだ人を操るほどの力があるんじゃよ。」

それに恐る恐るケイミーが尋ねる。

「もしそれが成功してしまったら、どうなるんですか?」

「また、あの血みどろの闘いが起こり、今度こそこの世界は破滅する。」

それに龍牙、麗那、ケイミーの3人はその鶯劍の言葉に何も言えなかった。

「封印が弱くなってきた今、わしらはそのカオスその物を破壊しなくてはならないのじゃ。」

その年老いたうさぎの目には闘志がみなぎっていた。

「だけど、なんでそれを俺達なんかに?まだ先生なら分かりますけど。」

龍牙の口から発せられたその言葉にオババのヒゲがピクリと動いた。

「鶯劍や、なぜこの子らに本当のことを言わぬ。」

「こいつらにはまだ早い。」

「・・・好きにするがよい。」

「ああ。」

「後、そう近くない未来に西、東、南の大陸のどこかでこの大戦の幕開けとなる戦いが起こる。気をつけるんじゃな。」

「ああ。」

「あの〜、」

「なんじゃ?」

恐る恐る尋ねる麗那にオババは目を向けた。

「なんでそんな未来のことが分かるんですか?」

「それすら言っておらぬのか?」

オババは軽く鶯劍を睨む。

鶯劍はそれにため息を1つつき口を開いた。

「ヘレー族はな、この世界で唯一、未来を予知し、過去を読み取る能力を持った種族なんだ。」

「へえ〜。」

龍牙は頭の上で眠っているイブを軽くつついてみる。

「キゥ〜〜」

軽く寝返りをうつイブに笑みをこぼしながらも龍牙はさらに尋ねた。

「ということは、これから先、世界がどうなるか分かってるんですか?」

「分かっておるよ。じゃが、私は話してはいけないようじゃな。」

「え?」

「時は流れ。しかし、そこに1つ別れ道ができると、流れは変わってしまう。そういうことじゃ。」

「い、意味が分からないよ〜」

「つまり、時を読み取る者はその流れを変えてしまうようなことはできない。ということですよね?」

目を回す麗那の横でケイミーが事も無げに言った。

「ま、そういうことじゃ。おや、もうこんな時間じゃ。」

壁に掛かった時計は10時を示していた。

「意外と話し込んでしまったようじゃな。とりあえず今日は休みなさい。部屋は2階にあるからの。」

そう言い残し、オババは部屋の奥へと向かった。










すいません、更新遅れました。

ここは結構重要で、結構かんがえたんですけど、あまり上手くいきませんでした(汗)

恐らく、近いうちにまた修正します。


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